J1個人昇格組と言えば、今季J1に参入する清水エスパルス、横浜FC、ファジアーノ岡山の3チームの選手にも目を向ける必要がある。 清水と横浜FCはJ1に何度も上がっているチームだが、最高峰リーグの経験が少ないメンバーもいる。そして岡山はJ1…
J1個人昇格組と言えば、今季J1に参入する清水エスパルス、横浜FC、ファジアーノ岡山の3チームの選手にも目を向ける必要がある。
清水と横浜FCはJ1に何度も上がっているチームだが、最高峰リーグの経験が少ないメンバーもいる。そして岡山はJ1未体験という人材も少なくない。彼らが存在感を示せるか否か。それが今季の成否を大きく左右すると言っていい。
まず清水だが、町田ゼルビアから完全移籍した宇野禅斗に注目する必要があるだろう。宇野はご存じの通り、青森山田時代の2021年度に高校総体、高円宮杯U-18プレミアリーグイースト、高校選手権の3冠を獲得。鳴り物入りで2022年にJ2だった町田入りした。が、ランコ・ポポヴィッチ監督体制だったプロ1年目は9試合出場にとどまり、恩師・黒田剛監督が就任した2023年は18試合出場と出番が増えたものの、絶対的主力を確保するには至らなかった。2024年は初のJ1参戦となったが、4試合に出ただけ。本人ももがき続けていたに違いない。
そんな時、デュエルに強く、ボール奪取力に秀でたボランチを求めていた清水からオファーが届き、レンタルで赴くことになった。すると彼は瞬く間に主力の座を射止め、12試合出場2ゴールという数字を残し、後半戦のキーマンとなった。
その貢献度を高く評価され、今季から清水に完全移籍。引き続き、ボランチの主軸と位置づけられるだろう。となれば、今季こそが宇野にとっての本格的なJ1デビューとなる。ここまでの苦労や努力を全てピッチ上で示せれば、彼は大きな飛躍を遂げられるはず。清水にとっても宇野の出来が非常に重要なポイントになってくるだけに、彼には佐野海舟(マインツ)のような軌跡を描いてほしいものである。
■父譲りの走力と運動量
1年でJ1復帰を果たした横浜FCもJ1経験者中心の陣容ではあるが、新戦力の新保海鈴はフォーカスしたい人材だ。
彼は元日本代表の田中隼磨(解説者)を父に持ち、柏レイソルやセレッソ大阪のアカデミーで成長。2021年にレノファ山口でプロキャリアをスタートさせた。その後、2022年はJ3のテゲバジャーロ宮﨑、2023年は同いわてグルージャ盛岡でレンタルを経験。2024年に山口に戻ってフル稼働し、今回ようやく最高峰リーグへのステップアップを叶えた苦労人である。
父譲りの走力と運動量を備えた左サイドバック(SB)で、以前より守備強度も高まった。四方田修平監督はJ1残留のために守りをベースに考えたチーム作りを進めると見られるだけに、彼が主力に定着しようと思うなら、守備力をもっと高める必要がありそうだ。それでも、アグレッシブで粘り強いプレースタイルは指揮官好みでもある。本人も初挑戦のJ1でどこまでやれるかワクワクしているに違いない。こういうフレッシュな選手がブレイクすれば、横浜FCも盛り上がるはずだ。
■岡山のJ1・1年目を背負う岩渕弘人
そしてJ1昇格1年目の岡山では、2024年J2・13ゴールでチーム最多得点者となった岩渕弘人が最も気になるアタッカーだ。
岩渕は仙台大学時代は松尾佑介(浦和)と同期。横浜FCから浦和へステップアップした松尾よりは少し時間がかかったが、彼もいわきFC入りしてJFL、J3、J2と着実にカテゴリーを上げて、最高峰リーグをつかみ取った。
「2020年にプロになった時はこうやってJ2でプレーできるとは夢にも思っていなかった。毎年毎年、そのカテゴリーで結果を出すことしか考えてなかった。それでJFLからJ3、J2へと上がってこれた。これからも謙虚にやっていきたいと思います」と本人も昨季終盤に謙虚な姿勢を示していたが、その真摯な姿勢があったから、ここまでの劇的な成長曲線を描けたのだろう。
「岩渕は本当に賢い選手で、我々のやりたいこと、自分のできることの理解度が非常に高かった。2024年の開幕後、すぐ中心になったものの、序盤はチャンスを決め切れないことも多かった。本人にも焦りがあったと思います。そこで彼はゴールを取るために必要なことを考え、落ち着きやサボらないといったことを続け、修正していった。取るべき部分が研ぎ澄まされたと感じています」
木山隆之監督も太鼓判を押す男がJ1でどこまでブレイクできるか。そこに岡山の命運がかかっていると言ってもいいほどだ。岡山が台風の目になってくれれば、J1も確実に盛り上がる。彼らにはぜひともサプライズを与えてもらいたい。
(取材・文/元川悦子)