日本相撲協会の八角理事長(元横綱・北勝海)がこのほど、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。12月28日に財団法人設立100周年のメモリアルイヤーを迎える年頭にあたり、次なる100年の礎をつくる年にしたいと決意表明。一環として、1985…
日本相撲協会の八角理事長(元横綱・北勝海)がこのほど、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。12月28日に財団法人設立100周年のメモリアルイヤーを迎える年頭にあたり、次なる100年の礎をつくる年にしたいと決意表明。一環として、1985年の開館から40年となる東京・両国国技館の今後にも言及し、次世代への道筋をつけたい考えを示した。また課題とする新弟子確保のため、アマチュア相撲界との連携や若年層の大会新設計画も披露した。(取材・構成=三須 慶太)
―昨年は28年ぶりの90日間札止めと盛況だった。
「ようやくコロナが明けたというか、戻ってきたなという感想ですね」
―土俵では大の里、尊富士ら新勢力が台頭。
「大の里にしても尊富士にしても力士の頑張りがあったから、そういうふう(好調な客入り)になってきたと思います。一年納めの九州場所で横綱不在の中、琴桜と豊昇龍の両大関がそれぞれ14勝、13勝。番付上位が最後に締めてくれたのは大きかったですね」
―初場所はダブル綱取りの可能性もある。
「簡単な話ではないでしょうが、ぜひ実現してほしいものですね。もちろん相撲内容も大事です。ただ、それもさることながら、やはり横綱がほしいですね」
―今年は財団法人設立100周年を迎える。
「100年前に思いをはせると、今のように(様々な制度が)確立していないわけですからね。その時代の方々の努力は、本当に大変なことだったと想像します。私が理事長に就任した時からずっと申し上げていますが、100年後も同じ状態で残したい、この大相撲というものを後世にも伝えていかなければならないと思っています」
―次なる100年に向けやらなければならないこと。
「やはり、新弟子の確保でしょうね。(スカウトで)昔は足を運んだり努力すれば何とかなったものですが、今はなかなか難しい面があります。ですから、アマチュアの方と連携していろいろとやっています」
―具体的には。
「理事や役員の中にも学生相撲出身の人がいますので、そういう人にアドバイス聞いたりしています。(27年度から)全国中学校体育大会から相撲競技がなくなるので、その代替大会を国技館でやろうじゃないか、などの話は進んでいます」
―大相撲、アマチュア関係なくうまく連携して。
「そうですね。以前はアマチュアと大相撲は隔たりがあるような感じでしたが、それをなくしていきたいですね。同じ相撲ですから。素質のある、やる気のある子はできれば大相撲に入ってほしいですよね」
―10月にはロンドン公演が開催される予定。24年12月に会場となるロイヤル・アルバート・ホールで会見した。
「大相撲は(日本)独自のもので、海外にないものですから。伝統文化をアピールできればいいと思います。(国内の本場所と)同じ方式、一日一番でね。それを5日間という感じですね」
―次への100年という意味では国技館も開館40年。今後を考える時期では。
「そういう話も出てくるでしょう。国技館をどうしていくか道筋をつけるのは、私の最後の仕事【注1】だと考えています。以前は建て直すことになるだろうと考えていましたが、ロイヤル・アルバート・ホールは(開館から)150年ほど続いているそうです。建物自体が歴史そのもの。あれを見ていいな、と思うようになりました。そうなると今の国技館もあと100年ほどもたせるのか、という話になりますが、さらに維持費もかさむでしょうからね」
―新築の方がコスト面では利点がある場合も。
「その判断をどうするかでしょう。(建て直す)その間、どこに行くかという問題もあります。(維持か新築かの個人的考えは)半々です。コロナ禍でだいぶ財政も苦しくなりました。それを取り返してからでも遅くないかなと思っています」
―蔵前から移り、1985年に現在の両国国技館が開館。そのイメージではなく、あくまでここを本拠にということか。
「そう思いますね。やはりここ両国は聖地と考えます。(駅前など)絶好の立地でもあります」
―伝統継承という意味でも国技館という存在は大事。
「基本ですよね。(土俵や座席がある空間は)江戸時代に入る、と言いましょうか。床山が大銀杏(いちょう)を結って、呼び出しが力士を呼び上げて、行司がさばく、そういうところは変えてはいけないと思います。その代わりに外(コンコースなど)では、遊びの面があると言いましょうか、今は『ガチャガチャ』などもありますし、(野球の)ベースボールパークではないですが、皆様に楽しんでいただきたいですね」
―改めて100周年の2025年はどういう年にしたいか。
「100年前の財団法人に認可された時のように、その礎を築ければいいなと思いますよね。財団法人になったということがまさしく、100年の礎だったと思うんですね。『これがあったから(大相撲が)また100年間、もったんだよ』と言われるぐらいのことやってみたいと思っています」
◆全国中学と大相撲 現役力士では琴桜、大の里、元大関の正代(33)=時津風=らが中学時代に出場。日本中学校体育連盟は昨年6月に、少子化への対応や教員の負担軽減などを理由に27年度から相撲など9競技を実施しないことを決めた。
【注1】八角理事長は1963年6月22日生まれで、2028年6月に65歳の誕生日を迎えるため、日本相撲協会を定年となる。理事としての任期は最長でも同年3月の春場所後の予定。
◆八角 信芳(はっかく・のぶよし)本名・保志信芳、第61代横綱・北勝海。1963年6月22日、北海道広尾町生まれ。61歳。79年春場所、初土俵。87年夏場所後に横綱へ昇進。優勝8回。92年夏場所前に引退。93年9月に年寄「八角」を襲名し、九重部屋から独立して部屋創設。2012年に理事に初当選。広報部長などを歴任し、14年から事業部長。15年九州場所中に北の湖前理事長の死去を受け代行を務め、同年12月に第13代理事長に選出された。