サッカーを求めて世界中を旅してきたベテランジャーナリストの後藤健生。そんな百戦錬磨の旅人を驚かせるのは、中国の人々だ。蹴球放浪家がスタジアムで、街中で、遭遇した、良い意味でも、悪い意味でも「存在感がありすぎる」隣国の人々!■厳しい「一人っ…

 サッカーを求めて世界中を旅してきたベテランジャーナリストの後藤健生。そんな百戦錬磨の旅人を驚かせるのは、中国の人々だ。蹴球放浪家がスタジアムで、街中で、遭遇した、良い意味でも、悪い意味でも「存在感がありすぎる」隣国の人々!

■厳しい「一人っ子」政策のツケ

 中国で人口減少が始まったと言われています。当然のことでしょう。中国政府はずっと厳しい「一人っ子」政策をとっていたのですから、親となるべき若者の数が減ってくるわけです。今になって、政府がいくら「子どもを増やせ」と号令をかけても、どうにもなりません。

 年金など社会保障政策がまだ十分に行き渡っていない中で人口減少が進めば、社会不安が広がってしまいます。ヨーロッパの先進国は数百年かけて近代化をしましたが、日本はそれを100年ほどで成し遂げました。しかし、中国はそれを数十年のうちに行ったので、社会的なインフラは整備されていません。中国は、軍備拡大などに資源を使っている場合ではないのです。

 それでも、中国が人口大国なのは間違いありません。なにしろ、人口は14億人なのですから。

 中国でバスに乗って旅行していると、本当にそう思います。名前も聞いたことのないような街に差し掛かります。で、「維基百科(ウィキペディア)」や「百度(バイドゥ=中国版ウィキペディア)」で調べてみると、その街の人口が300万人だとか、500万人だとか書いてあるのでビックリするのです。

 東京都の人口が(23区のみで)1000万人弱。人口第2位の横浜市が約380万人、第3位の大阪市が約270万人。そんな、人口300万人級の都市が、中国には無数にあるのです……。

■中国代表は「出場していない」のに…

 海外を旅行していても、中国人観光客が多いのは一目瞭然です。いや、海外まで行かなくても、東京都内でも数多くの中国人旅行客の姿を見かけます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック前に比べると、中国人の来日者数は減っているそうですが、それでもどこに行っても中国人を見ない日はありません。

 僕が、中国人の数にビックリしたのは、2018年のロシア・ワールドカップのときでした。

 スタジアム周辺にも中国人ファンがたくさんいました。

 中国は出場していないはずなのに、スタジアムの広告看板は中国のスポンサー企業だらけ。「蒙牛」という乳製品メーカーの名前を初めて知りました。そして、各国のユニフォームを着た中国人サポーターがスタジアム周辺を埋め尽くしていました。

「なんだ、自分の国は出ていないのに……」と、からかいたくなってしまいましたが、考えてみれば、これは30~40年ほど前の日本と同じです。

■多くの広告看板が「日本企業」だった

 1980年代のワールドカップでは、広告看板の多くが「世界第二の経済大国」日本の企業でした。そして、代表チームは弱くてアジア予選を突破できないというのに、数多くの日本人サッカー・ファンがワールドカップ観戦に訪れていました。それぞれ好みの強豪国のユニフォームを身に着けて……。

 それから30年が経過して日本は経済大国の地位から滑り落ちてしまいましたが、サッカーは強くなりました。今ではラウンド16の常連。日本代表森保一監督は次回大会で「優勝を狙う」と公言しているのです。

 経済大国の地位を維持していたほうが良かったか、それともサッカー強国になったほうが良かったのか……。どちらが幸せと感じるのかは、それぞれの価値観によるのでしょう。もちろん、経済が好調のまま、サッカーが強くなっていたら、一番、良かったのでしょうが。

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