「ジャパネット杯 春の高校バレー」として行われる第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会第2日は6日、東京体育館で行われ、男子の2回戦で、鳥取中央育英(鳥取)は慶応(神奈川)にフルセットの末に惜敗した。◇第3セット25-24。1分近く続…
「ジャパネット杯 春の高校バレー」として行われる第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会第2日は6日、東京体育館で行われ、男子の2回戦で、鳥取中央育英(鳥取)は慶応(神奈川)にフルセットの末に惜敗した。
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第3セット25-24。1分近く続いた長いラリーの途中で、鳥取中央育英のエース星原優来(ゆら、3年)はかがみこんだ。「第2セット終盤から右脚に違和感があって。ずっと我慢していたけど、最後に痛めました」。肉離れのような症状で無念の途中交代。ベンチから仲間を信じ続けたが、願いは届かなかった。
身長169センチ。男子バレーボーラーとしては決して大きくはない体で、180センチ台の選手がそろう慶応の壁を何度も打ち抜いた。真骨頂は、20-24と先にマッチポイントを握られた第2セット。右腿に不安を抱えながらも、迷わず、「俺に持ってこい」とトスを呼び続けた。最高到達点325センチの跳躍から、強打や軟打でほぼ全得点を決め、30-28でこのセットを奪うと、応援席に向けて拳を突き上げた。
「小さな巨人ですよね。大したもんですよ。もう筋肉の限界だったのかな」。そう笑う、桑名圭司監督の目には涙がほろり。もともと1年時から右腿付近を痛める癖があったといい、最後までトスを託し続けたセッターの井上大和(3年)は「ここまで打ってくれた。勝たせてあげたかった」と唇をかんだ。
歴史は作った。5日の1回戦は東京学館新潟(新潟)を2-1で下し、出場8回目で悲願の初勝利。現行の1月開催となった2011年から勝ち星のなかった鳥取県勢に大きな、大きな1勝をもたらし、桑名監督は「最後まで諦めず、強敵に向かっていく。そういう思いが見えて、いい大会、いい舞台でした」と選手らをたたえた。
バレー漫画「ハイキュー!!」の主人公で、小柄ながらも身体能力の高さで立ち向かう日向翔陽(ひなた・しょうよう)にその姿を重ねる人も多かったはず。そう伝えると、星原は少し誇らしそうな顔で言った。
「自分より大きい選手には絶対に負けたくないという気持ちでこの3年間やり続けてきました。ちっちゃくても通用する、ということを、この舞台で少しでも証明できたかな」
卒業後も、関西大学バレー2部の桃山学院大でバレーを続けるという。鳥取の歴史を作った〝小さな巨人〟はきっとこれからも、宙を舞う度に見る人の心を奮わせていくだろう。(川峯千尋)