鬼木達監督が指揮を執る新生・鹿島アントラーズ。彼らの最大の懸念材料と言われたのが、最終ラインの選手層だった。 2024年はセンターバック(CB)が植田直通と関川郁万の2人にほぼ固定されていて、カップ戦が重なったり、夏場の酷暑の時期も彼らが…

 鬼木達監督が指揮を執る新生・鹿島アントラーズ。彼らの最大の懸念材料と言われたのが、最終ラインの選手層だった。

 2024年はセンターバック(CB)が植田直通関川郁万の2人にほぼ固定されていて、カップ戦が重なったり、夏場の酷暑の時期も彼らが出ずっぱりの状況だった。
「自分は大津だから」と植田は口癖のように言い、高校時代に身に着けたタフさと粘り強さに自信を持っている様子だったが、その彼も30歳。ケガに見舞われやすくなる年齢だ。そういう時に誰もいないのでは、やはり長いシーズンを戦い抜けなくなる。CBの補強は不可欠のテーマだったのだ。
 そこで中田浩二FDらは複数の候補をピックアップ。報道上では谷口栄斗(東京V)、古賀太陽(柏)らに食指を伸ばしたものの、固辞されてしまったという。そこで白羽の矢を立てたのが、J2降格を強いられたサガン鳥栖のキム・テヒョン。187センチの体躯と精度の高い左利きのキックを武器とする選手で、今季の鹿島にはいなかったタイプだ。

■CBで繰り広げられる新たな競争

 川崎時代の鬼木監督を見ていても分かる通り、CBは単に相手の攻めをストップできる守備力を備えているだけではダメで、攻撃の起点となれる足元の技術が不可欠だ。谷口彰悟シントトロイデン)や高井幸大(川崎)ら日の丸を背負う存在が出てきたのも、その要求基準が非常に高かったから。鬼木サッカーの生命線ともいえる最終ラインのビルドアップ能力を養うことは、新生・鹿島の絶対条件。植田、関川、津久井佳佑含めてCBの新たな競争がスタートすることになるだろう。場合によっては三竿健斗が最後尾で固定されることもありそうだ。
 ボランチ陣もボール扱いに長けた柴崎岳が軸となりそうが、サイドバック(SB)兼任可能な新加入・小池龍太もこのポジションで起用される可能性が高そうだ。というのも、今の鹿島には2024年ベストイレブンを受賞した濃野公人と38試合フル出場の安西幸輝の両サイドバックが陣取っているからだ。2人が使える時、小池がバックアップというのはあまりにももったいない。柴崎と小池をベースに戦うというプランもあり得るだろう。
 そこで気になるのが、知念慶の扱い。鬼木監督は川崎時代の知念をFWと位置づけてきた。「まさか知念がボランチでここまでブレイクするとか考えたこともなかった」というのが本音で、2024年Jリーグデュエル王に化けるとは想定外と言っていい。クラブ側はその彼を引き続きボランチで使ってもらうのが希望だろうし、本人もそう願っているはずだが、鬼木監督が求める「タテパスを前につける能力」にはやや難があるのも事実だ。

■ボランチへの求め方の違い

 ランコ・ポポヴィッチから中後雅喜監督体制においては「奪ったボールを前に出せる選手に渡すだけである程度はOK」だったかもしれないが、2025年以降はそういうわけにはいかないかもしれない。指揮官がそのあたりをどう評価するのか。知念というキーマンをうまく使うことも新生・鹿島の成否を左右するポイントになってきそうだ。
 ボランチに関しては、三竿もいるし、残留が有力視されるミロサヴリェヴィッチや若い舩橋佑もいる。樋口もこのポジションはこなせるだけに、新たな競争が生まれる可能性が大。そうやってチーム全体が活性化することで「しぶとくギリギリのところで勝ち切れる集団」へと変貌していくのではないか。
 ここでタイトルを奪還できなければ、本当に常勝軍団の看板を下ろさなければいけなくなってしまいかねない。最悪のシナリオを回避するためにも、鬼木・鹿島のジャンプアップが強く求められる。その動向を興味深く注視していきたいものである。
(取材・文/元川悦子)

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