現時点での森保ジャパンのFWの軸となっているのは上田綺世と小川航基で、さらにそこに割って入ろうと大橋祐紀と古橋亨梧がアピールしているという状況だ。 しかし、25年は“チャンス”がさらに拡大する。7月にE-1選手権が開催される予定で、Aマッ…

 現時点での森保ジャパンのFWの軸となっているのは上田綺世小川航基で、さらにそこに割って入ろうと大橋祐紀古橋亨梧がアピールしているという状況だ。

 しかし、25年は“チャンス”がさらに拡大する。7月にE-1選手権が開催される予定で、Aマッチデー以外での開催であることから国内組が中心となってメンバー構成される見込み。3月にW杯出場権を獲得した場合には6月シリーズにおいても幅広くアピール機会が与えられる可能性が高く、上記4人以外にもチャンスを掴める可能性が高まることとなる。
 第1次森保ジャパンに目を向ければ、2022年のE-1選手権で初めて代表に召集された町野修斗が3試合で3得点を記録して結果的にカタール大会のメンバー入りをした前例もある。北中米を狙うストライカーにとって、このチャンスを掴めるかどうかが今後を大きく左右する。
 その中で、注目されるまず一人目が細谷真大柏レイソル)。パリ五輪代表でのエースストライカーは、2022年7月のE―1選手権で代表初召集。23年11月のアジア2次予選第2戦シリア戦で代表初ゴールを決めており、24年1月にはアジアカップのメンバーにも選出されていた。
 しかし、その24年は絶不調の中にあり、リーグ戦で初ゴールを決めたのは5月15日のこと。開幕でPKを外すなど12試合無得点が続いていた。その影響もあって、9月シリーズを最後にA代表から外れている。

■細谷真大の決断

 一方で、U―23代表監督の大岩剛監督の信頼を勝ち得ていたことも含め、間違いなく頼りになるストライカーだ。パリ五輪の出場権を懸けたU-23アジアカップで大一番となったカタール戦では、コーチ陣から交代の献策も出る中で、大岩監督がピッチに立たせることを決断。それが実って、大きな価値のあるゴールを決めていた。
 その細谷は、パリ五輪終了後のA代表の舞台である9月シリーズの際に、「アジアカップの時と比べてプレーの幅も広がってますし、いいプレーをできる自信もあるので、違ったものを見せられる」と語っているように、得点以外でもチームに貢献できる幅を広げてきた。
 また、1トップ争いについても、自身の武器について裏への抜け出しと当たりの強さを挙げたうえで「それぞれ違った良さがあるので、その競争に入っていきたいっていうのがあるので、厳しいものにはなると思いますけど、爪痕を残せるように頑張りたい」と話して意気込む。
「あとは本当にワールドカップしかないので、オリンピックで得た経験もそうですし、繋げていかないといけない」
 こうも語る細谷は、海外や国内他クラブへの移籍の可能性もあった中で、25年は柏でプレーする方向。リカルド・ロドリゲス新監督の下でプレーの幅を広げることで、さらなる可能性も見せられるはずだ。24年はリーグ戦で6ゴールだった結果においても、23年の14ゴールのような目に見えるものが求められる。

■日本人最多スコアラーの2人

 細谷が真価を発揮しきれていない24年のJ1リーグで、日本人最多スコアラーに輝いたのは19ゴールの山田新(川崎フロンターレ)とジャーメイン良(24年はジュビロ磐田、25年はサンフレッチェ広島)だ。
 15ゴールの鈴木優磨、13ゴールの武藤嘉紀、12ゴールの宇佐美貴史、11ゴールの大迫勇也宮代大聖らを抑えて、J全体で3位タイになった2人はこれまでA代表への召集歴がないため、Jリーグの底上げをした存在とも言える。
 24年シーズンがプロ2年目だった山田は、アウェイ・アビスパ福岡戦やアウェイ・京都サンガF.C.戦でのゴールでも見られるような力強いプレーが持ち味で、強靭なフィジカルを生かしてチームに貢献した。
 24歳という年齢だけにさらに伸びることが期待できる選手で、実際、代表に選ばれるには粗削りな部分やクロスへの入り方など、改善点はかなり多い。特にクロスへの入り方は鬼木達監督やチームメイトも言及している部分で、それをトレーニングで改善している真っ最中だ。
 本人も日本代表入りを目標としており、24年12月の最終節を前にして改めて、「代表に入らないといけないと思う。ただ、今のままの活躍じゃまだ足りないと思うので、Jリーグで圧倒的な存在になりたい」と力強く語っていた。

■山田新に残る鬼木達監督の言葉

 24歳にして川崎の勝敗を背負う立場にまで成長したが、それと向き合う覚悟はできている。というのも、24年限りで退任した鬼木達監督から受けた「ストライカーはいろんなプレッシャーがある中で生きていかないといけない」の言葉を胸に秘めているからだ。
 試合に出場するストライカーには、サポーターやそれ以外のサッカーファン、チームメイトに監督など、さまざまな人から得点のプレッシャーがかかる。その重圧につぶされずに、その中で生き抜く必要性をしっかりと感じている。
「自分が決めればチームは勝てるので、そういうすごい重い責任がある」
 こう決意を固めながらも、「それすらも楽しみながらやれればいい」とも言い切る。
 そんな山田にとってさらなる成長のカギとなると思われるのが、前線での守備。森保ジャパンでの頭角を現している小川航基は、10月の時点で、サウジアラビア・ジェッダのスタジアムで「みんなヨーロッパでやっている選手が多い中で、基本的にはやっぱり前からボールを取りに行って自分たちで主導権を握るっていうのが頭にある。僕としてはすごくやりやすいというか、中途半端というよりかは、ちょっと前に行くような意識をみんな持っている」と語っており、これがヒントとなるかもしれない。

■他にも7人が2ケタ得点

 ジャーメイン良は1995年4月生まれの現在29歳。年齢的には“ベテラン”へと足を踏み入れる中で、24年に初めてプロ2ケタ得点を記録した。3月の川崎フロンターレ戦では1試合4得点を記録するなど、爆発力も兼ね備えている。
 3年間プレーしたジュビロ磐田を離れ、今季はサンフレッチェ広島への移籍を決断。昨年、湘南ベルマーレから広島へと移籍して得点力をさらに開花させ、海外やA代表へのチャンスを掴んだ大橋祐紀のような活躍が望まれる。
 24年のリーグ戦で、他にA代表選出歴がない2ケタスコアラーは11ゴールの宮代大聖(ヴィッセル神戸)と、10ゴールの木下康介(柏レイソル)、木村勇大(東京ヴェルディ)、福田翔生と鈴木章斗(いずれも湘南ベルマーレ)、谷口海斗アルビレックス新潟)、坂本一彩(ガンバ大阪)らがいる。
 この7人に、山田新とジャーメイン良を加えた9人はいずれもJ1・2ケタ得点はこれが初めて。25年の7月のE―1選手権を前に得点力を見せるストライカーが現れるかもしれず、競争はさらに激化するはずだ。
 また、先述した町野修斗もブンデスリーガでここまで14試合6得点を記録。カタール大会では出場機会のなかった悔しさからの、順調な成長を見せている。
 25年を飛躍の年として26年のチャンスを掴めるストライカーははたして誰か。シーズンの始動は間もなくだ。
(取材・文/中地拓也)

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