群馬グリーンウイングス 選手コメント 今季よりスタートしたバレーボールSVリーグ。群馬グリーンウイングスにとっては初のトップカテゴリーへの挑戦でもある。2024年を終了して0勝16敗。 しかし、明白な力不足というわけではない。 「善…

群馬グリーンウイングス 選手コメント

今季よりスタートしたバレーボールSVリーグ。群馬グリーンウイングスにとっては初のトップカテゴリーへの挑戦でもある。

2024年を終了して0勝16敗。
しかし、明白な力不足というわけではない。
「善戦すれども勝利に届かず」
といった表現が適当であろう。群馬は実際に各試合で好ゲームを展開し、セットも奪取できている。勝利にあと一歩、の試合もあった。

外国籍選手や、移籍選手の貢献もある。とりわけ、PFUブルーキャッツ石川かほくから加入した髙相みな実選手の技巧と強い心はグリーンウイングスファンの心を引き付け、チームを着実に前進へ導いている。

指揮を執るのは3シーズン目の齋藤真由美監督。V2時代は「全員バレー」を掲げ、そして貫き通した。
誰が先発するのか予想ができない文字通りのメンバー全員による総力戦。群馬の「全員バレー」は勝利と育成という2つのテーマ、そして齋藤真由美監督のバレーに対する信念を形にした唯一無二の「全員バレー」だった。

しかし、V2時代とは異なり格上とも言える相手がひしめくトップカテゴリーでは理想だけを先行させるわけにはいかない。開幕節の記者会見では齋藤真由美監督から思いがけない言葉も漏れた。
「外国籍選手も複数加わった。固定をしていかなければいけない部分もある。それを踏まえて全員攻撃に取り組みたい。今までにないスタンスで戦力を活かしきる」
「全員バレー」を封印したわけではない。ただ、群馬グリーンウイングスはイニシアティブが取れたV2とは違う世界に足を踏み入れた。現実と向き合い、最善を尽くす必要がある。SVリーグで会場の雰囲気も一段と華やかになった。当然、コストもV2時代の比ではない。プロである以上、周囲の期待と投資には勝利という形で答える必要がある。

齋藤真由美監督をはじめ、選手、スタッフも苦悩と試行錯誤を続けながらのシーズンになるだろう。移籍加入、新入団、それぞれの立場で3シーズンを「マッチョさん」と共に戦い、群馬をSVリーグに押し上げてきた4選手に「群馬グリーンウイングスの現在地」を聞いた。

●白岩蘭奈選手(アウトサイドヒッター)

――SVリーグに参戦。簡単な戦いではないという覚悟を持って今季に臨まれたと思います。年末まで戦ってみてどのように感じているか?

白岩:やっぱり感じるのは高さとパワーですね。上位チームの相手になればなるほどその部分に対して難しさや課題が見て取れます。でも私たちにも戦い方はあって、ディフェンスをしっかり強化して、オフェンス時の枚数を増やして攻撃ができれば通用していると思います。
いかに試合の中でそういった場面を増やしていくのか、それが今の自分たちの課題ですね。

――白岩選手自身の試合に対する意欲も強く感じます。

白岩:自分がどうやって1点に貢献できるかということは常に考えていて、2枚替えで入るときは流れを変えるための雰囲気づくりも意識してやっています。

●道下ひなの選手(ミドルブロッカー)

――ここまでのSVリーグの戦いは?

道下:上位チームは特に修正力が高いですね。私たちがやっていることへの対応の速さ、そこにすごく差を感じています。
「やるべきことをしっかりやる」ということについてなら、私たちは試合を重ねながらできるようになってきています。でも「こちらの攻撃が決まった」「そこに相手がブロックで対応してきた」ではその次に何をすればいいのか、そういうところでの工夫がまだ足りていません。
サーブターゲットも相手は試合中にいろいろ変えてきます。私たちは選手自身が主体的に変化をもたらせているかというと、そこで他チームとの力の差を感じてしまいます。
応用力は試合を重ねていく中でどんどん身についていくものだと思います。いろんなチームと戦いながら自分の良さをどう活かすのか、自分自身が切り開いていくことが必要だと思います。
それができないとなかなか1勝はできないでしょう。SVリーグでの勝利は遠いと思っています。

