”第二次・森保ジャパン”の2年目だった2024年、アジアカップは準々決勝で敗退という屈辱的な結果に終わったが、その苦い経験をバネにして、3月と6月に行われた二次予選の残り試合、そして9月からスタートした最終予選での圧倒的な結果につなげた。 …

”第二次・森保ジャパン”の2年目だった2024年、アジアカップは準々決勝で敗退という屈辱的な結果に終わったが、その苦い経験をバネにして、3月と6月に行われた二次予選の残り試合、そして9月からスタートした最終予選での圧倒的な結果につなげた。

 その中でも大きな話題となったのが、3バックの本格導入だ。特長は堂安律(フライブルク)、伊東純也(スタッド・ランス)、三笘薫(ブライトン)、中村敬斗(スタッド・ランス)、前田大然セルティック)と言った、サイドアタッカーを左右のウイングバックに並べたことだ。カタールW杯ではほぼ、ぶっつけ本番のような形で3ー4ー2ー1というシステムを使い、ドイツ戦やスペイン戦での勝利につなげた、当時の成功体験が森保一監督の決断を後押しした側面はあるだろう。それに加えて、センターバックを3枚並べることで、攻撃的なタレントを左右のウイングバックに配置しやすいというメリットもある。
 相手に引いて守備を固められることが多くなるアジアの戦いで、1トップと2シャドー、さらに両翼を高い位置に上げて、5トップのようになることで、前に攻撃人数をかけながら、横幅を使った攻撃を仕掛けていくことができるのだ。
 もちろん、こうした戦いを実現するにはボールの主導権を握りながら、相手ボールになれば高い位置で奪いにいくことが求められる。それができなくても、ロングボールを3バックが同数で跳ね返すなど、相手のFWに負けない個の守備能力がベースになるだけに、そうした守備が可能なセンターバックを揃えている必要がある。

冨安健洋伊藤洋輝の復帰後は

 ビルドアップに対しては相手の立ち位置を見ながら、高い位置では4ー4ー2でプレッシャーをかけて、相手のリスタートや自陣に引いて構える時は5ー4ー1のブロックを敷くなど、状況や時間帯に応じた守備のオーガナイズを構築しており、特に後ろの選手には個人で守り切れる守備能力と周囲との連携の両方が高いレベルで求められる。森保監督が、このスタイルに踏み切れたのも、セレクトしたディフェンスの選手たちに対する信頼があるからだろう。
最終予選の6試合で、冨安健洋(アーセナル)と伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)を怪我で一度も招集できなかった。守備の構築において、彼らの不在は痛手になるかと思われたが、最終予選のスタートとなった9月シリーズの中国戦とバーレーン戦、そしてサウジアラビア、オーストラリアという強豪国との連戦だった10月シリーズは右の板倉滉(ボルシアMG)、中央の谷口彰悟(シント=トロイデン)、左の町田浩樹(サンジロワーズ)を固定的に起用した。この4試合で喫した失点は1で、しかも、オーストラリア戦での谷口のオウンゴールだった。
 その谷口をアキレス腱の怪我で欠いた11月シリーズでは、板倉が中央には入り、右ワイドをインドネシア戦で橋岡大樹(ルートン・タウン)、中国戦は瀬古歩夢(グラスホッパー)が起用されて、アウェーの2試合で1失点とまずまずの結果を出した。
 ただ、ところどころ 危ないシーンがあり、橋岡や瀬古の個人としての課題だけでなく、代表の限られた時間で連携面を高めていくことは簡単ではない。谷口に関しては予選突破がかかる来年3月の招集も難しいと見られるが、本来の主力候補である冨安や伊藤が回復してくるかどうかは注目だ。

■攻撃的なタレントを生かすために

 そしてパリ五輪代表組の高井幸大(川崎フロンターレ)や菅原由勢サウサンプトン)と同じく、サイドとのポリバレントである関根大輝(柏レイソル)が3バックの競争に、それだけ食い込んでこられるかもディフェンスラインの底上げという意味で重要なテーマになる。もちろんドイツ1部やチャンピオンズリーグで存在感を見せるチェイス・アンリ(シュトゥットガルト)など、現時点では招集メンバーに入っていない国内外の実力者もおり、冨安や伊藤と同じく、中山雄太(FC町田ゼルビア)もコンディションが戻れば、再び有力候補になりうる。
 まずは来年3月のシリーズで、最終予選の突破を決めることが最優先のテーマとなるが、世界一を目標に掲げる”森保ジャパン”にとって、攻撃的なタレントを生かすためにも、3バックのさらなる強化が重要になることは間違いない。GKに関しては鈴木彩艶(パルマ)が失点につながるミスなどから厳しい批判を浴びたアジアカップ以降、大きな成長を見せて守護神の地位を確立しつつあるが、継続的に選ばれている大迫敬介サンフレッチェ広島)や谷晃生(FC町田ゼルビア)も、サブの立場に甘んじるつもりはないだろう。
 ここからJリーグは短いオフから来シーズンに向けたキャンプに入っていくが、来年3月までにも森保監督を良い意味で悩ませるような選手が、守備的なポジションからも台頭してくることを期待したい。
(取材・文/河治良幸)
(後編へ続く)

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