横浜DeNAベイスターズ・三浦大輔監督インタビュー(後編)前編:「ベイスターズはいかにして下剋上を成し遂げたのか?」はこちら>> 2024年、シーズン3位から26年ぶりの日本一を果たした横浜DeNAベイスターズ。2025年の目標は、リーグ制…

横浜DeNAベイスターズ・三浦大輔監督インタビュー(後編)

前編:「ベイスターズはいかにして下剋上を成し遂げたのか?」はこちら>>

 2024年、シーズン3位から26年ぶりの日本一を果たした横浜DeNAベイスターズ。2025年の目標は、リーグ制覇、そして2年連続の日本一だ。はたして三浦大輔監督はどのような戦いでチームを導いていくのか。


2025年シーズン、27年ぶりのリーグ制覇、2連続日本一に挑むDeNA三浦大輔監督

 photo by Kai Keijio

【指揮官を支えた参謀たち】

── 昨季は首脳陣に関し、戦術面に特化した靍岡賢二郎オフェンスチーフコーチ、守りに特化した相川亮二ディフェンスチーフコーチを置く分業化された新しいシステムで挑みました。1シーズンやってみての手応えを教えてください。

三浦 オフェンス、ディフェンスと明確に分けたことで、戦術においてスムーズに攻守の切り替えができたと思います。攻撃中は相川コーチが次の回の策を練り、守っている時は相川コーチと話しながらも、?岡コーチが次の回の攻撃の準備をしている。靍岡コーチとはいろいろ話をしながら、必要なデータを出してもらい、またこんなデータがあると提案を受けながら、最後は自分が決断をする。非常にシンプルでやりやすくはありました。また靍岡コーチは、ベンチにいるアナリストと自分の間に入って、いろいろやってくれました。

── 一方、投手陣に関しては、先発ローテーションがなかなか固定できず、ブルペンの運用も厳しかったと思いますが、投手の調子の善し悪しを微細に見ながら乗り切ったイメージがあります。投手コーチは、データに強い大原慎司チーフコーチと小杉陽太コーチが務めましたが、おふたりの働きぶりはいかがでしたか。

三浦 先発を大原コーチ、ブルペンを小杉コーチが担当しましたけど、投手と密にコミュニケーションを取りながらやってくれたと思います。投手の状況を見ながら、大原コーチは的確にアドバイスをしてくれましたし、小杉コーチは「自分でも声かけしますが、状況によっては監督のひと言が必要なので、あの選手に声がけお願いします」とコミュニケーションを取っていた。それは靍岡コーチも相川コーチも同じで、選手の状況に応じて、意見を活発にかわしながら現状を把握し、戦いに挑めていたと思います。

── 選手たちから話を聞くと、マインド的な部分で遠藤拓哉メンタルパフォーマンスコーディネーターの存在が大きいように感じました。DeNA独自のコーチングスタッフですが、三浦監督自身もサポートしてもらい、結果的にあの「ミスは忘れろ」という考えに至ったと聞いています。

三浦 遠藤メンタルパフォーマンスコーディネーターは3年目になりますが、選手間はもちろん、監督、コーチ、スタッフとあらゆる場面、状況で間に入ってくれて潤滑油の役割を果たしてくれています。いくら高い技術力を持っていても、コミュニケーションがとれていなければ、効果が出ることはありません。話をする、しっかりと聞く、自分もよく遠藤にアドバイスを求めますからね。選手に話し終えたあと、どうだったかと聞くと「もう少しゆっくり話した方が選手に入っていきます」と言ってくれたり、よかったら褒めてくれますし、チームにとっても自分にとっても大きな存在です。

── 知性に加えユーモアもある方ですよね。

三浦 だから選手たちからもいじられますし、自分もいじったり、いじられたりします(笑)。そういうコミュニケーションが取れているから、メンタルの部分でひとつになれるんじゃないかと思います。

