2024年シーズンはヴィッセル神戸のJ1・2連覇・天皇杯との2冠で幕を閉じたが、2025年も彼らがリーグ全体をリードする構図が有力視される。今季までキャプテンを務めた山口蛍が来季からJ2のV・ファーレン長崎へ電撃移籍するというショッキング…
2024年シーズンはヴィッセル神戸のJ1・2連覇・天皇杯との2冠で幕を閉じたが、2025年も彼らがリーグ全体をリードする構図が有力視される。今季までキャプテンを務めた山口蛍が来季からJ2のV・ファーレン長崎へ電撃移籍するというショッキングな出来事に見舞われたが、流出の噂のあった武藤嘉紀は残留。分厚い選手層は維持できそうな見通しが立ったと言っていい。
ただ、その弊害もないとは言えない。GK新井章太や汰木康也らは出番が少なく、持てる才能を発揮できていない状況にあるのだ。
新井はご存じの通り、東京ヴェルディ、川崎フロンターレ、ジェフ千葉で長いキャリアを誇るベテラン守護神。川崎時代には2019年YBCルヴァンカップ制覇の立役者となり、千葉時代も絶対的GKに君臨。2024年に満を持して神戸に赴いた。が、このクラブには日本代表候補の前川黛也がいて、横浜F・マリノス時代にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)経験のあるオビ・パウエル・オビンナも出られないほどだ。新井も結局、今季リーグ2試合に出ただけ。前川不在時にはピッチに立ったものの、このままの状態はあまりにももったいないというしかない。
■それぞれの置かれた立場
汰木に関しても、2月24日のジュビロ磐田との開幕戦でゴールを決め、左アタッカーの筆頭と目されたが、3月2日の柏レイソル戦での負傷。長期間、試合から遠ざかったのが痛かった。4月末にはいったん復帰したが、またもケガに見舞われ、完全復帰が9月末までずれ込んだ。
本人もここまで長い離脱は経験がなく、戸惑った様子だが、この時点ではチームがある程度、出来上がっていたこともあり、最後までジョーカー的な立ち位置のままだった。勝負を決定づけられるアタッカーだけにこの扱いは残念だ。移籍話も浮上しているが、もしかすると環境を変えた方がいいのかもしれない。
神戸を追走するサンフレッチェ広島、町田ゼルビアも積極補強を進めているが、彼ら以上に人材入れ替えに積極的な印象があるのが名古屋グランパス。豊富な資金力を駆使して浅野雄也(札幌)、宮大樹(福岡)らを集め、選手層をさらに厚くして、優勝争い参戦を目論んでいるのだろう。
ただ、名古屋の場合、他チームで活躍していた選手がやや伸び悩むケースがしばしば散見される。今季鳴り物入りでアビスパ福岡から加入した山岸祐也などは「もっとできる」と言われた選手の代表格だ。
福岡時代2022・2023年と続けて2ケタゴールをマークしていた点取屋が今季はわずか2点というのは不本意というしかない。シーズン中に負傷離脱し、コンスタントな活躍がかなわなかったのも大きかったが、自分より年長の永井謙佑やパトリック(来季から金沢)が6点という数字を残しているのを見ると、まだまだ足りないというしかない。2025年はエース級の点取屋になってほしいところだ。
■森保一監督が興味を示していた選手
同じ名古屋の大卒新人・倍井謙もシーズン序盤は「攻撃陣の中核になるのではないか」と期待されたが、徐々に出番が減少。終盤は活躍の場があまり与えられなかった。2月23日の鹿島アントラーズとの開幕戦を視察した森保一監督が興味を示していた選手だっただけに、尻すぼみのような軌跡は残念だった。彼もいかにして得点力をアップさせていくのかが大きな課題と言えるだろう。
最後に今季低迷した浦和レッズにも目を向けたい。そこで気になったのが、長沼洋一だ。サガン鳥栖から夏に移籍し、チーム活性化の起爆剤になると目されたが、出番自体が少ないままだった。マチェイ・スコルジャ監督は主に左サイドバックで起用していたが、来季は荻原拓也(ディナモ・ザグレブ)の復帰が濃厚。大畑歩夢も残留することになれば、そのポジションでも出られるかどうか分からないのだ。
彼はもっと前目の方が推進力や打開力を発揮できそうだが、前線にも原口元気や関根貴大、松尾佑介らがいる。愛媛FCや鳥栖で実績を残してきた人材だけにもっと有効活用できるはずだが、果たして来季はどうなるのか。浦和の動向も踏まえつつ、注視していきたいものである。
(取材・文/元川悦子)