――スパイクでミドルを印象付けるという役割を求められていますね。

道下:スピード、それからコンビの精度を上げることに取り組んでいます。
今日の試合(12月29日デンソー戦)でも練習の成果が出せているのでそこは良かったと思っています。だた試合の頭、第1セットだけではなく、続く第2、第3セットもしっかりそれをやっていかないと展開が変わってしまうのを実感しました。試合を通してできるように頑張っていきたいです。

●菊地実結選手(オポジット/ミドルブロッカー/アウトサイドヒッター)

――「全員バレー」の中でも特別な役割、スパイカーからセッターまでマルチポジションをこなしてきました。入団以来、齋藤監督のバレーを体現するキープレーヤーとして活躍してきましたが、SVリーグの中では自分のプレーをどう活かしていきたい?

菊地:SVリーグに参入するにあたって自分の役割を一つひとつ噛み砕いて理解することが大事だなと思ってきました。そこに対して、シーズンの始まる前から考えていたこともありますし、試合の中で敗戦を経験して理解したこともあります。
自分の強みって何だろう。そう考えたときに、まさに「マルチポジション」が当てはまりました。
シーズンの序盤はアウトサイドで、今はオポジットでも起用してもらっています。どちらにも対応していける力があるから使ってもらえている。
私は「これだけ」じゃない。できることがいくつもあることが強みなんだなって。

自分で自分の特徴を認識する。その特徴を全面に出す。
試合ごと、セットごとに自分の役割は少しずつ変わってきます。状況に応じて求められることを理解して、どういうプレーでチームに貢献するのか、一番力を使っていきたいポイントです。

●藤井寧々選手(アウトサイドヒッター)

――SVリーグを戦うにあたって戸惑いや不安はあった?

藤井:正直未知の世界だったので戸惑いはありました。相手はどのぐらいの強さなのか、どれぐらいの高さでの戦いになるのか。わからないけどもうやるしかない、そんな状態でしたね。
相手と戦うのが怖いというか、勝ちきるための心だったり技術が全然追いつけていなかったと感じたときもあります。
未知の不安に対しては試合をやっていく中でだんだん慣れてきます。でも今度は知ることの怖さもあります。相手の高さを実感してしまい、「これぐらいの高さが来るんだ」と過敏に意識をしてしまう。
精神的に乗り越えて、不安を超越する技術力をつけていかなければと感じています。

――大阪MVとのGAME1(12月7日)、第1セットの決定率は7割ありました。掴み始めたものがある?

藤井:私は身長が高くないのでリバウンドを何回も取ったり、ブロックに対してどう打っていくかを考えなければなりません。
練習ではできるけど試合では感情が先に出てしまってできなくなることも多くあります。
今日の試合では高い打点から長いコースに打つことを意識してプレーできたので手応えを感じました。でも相手はそのプレーにも途中から対応してきます。もっと自分の決め方の引き出しを増やしていきたいですね。

白岩蘭奈は躍動感とその華やかさでチームに勢いをもたらし、道下ひなのはコンディションも上昇。武器である高い決定力を発揮している。
菊地実結はポジションにとらわれることなくコートの中を縦横無尽に動き、藤井寧々は自信という大きな武器を手に入れつつある。菊地、藤井とは同期入団のオポジット正木七海(旭川実業高卒)もパワーのあるスパイクで今季大きく存在感を増している。

某日の記者会見、敗戦が続いていることに対して選手のメンタルケアを問われた齋藤監督は凛とした声でこう返答した。
「私たち、負け慣れしているように見えますか?」
答えは否、である。

選手達もここまで負け続けた経験はバレー人生の中で初めてのことかもしれない。しかしコートの中も、ベンチの選手も、ベンチアウトの選手も一体感は揺るがない。
負傷し、戦線離脱中の正リベロ栗栖留生が誰よりも明るくチームを盛り上げる。

今は臥竜鳳雛の時、群馬グリーンウイングスの飛翔に大いに期待したい。

撮影 堀江丈