── なるほど。

三浦 じつは現役時代、プロゴルファーの片山晋呉さんに『大リーグのメンタルトレーニング』という本を紹介してもらって、マウンドに上がる際に活用していたんです。リセットをする大切さとか。アメリカの方が書いている本なんですけど、遠藤と初めて会った時、こういうのを参考にしていたんだって話をしたら、どうやら著者は遠藤の師匠だって言うんです。『ホンマか⁉︎』って鳥肌が立ちました。遠藤は、学生時代にその本を読んで、弟子入りをしたくてアメリカに渡ったそうです。『大リーグのメンタルトレーニング2』という本もあるんですけど、翻訳者は遠藤で、自分はそれも持っていて二度ビックリしました。

── 三浦監督と遠藤メンタルパフォーマンスコーディネーターのバイブルは一緒だったというわけですね。

三浦 そうですね。だから共有しやすい面はあります。メンタルは数字に表われない部分ですし、目に見えない部分。だけど、そこが非常に大事ですし、ポストシーズンを勝ち抜けたのも、メンタルの部分が大きかったと感じています。


守りの野球を目指すと語るベイスターズ三浦大輔監督

 photo by Kai Keijiro

【2025年の戦い方】

── さて27年ぶりのリーグ優勝を目指す今シーズン、まだ補強は終わってはいませんが、どのような点を重要視して戦っていくつもりでしょうか。

三浦 まずは"守り"ですね。ポストシーズンを見ても、しっかり守り切れたからこそ、より打線が生きました。就任時、大事なのは"得点力"と言ってきたのですが、4年経験したなかで、やっぱり守りがあってこそ、うちの打線だと。98年も"マシンガン打線"がクローズアップされますが、守備はリーグ一番の固さでしたからね。守備力が上がれば、ポストシーズンのような戦いができるのは証明できたので、これをレギュラーシーズンでもできるように春季キャンプから意識して取り組んでいきます。

── たしかに、昨季のチームの失策数96はリーグワーストでしたし、記録に残らないミスも多かった。まずそこを徹底して修正すると?

三浦 はい。あとは"判断力"ですね。ここをもっとクリアにしていかなければいけない。判断ミスでチャンスを潰すこともありましたし、そこを埋めていければ確実にプラスアルファになります。コーチ陣と一緒になって、底上げして行きます。

── それに付随し走塁面はいかがでしょうか。2024年シーズンの盗塁数69は、リーグトップでした。

三浦 盗塁という数字だけを見れば一昨年より増えましたが、前半はよかったものの後半はマークが厳しくなって、なかなか増やすことができませんでした。あくまでも盗塁は走塁の一部ですから、走塁への意識をより高めなくてはいけないと思います。そこで必要なのがやっぱり判断力なんですよ。ワンヒットで一、三塁にできたところが、一、二塁で止まってしまうこともありましたからね。

── たしかに次の塁へ達していない状況は、シーズンを通して多々ありました。

三浦 一歩目の判断はどうだったのか。そういう点もチーム全体で意識して、取り組んでいきます。

── 日本シリーズ優勝の真価を示すためにも、今季は大事な戦いになりそうですね。

三浦 日本シリーズ優勝という経験は非常に大きいと思います。優勝という結果はもちろんのこと、優勝までのあの厳しい状況をチーム一丸となって乗り越えられた。これはチームとって大きな財産であり、選手個々にとっても財産になります。この経験を生かして今季戦っていきます。

── ポストシーズンを見ていて、しみじみいいチームになったなと感じました。

三浦 ありがとうございます。たしかによくなってきましたけど、完成ではありません。去年よりも今年、今年よりも来年といったようにしていかなくちゃいけない。ともあれ、チーム全員が絶対にリーグ優勝して、日本シリーズ連覇という強い気持ちになっています。143試合どれも大事な試合だということを忘れず、一丸となって戦っていきます。ヨロシク!

三浦大輔(みうら・だいすけ)/1973年12月25日、奈良県出身。高田商から91年のドラフトで横浜(現・DeNA)から6位指名を受け入団。4年目から先発ローテーションに定着し、97年には自身初の2ケタとなる10勝をマーク。98年には自己最多の12勝を挙げ、38年ぶりリーグ制覇、日本一に貢献した。2005年には最優秀防御率、最多奪三振のタイトルを獲得した。2016年に現役を引退し、19年にDeNAの一軍投手コーチ、20年に二軍監督を歴任し、21年から一軍監督として指揮を執っている