2025年の中央競馬は新章突入だ。ここ2年間、競馬界を牽引した2019年生まれ、22年クラシック世代が6歳を迎え、次々と第二の馬生へ進んだ。この世代も含め、昨年の集大成ジャパンCと有馬記念のいずれかに出走した馬のうち、シャフリヤール、スタニ…

2025年の中央競馬は新章突入だ。ここ2年間、競馬界を牽引した2019年生まれ、22年クラシック世代が6歳を迎え、次々と第二の馬生へ進んだ。この世代も含め、昨年の集大成ジャパンCと有馬記念のいずれかに出走した馬のうち、シャフリヤール、スタニングローズ、ディープボンド、スターズオンアース、そして、イクイノックスを追うように頂点に立ったドウデュースがターフを去った。芝中長距離は次期王座決定戦の幕が開く。そこに焦点をあて、未来を占ってみる。

◆【フェアリーステークス2025予想/高配当メソッド】1人気は“勝率0%” 近2年は上位3頭が総崩れ、22年が3連単51万のBIG配当

■“好走条件を選ぶ”現5歳世代

秋の中長距離GI3戦の3着以内馬のうち、現役はタスティエーラ、ホウオウビスケッツ、ドゥレッツァ、シンエンペラー、ダノンデサイル、レガレイラの6頭。とりわけタイトルを奪取したレガレイラが最有力も、レース後に骨折が判明。幸い軽度のようで、復帰まで3カ月。阪神開催に戻り、舞台が合いそうな宝塚記念には間に合うだろう。

一方、有馬記念除外から中山金杯に進んだホウオウビスケッツは9着。天皇賞・秋3着であっても、王座にすぐ手をかけられるとは限らない。なにせドウデュースの強さだけが際立ったレースだったのだ。

2023年ダービー馬タスティエーラは天皇賞・秋2着。広いコースのスローペースで真価を発揮する。現5歳世代は4歳時にGI2勝止まり。大阪杯のベラジオオペラ、スプリンターズSのルガルしか勝っていない。持論は「世代論こそナンセンス」だが、ひとつ上の現6歳世代の5勝と比べると寂しい。主力世代として2025年は意地をみせられるか――。

現5歳世代の特徴は“好走条件を選ぶ”こと。タスティエーラのほかにもソールオリエンスの好走は重馬場に悪化した宝塚記念2着のみ。道悪でパフォーマンスをあげる。てるてる坊主を吊るしたいほどだ。良馬場のスピード勝負だと伸び負けてしまうため、好走チャンスは多くない。であれば、ジャパンC2着同着ドゥレッツァか。春のレース選択は不透明だが、先行できる強みをいかせば、好走幅はタスティエーラ、ソールオリエンスよりありそうだ。

有馬記念4着のベラジオオペラは大阪杯連覇が目標。スローペースのアシストを受けたが、さすがに2500mは長かったようだ。ドゥレッツァと同じく先行力と立ち回りが武器。後述するが、今年は「先行力」がキーワードであり、当然、最大限に力を出せる一頭だ。昨年の大阪杯は前後半1000m60秒2-58秒0、勝ち値けどは1分58秒2。GI昇格後、2位タイの好記録だった。中盤5ハロン連続11秒台を前で押し切ったのは力の証。ただし、距離は2000mがベストで昨年の宝塚記念もギリギリ足りない印象。大阪杯以降、どれほど白星を上積みできるか、次期王座を防衛するにはこれが課題になる。

■明け4歳に科せられる“復権”の文字

明け4歳のシンエンペラーは中東遠征へ出る。血統的にも最大目標は秋の凱旋門賞でまちがいない。そこから逆算したローテが組まれるだろう。とすると、国内GI出走があるかどうか。とはいえ、シンエンペラーのスケールや得意条件を考えれば、無理やり国内で出走することもない。そうなると国内はダノンデサイル、アーバンシックだ。

ダノンデサイルは続戦を決め、AJCCに出走予定。鞍上は横山典から戸崎へと替わる。有馬記念では3歳牝馬のレガレイラと前を飲み込む脚で上がってきたシャフリヤールの強さが際立った。ダービー馬としてしりすぼみは避けなければならない正念場の年となる。鞍上の乗り替わりを含めて、AJCCでのレースぶりと結果は今年を占う。アーバンシックは有馬記念6着をどうとるか。敗因はスローのインでリズムに乗れなかったため。ほぼ同血のレガレイラが先行策で復活したように、アーバンシックも強気に道を切り開かなければならないだろう。菊花賞馬であり、春の盾で復権を狙える立場でチャンスをモノにできるか。またルメールが騎乗し続けるかについても関心を持っておきたい。

