日本代表の「まさか」のアジア杯ベスト8敗退で幕を開けた2024年の日本サッカー界。3月には宮本恒靖氏が日本サッカー協会(JFA)会長に就任し、開幕したJリーグでは初昇格のFC町田ゼルビアが大躍進すると、パリ五輪では男女ともにベスト8入り。…
日本代表の「まさか」のアジア杯ベスト8敗退で幕を開けた2024年の日本サッカー界。3月には宮本恒靖氏が日本サッカー協会(JFA)会長に就任し、開幕したJリーグでは初昇格のFC町田ゼルビアが大躍進すると、パリ五輪では男女ともにベスト8入り。9月にスタートしたW杯アジア最終予選では負けなしの快進撃で、FIFAランクで森保ジャパン史上、最高位となる15位を記録。最後の最後までもつれたJリーグの優勝争いは、ヴィッセル神戸の2連覇で幕を閉じた。そこで『サッカー批評』では、サッカージャーナリストの大住良之氏と後藤健生氏に、2024年のサッカー界を振り返ってもらうとともに、2025年の行方を占ってもらった。サッカー歴50年以上の大ベテラン2人が「愛するサッカー」について、朝まで大激論!
■「大化け期待」の鹿島ユース17歳
――チェイス・アンリらの他に、2026年やその次のワールドカップも見据えて日本代表に入れたい選手は誰ですか。
後藤「その前に、冨安健洋にはケガをしないようにしてほしいね」
大住「ワールドカップ本大会のときに良いコンディションでいてほしい」
後藤「あれだけケガが多いと、いまいち信用できなくなっちゃうね。あと1トップを任せられるような選手がほしい。鹿島アントラーズユースの17歳、徳田誉みたいな選手が大化けしないかな」
大住「何人か候補はいると思うんだけどね、時間的に間に合うかどうかだね」
後藤「ただ1トップに入るタイプの選手には、大化けすることがあり得るよ。釜本邦茂が20歳で1964年の東京オリンピックに間に合ったように。あれだって、10代の頃から相当無理して使って、間に合わせたわけでしょ。そういう成長が起きる確率は、低いけれどゼロじゃない」
■イタリア代表相手に「ハットトリック」
――Jリーグを経由しないでヨーロッパに渡った福田獅王(ドイツ1部ボルシアMG所属)のような選手もいます。
大住「候補は本当にたくさんいるんだよ。大学2年でオランダに行った塩貝健人(オランダ1部NECナイメヘン所属)だって、馬力があるもんね」
後藤「そうそう。U-21イタリア代表相手にハットトリックはすごかった。全体のレベルがこれだけ高いんだから、人材はいつか出てくるよ」
大住「9月からできるだけ強いところと対戦しなくちゃいけないし、そのときに全員テストのメンバーでというわけにはいかない。6月の最終予選2試合は出場権を狙う相手が必死に挑んでくるだろうし、森保一監督はどう考えるかな。とにかく、チャンスを逃さずに、新戦力をうまく使わなきゃいけない」
後藤「11人総入れ替えしたチームで試合をしてもしょうがないから、今までの11人に何人新しい選手を加えるかのさじ加減がすごく難しいよね。4人新しい選手を入れて、また次の試合で新しい選手を4人入れて、みたいなことを続けて、徐々に変えていくのかな」
大住「難しいけど、それをやらないとワールドカップに間に合わないからね」
――まだ情報は出ていませんが、この冬にJリーグから海外に羽ばたいてブレイクする選手もいるかもしれませんし。
後藤「話が出てくるのは、冬の移籍市場が閉まる、ぎりぎりのタイミングが近づいてからじゃないの」
大住「関根大輝あたりが候補かな?」
後藤「関根は候補に入るね。あとは高井幸大」
大住「それに細谷真大か」
後藤「中野就斗なんて、どうですか?」
大住「中野はタフな戦いが続いた2024年のサンフレッチェ広島で、リーグ戦で一番長い時間出場したフィールドプレーヤーだからね」
後藤「いろいろなポジションができるしね」
大住「スピードもシュート力もあるし、すごくしっかりした守備ができる。中野は面白いと思うよ」
■Jリーグの歴史において「転換点」に
――そうなると、また欧州に戦力を引き抜かれる広島としては痛手ですね。
後藤「Jリーグ自体が、もっとお金をもうけられるようにならないといけない。ヨーロッパから代表クラスの選手を呼べるようにならないと。このままだと日本人選手がどんどん出ていくばかりになっちゃうよ。だから2025年のJリーグでは、2部だけど大宮アルディージャ、つまり大宮を買収した外資のレッドブルに注目しているんだよ。もしかしたら、Jリーグの歴史において非常に大きな転換点だった、と言われる年になるかもしれない。
今のJリーグって、競技力は相当高いレベルにあるけれど、経営的にはヨーロッパのリーグと比べて小さすぎる。その現状を打破するために、外資をどんどん入れていかないといけない。2025年の大宮は、まず継続性を非常に重視して、何かを大きく変えるわけではないようだけど、この先の外資導入の先鞭となるシーズンにできるかな。10年後には外資がいっぱい入ってきて、給料も高いし、良い環境で高いレベルの試合ができるからと、ヨーロッパで代表入りを狙うような若手がどんどん来るようになっていればいい」
大住「それが一番良いよね。Jリーグに来たら、きちんとした指導で伸びるからと、信頼されて選手を預けてもらえる。Jリーグで2年プレーした選手は成長速度が違うとでも評判になれば一番良いよね。Jリーグのクラブがヨーロッパのように1000億円クラスの収入を得られるというのは、今のところ考えられないけど…」
後藤「20年たったら、どうなっているか分からないよ」