”森保ジャパン”における攻撃的な3バックの導入で、大きな動きを見せたのは左右ウイングバックと2シャドーだ。 3ー4ー2ー1のお披露目となった6月のミャンマー戦では右ウイングバックが菅原由勢(サウサンプトン)、左が中村敬斗(スタッド・ランス)…

”森保ジャパン”における攻撃的な3バックの導入で、大きな動きを見せたのは左右ウイングバックと2シャドーだ。

 3ー4ー2ー1のお披露目となった6月のミャンマー戦では右ウイングバックが菅原由勢サウサンプトン)、左が中村敬斗(スタッド・ランス)という並びで、2シャドーは堂安律(フライブルク)と鎌田大地(クリスタル・パレス)のコンビ。そして次のシリア戦では堂安と中村のウイングバック、久保建英(レアル・ソシエダ)と南野拓実モナコ)という組み合わせだった。ともに5−0と大勝した2試合で、森保一監督に最もアピールしたのは中村だろう。
 ミャンマー戦でフル出場、シリア戦で45分プレーした中村は2得点1アシストと活躍。特にミャンマー戦の先制点は鎌田の縦パスに、中村が左から抜け出して中に切り返し、右足を振り抜くという技巧的なゴールだった。
 中村自身の評価ということもあるが、攻撃的なサイドアタッカーをウイングバックで起用するというプランに関して、森保監督をより前向きにさせる好材料となったはず。2シャドーと絡むサイドアタックの破壊力もさることながら、ウイングバックとしての守備も精力的にこなしたからだ。ミャンマー戦は相手を押し込む時間が長かったが、シリア戦は日本がわの守備局面も多く発生する中で、攻守両面での奮闘が目を引いた。

■バリエーションに富んだ選手起用

 最終予選の第二戦となった、9月のバーレーン戦後に堂安が語っていたのは彼自身も含めて、世間から攻撃的なキャラクターとして見られる選手たちが、当たり前のように守備でハードワークできるということ。それこそ日本の強みであり、また欧州トップリーグの厳しい環境で揉まれる選手たちが、代表の舞台で示せるものでもある。
 6月シリーズで3バックに自信を掴んだ森保監督は、9月からスタートした最終予選で3ー4ー2ー1を継続して使い、キャプテンの遠藤航リバプール)と守田英正スポルティング)を擁するボランチや3バックのメンバーをほぼ固定させる一方で、ウイングバックとシャドーに関してはバリエーションに富んだ選手起用に踏み切った。
 9月には伊東純也(スタッド・ランス)と三笘薫(ブライトン)がアジアカップ以来の代表復帰となり、この森保監督のプランを大きく前進させた。伊東は右ウイングバックで、主に途中から流れを変える役割を担い、中国戦の1ゴール2アシストを皮切りに、最終予選だけで6アシストを記録。三笘は左サイドの主翼として1得点3アシストという数字以上に、左サイドから相手ディフェンスに脅威を与えた。ウイングバックの攻撃力が6試合で22得点という圧倒的な数字に、ダイレクトに反映された格好だが、興味深いのはシャドーとの関係性だ。

■強豪国戦との対戦で注目される選手も

 最終予選において、2シャドーは南野拓実(モナコ)が6試合全てでスタメン、もう一枚は鎌田と久保が3試合ずつ先発出場したが、ウイングバックと同じく、必ずと言っていいほど選手交代が行われており、南野にしてもフル出場は最初のホーム中国戦だけだった。
 しかも、アウェーのサウジアラビア戦では後半から南野に代えて伊東が投入されると、伊東は右ウイングバックに、南野が担っていた右シャドーには堂安がシフトしたのだ。この最終予選で唯一、引き分けに終わったホームのオーストラリア戦では左ウイングバックでスタメンだった三笘が、久保に代わって投入された中村が左ウイングバックに入ると、左シャドーに回った。
 つまり3バック導入によって、4ー2ー3ー1ではサイドハーフのポジションを争う関係にあった右の伊東と堂安、左の三笘と中村を共存させられるようになった。特にドリブラー二人を並べる左サイドのユニットが、日本が世界と戦う上での武器になるかもしれない。このことは日本代表で最もタレントが充実している二列目のアタッカーを左右ウイングバックと2シャドーの4ポジションで活用できることを意味する。
 そのベースになるのは上記の通り、攻撃的なキャラクターでも守備でハードワークできる特性であり、そしてサイドとシャドーの両ポジションをこなせるタレントが多いことも、森保監督のそうした起用法を後押ししていることは間違いない。
 ウィングバックとシャドーに関しては、最終予選の残り4試合、その後のW杯の本大会に向けたラスト1年で、新戦力のテストも含めたバリエーションのアップ、そして組み合わせに応じたコンビネーションやクオリティのブラッシュアップが進められていくはず。
 もちろん相手が強豪国になればなるほどサイドの守備は厳しくなり、5バックで耐える時間帯も増えることが予想される中で、改めて菅原などサイドバックが本職の選手がスポットライトを浴びる可能性もあるが、ウィングバックとシャドーの選択肢が豊富になるほど、彼らを中盤から支えるボランチが固定的になりやすいだろう。

■コアメンバーだけでは難しい過密日程

 しかし、48カ国に拡大し、夏の気候で決勝まで8試合を戦う北中米W杯の日程を見据えれば、ボランチも遠藤、守田、アウェーの中国戦でスタメン起用された田中碧(リーズ)という現在のコアメンバーだけでフルカバーすることは難しい。
 さらに言えば、前回のカタール大会でも見られた通り、彼らが100%の状態で本大会を迎えられる保証はどこにもない。
 来年はアジアの戦いが最終局面になり、いよいよ世界に向けたフェーズに入っていくが、主力が所属クラブでの戦いも含めて、さらに個の力を上げて、連携面も高めていくことに加えて、ボランチなどの選手層をいかに厚くしていくか。”第二次・森保ジャパン”の3年目となる2025年に課されるメインテーマの1つになりそうだ。
(取材・文/河治良幸)

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