これら4、5歳に対し、最強世代を呼ばれる現6歳はどこまで立ちはだかるか。昨年の宝塚記念でGIをつかんだブローザホーンの秋は11、12、12着とリズムを大いに乱した。だが、もともと秋は相性がよくない。2年前は夏にオープンV後、京都大賞典競走中止で休養へ。日が延びるシーズンに強く、1~3月【2.0.2.3】、4~6月【3.1.1.2】と、冬至を過ぎ、春分から夏至へ、ここから反転する季節に入る。秋大敗を根拠に終わったと切り捨てるのは早い。宝塚記念の強さから道悪巧者のイメージも、良馬場でも結果は残した。強いて言えば、京都巧者。目標の天皇賞・春は復活の舞台となりそうだ。

秋GI3戦を乗り切ったジャスティンパレスも現役続行。昨年はGI5戦で4、10、4、5、5着と、道悪以外は崩れていない。騎手を固定できないあたり、衰えのあらわれに映るが、本当にこれで終わりだろうか。スローに泣き続けた印象もあり、持続力勝負になれば台頭していい。強力な先行型と一緒に走れるか、相手にもよく注目したい。

リバティアイランド、チェルヴィニアの牝馬勢もレース選択次第だろう。どちらも中距離志向であり、マイルはなさそうで、ドバイか大阪杯、香港あたりか。リバティアイランドは香港C2着と天皇賞・秋を大敗のした反動はない。状態面さえ戻れば、現状の国内戦線ならタイトル奪取もある。チェルヴィニアはジャパンC4着。上位とは少し離されたが、内容は濃い。超スローで上がり32秒台を求められるとしんどいが、父ハービンジャー、母チェッキーノ、母の父キングカメハメハなら、持続力は引けをとらない。

■今年はレースを引っ張る存在が現れるか

最後に今年は展開がカギを握る。これは実は昨年も同じ。芝中長距離GIに限ると、ハイペースはなく、スローの後傾ラップ(後半が速い)ばかり。中盤で緩んだものの、天皇賞・春が流れた部類に入るほどだ。道悪の宝塚記念も前半1000m61秒0に対し、後半1000m58秒1と速かった。秋はいずれも超スローで、ジャパンC、有馬記念は条件戦レベルの遅さ。というのも、2年前、厳しい持続力勝負で奮闘したタイトルホルダー、パンサラッサらが去り、目立つ逃げ馬がいなくなったことが影響する。しかし、今年からは現4歳メイショウタバルがその後釜になりえる存在。始動予定の日経新春杯でどんなレースを演出し、賞金を上積みできるか、春を占う意味でも大きなポイントになる。

全体で見ると、今年も後傾ラップ連発の予感がするものの、混戦となれば先行型が波乱の目となる。昨秋も天皇賞・秋では逃げたホウオウビスケッツが8番人気3着、ジャパンCも同着2頭は4コーナー1、2番手にいた7、8番人気だった。どちらもドウデュースの強襲にあい、涙を飲んだが、そのドウデュースがいなくなったのであれば、先行型が一気にタイトルをつかむ可能性すら出てくる。

昨年は2、3着に先行馬で正解だったが、今年は先行馬の単勝で大穴狙いも立つ。ベラジオオペラ、ドゥレッツァら実績ある先行型だけではなく、その下に位置する先行型も展開利を得て、実力以上の結果を残すだろう。実力伯仲だからこそ、流れや枠番といった不確定要素が結果をわける。

新章突入の芝中長距離路線、いったい次期王座に就くのはどの馬なのか。有力馬が1月から出走し、早くもその戦いの火ぶたは切られる。競馬ファンは難解な混戦を読み解く読解力が求められる一年になる。

◆【フェアリーステークス2025予想/危険な人気馬】実績上位も例年凡走が続く「0.0.1.8」該当でバッサリ“消し” 近年のトレンドは2戦1勝馬

◆【フェアリーステークス2025予想/前走ローテ】未勝利戦組の“取捨” 「切れ負け」した馬の逆転に注意

◆【フェアリーステークス2025予想】過去10年のレース結果・配当・血統まとめ 傾向分析に使えるお役立ちデータ

◆著者プロフィール

勝木淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬ニュース・コラムサイト『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)などに寄稿。