1月5日、レアル・ソシエダ(以下、ラ・レアル)は、2025年最初のゲームを戦った。スペイン国王杯、ラウンド32で3部のポンフェラディーナと戦い、敵地で0-2と勝利を飾った。悪くない1年のスタートをきれた、と言えるだろう。 久保建英は後半か…
1月5日、レアル・ソシエダ(以下、ラ・レアル)は、2025年最初のゲームを戦った。スペイン国王杯、ラウンド32で3部のポンフェラディーナと戦い、敵地で0-2と勝利を飾った。悪くない1年のスタートをきれた、と言えるだろう。
久保建英は後半から出場し、ラ・レアルの勝利に貢献している。相手ゴールへの推進力を出す、という点で傑出していた。ドリブルやランニングでスピード、パワーを生み出し、複数の敵を引きつけ、前にボールを運び、相手の動揺を生み、それが後半の2得点につながった。アディショナルタイム、カウンターからの絶好機を決めていたら、満点の出来だったと言えるだろう。
2025年初戦のポンフェラディーナ戦に後半から出場、勝利に貢献した久保建英(レアル・ソシエダ) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
「思った以上の苦戦で、もっと早く出すべきだった」
そんな意見もあるだろうが、ポンフェラディーナは過去10年、2部が主戦場で、昨シーズンは3部での戦いながら昇格プレーオフに勝ち進んでおり、伏兵と言える。ラ・レアル戦も、特に守りに入ることはなく、一度や二度ではない決定機を作っていた。
そもそも、国王杯とはそういうトーナメントである。極端に守備を固める文化もなく、"サッカー"でやり合える。しかも1部のチームは敵地(スタジアムによっては芝生の状態が悪く、ピッチも小さい)で戦い、メンバーを落とすのが通例で、士気の違いは歴然としており(勝っても実入りは少なく、日程が過密になる)、"波乱が通常運転"なのだ
今シーズンも、すでに1部のビジャレアル、アラベス、ジローナ、マジョルカ、バジャドリードが3部の相手に敗退。同じく、セビージャ、ラス・パルマスが2部に敗れ去っている。ラウンド32を勝ち上がったアスレティック・ビルバオも、3部のログローニョにスコアレスドローからのPK戦にまで持ち込まれていた。レアル・マドリードやバルセロナもかつては3部に敗れているし、勝ち上がるのは簡単ではない。
逆説的に考えれば、そうした展開のカップ戦でも勝利へのギアを上げられた久保は、地力を示したと言えるだろう。
【可能性が高いプレミアリーグだが...】
久保はどこへ移籍するのか?
2025年は今までに増して、それが報道やSNSで取り沙汰されることになるのではないか。
今の久保はどのクラブでも通用する。ラ・レアルで、それだけの実力を身につけた。たとえ、バルセロナであれ、アーセナルであれ、レアル・マドリードであれ、パリ・サンジェルマン(PSG)であれ、ミランであれ、欧州のトップクラブどこであっても、通用するはずだ。
しかし、「通用する」ことと、「活躍できるか」「最適解か」は違う。
たとえば、ラミン・ヤマル(バルセロナ)、ブカヨ・サカ(アーセナル)のようなレフティモンスターがいるクラブに行くのが得策なのか。すでにキリアン・エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ジュード・ベリンガムなど個性が強い王様が揃い、ブラヒム・ディアス、アルダ・ギュレルなど次世代アタッカーも控えるクラブへの移籍も現実的ではない。
PSGはビッグクラブで大幅な給料アップは見込めるが、フランス、リーグアンに移籍するなら、スペイン、ラ・リーガのほうが高い競争力の中で切磋琢磨できる。ミランは名門だが、セリエAはラ・リーガよりも若干レベルが劣り、鎌田大地の例を挙げるまでもなく、日本人に合うとは思えない(中田英寿、長友佑都、冨安健洋、吉田麻也はフィジカル面でのハンデがなかった)。何より、スペイン的視点からすればスペクタクル性に乏しいリーグだ。
世界最高峰のプレミアリーグが新天地になる可能性は大きいが、久保はチャンピオンズリーグでのプレーを望んでいるはずで、さらに候補は絞られる。たとえばマンチェスター・ユナイテッドのように不安定なクラブに行くのは大きなリスクがあるし、アストン・ビラは進境著しいが、ビジャレアル時代に"不和"だったウナイ・エメリが監督である。
やはり、噂に聞こえるリバプールが有力だろう。
昨年の夏には実際に交渉もあったようで、現実的だ。サッカースタイルも攻撃的で、トランジションを重んじ、適性もある。右アタッカーのモハメド・サラーは今も世界トップクラスのレフティだが、今年で33歳になり、契約も現時点では今年6月末までだ。
もっとも、すべては久保次第だろう。
ラ・リーガ、ヨーロッパリーグ、国王杯で、できるだけチームを上位に導く働きができるか? ビッグクラブは先物買いをしないし、そのシーズンで相応の活躍をしない限り、オファーを出すことはない。他にもレフティアタッカーは生まれている。チームがどんな状況であれ、活躍できる"チャンピオンの精神"がカギになりそうだが......。
ひとつ言えるのは、日本人選手が「ラ・レアルのエース」と言われるだけで新時代の響きがある、ということだろう。今や当然として受け取られがちだが、昔は考えられなかった。ほとんどの日本人が門前払いに合い、到達できなかった領域に久保は達しているのだ。
1月13日、ビジャレアル戦が、ラ・リーガ年明け1戦目となる。