WS連覇に挑む来季は投手としての活躍も注目される(C)Getty Images 移籍2年目を迎えるドジャース大谷翔平は、投打の二刀流で再び復活を目指す。3月18日から東京で開催されるカブスとの開幕シリーズ2連戦では、打者としての出場が期待さ…
WS連覇に挑む来季は投手としての活躍も注目される(C)Getty Images
移籍2年目を迎えるドジャース大谷翔平は、投打の二刀流で再び復活を目指す。3月18日から東京で開催されるカブスとの開幕シリーズ2連戦では、打者としての出場が期待され、投手復帰は先送りとなる見込みだ。右肘の手術明け、しかも2度目のため、球数制限など慎重に復帰プランを立てていく必要がある。大谷自身も「再発防止も兼ねて慎重にいかないといけない部分もやはりあると思う。(復帰するまで)最短を目指していきたいと思っていますし、トレーナーとしては慎重に事を進めたい、そのバランスがお互いに大事なのかなと思っています」と話している。
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移籍1年目でワールドシリーズ制覇を成し遂げ、次なる目標は連覇だ。その中で、投手大谷に求められる成績とは――。
手術の術式などそれぞれの個人差があるため、一概には言えないが、好例があった。来季からレッドソックスに移籍する元同僚のウォーカー・ビューラー投手(30)は、同様に2度の右肘手術を経験。年齢が同じで、速球とスライダー(カットボール)を軸とした投球スタイルも大谷とタイプ的に似ている。レギュラーシーズンでは1勝6敗、防御率5.38と不安定な成績だったが、ポストシーズンでは1勝1敗、防御率3.60と挽回し、ヤンキースとのワールドシリーズ第5戦では胴上げ投手となった。シーズン終盤、そして短期決戦で負けられない10月の戦いで活躍し、ドジャースの世界一に貢献。完全復活までの〝時間のかけ方〟は参考になるかもしれない。
ビューラーは、22年8月に受けた2度目の手術から復帰まで約20か月半を要した。球団の方針もあり、24年シーズンは開幕からではなく、5月上旬から復帰することとなった。このタイムラインを踏まえると、23年9月19日に手術を行った大谷は24年5月下旬から6月上旬頃に投手復帰する計算となる。また、ロバーツ監督が方針として示したように、復帰1年目は故障の再発防止で球数制限が設けられるため、勝ち投手となるには多少、時間がかかるかもしれない。
一方で、開幕から1~2か月遅らせるメリットとしては、チームがスタートダッシュに成功し、貯金が多くある場合、リハビリとして登板できる状況が作れる、ということがある。もちろん、勝ち続けることを目指しているはずだが、勝たなくてはいけない、そんな余計なプレッシャーをかけずに、マウンドに上がることができる。
1度目の右肘手術から復帰した21年シーズンは、開幕から約5か月半で23試合に登板。9勝2敗、防御率3.18の好成績を残したものの、復帰直後は制球難に苦しんだ。肘の手術経験者が口をそろえるように、腕の振りなど投球の感覚が以前とは異なり、しばらく違和感が続くことがあるという。ビューラーの例と自身の1度目の経験を考慮し、登板15~20試合と仮定すると、5勝を最低ラインとし、7~8勝が期待される。
もっとも、チーム全体の底力があるドジャースでは、1年目のレギュラーシーズンに限って、大谷の勝ち星はそこまで計算しない、との考えもあるかもしれない。リスクヘッジとして、大谷が復帰シーズンで投手として苦しんだとしても、打者で貢献できる。出来るだけ長く二刀流でプレーすることを望んでいる大谷にしても、故障明けのシーズンで再発してしまうリスクは避けたいところだろう。
では、打者ではどうか。前人未到の「50―50(50本塁打&50盗塁)」を達成し、期待値がさらに上がることは間違いない。投手復帰で下半身にも負担がかかるため、盗塁数は激減するのでは、との声もある。10月末のワールドシリーズでは盗塁を試みた際に左肩を負傷。故障のリスクもある。ただ、大谷自身は「まずは大前提として失敗を減らしていくという作業をしながら、いけるときにいく姿勢は、例え投手として投げていたとしても進塁した方が可能性が高いのであれば、もちろんいく準備はしたい」と意欲を示している。
大谷翔平のパフォーマンスは、予想をはるかに超えてくる。だとすれば、投手復帰に加え、リスク回避で盗塁が減るのではないか、という一般論は通じないかもしれない。まして、故障明けのシーズンはどちらかと言えばまだ、打者で貢献することへの優先度が高くなるとも考えられる。24年シーズン同様に、本塁打と盗塁を2年連続で量産する可能性もある。
メジャー挑戦の18年から取材を続ける担当記者として、大谷の投打の成績を予想することはあるが、過去7年間でほぼ毎年、想定外の結果になる。それが見ていてワクワクする由縁とも言える。その前提で予想をすれば、投手では7~8勝、打者では「50―50」に近い、もしくは史上初の偉業を2年連続で成し遂げる可能性もあるだろう。今年は11月21日、DHで史上初のMVPを獲得し、2年連続、3度目の満票でリーグMVPに輝いた。来季はどうなるか。毎年の楽しみでもある。
[文:斎藤庸裕]
【著者プロフィール】
ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『 大谷翔平~偉業への軌跡~【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。
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