2024年の最後の日曜日に、女子プロサッカーWEリーグのカップ戦、クラシエカップの決勝が行われた。結果、サンフレッチェ広島レジーナが連覇を果たしたが、サッカージャーナリスト後藤健生はこの一戦に、日本の女子サッカーの「未来」を見た!■タイト…

 2024年の最後の日曜日に、女子プロサッカーWEリーグのカップ戦、クラシエカップの決勝が行われた。結果、サンフレッチェ広島レジーナが連覇を果たしたが、サッカージャーナリスト後藤健生はこの一戦に、日本の女子サッカーの「未来」を見た!

■タイトル独占に「穴」を開けた広島

 さて、そのクラシエカップ決勝では、サンフレッチェ広島レジーナが1対0でINAC神戸レオネッサを破って、リーグカップ2連覇を決めた。

 日本の女子サッカー界は、日テレ・東京ベレーザ、三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサの「3強」が、ほとんどすべてのタイトルを独占している。

 まず、WEリーグは初年度は浦和が優勝を決めたが、2年目、3年目はI神戸が連覇。WEリーグ発足前、なでしこリーグが日本のトップリーグだった時代も、2003年に田崎ペルーレFCが優勝して以降、「3強」がタイトルを独占していた(2004年優勝のさいたまレイナスFCは浦和の前身)。

 さらに、皇后杯全日本女子選手権でも、2006年のTASAKIペルーレFCを最後に「3強」の独占が続いている。

 広島は、そうした独占状態に穴を開けたのだ。

 広島は、昨年も決勝戦で新潟を破ってリーグカップで優勝を決めている。

 ただ、昨年までのリーグカップは、リーグ戦開幕前のプレシーズン大会として実施された。たとえば、昨年の場合は代表活動直後(女子ワールドカップ)だったため、強豪チームの中には主力選手に休養を与えたり、あるいは、ようやくチームに戻ってきた代表選手を迎えてチーム作りに着手したばかりといった状況での大会だった。

 それに対して、今シーズンはリーグ戦の前半と並行してクラシエカップのグループステージが行われ、12月初めにリーグ戦が中断期間に入ってから準決勝、決勝という日程だったため、各チームともにチームの完成度が高い中での大会となった。

 そういう意味では、広島にとっては今年の大会での優勝は、昨年のそれより大きな意味を持つのではないだろうか。

■個人能力に差がある「3強」と「それ以外」

 広島は、クラシエカップでI神戸に完勝した。

 たしかに、ボール・ポゼッションではI神戸が上回ったし、後半は1点を追うI神戸が押し込み続け、広島は5バックで跳ね返すだけの展開になってしまった。シュート数では広島の4本に対して、I神戸が10本だった。

 勝利した広島の吉田恵監督も「もっと攻める時間を作りたかったし、前からプレスをかける守備をしたかった」と語っていたが、これはある意味で仕方がない。

 I神戸は(あるいは「3強」は)代表クラスの選手多数を擁し、I神戸にはスペイン人を中心に外国籍選手もそろっている。現状では「3強」以外とは個人能力の面で大きな差があるのだ。

 だが、広島は非常に組織的な守備を構築し、ボールを持たれ、ロングボールで押し込まれながらも、決定機はほとんど与えなかった。あれだけ、ボール保持で圧倒し、1点を追っていた広島の後半のシュート数が5本でとどまったことが、そのことを如実に物語っている。

■相手プレーに規制「適切なアプローチ」

 I神戸の本来のストロングポイントはサイド攻撃にある。右サイドのウィングバック、守屋都弥は今では日本代表のレギュラー格。疲れを知らない上下動から正確なクロスを入れていく。

 だが、I神戸がボールを左右に散らし、守屋や左サイドの桑原藍を使おうとしても、広島はきちんとMF、DFの2本のラインを左右にスライドさせて、I神戸の選手をフリーにはしない。

 前からプレスをかけにいき過ぎるとI神戸の選手にかわされてしまうので、前に行き過ぎることなく、相手のプレーに規制をかけ、適切なタイミングでアプローチをしかけて「ボールを奪えても相手に自由にさせない」という考えで粘り強い守備を続けたのだ。

 下がり目のトップというポジションにいた上野真実の献身的な守備やボランチの柳瀬楓菜の広範なカバーも目立った。

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