2024年の最後の日曜日に、女子プロサッカーWEリーグのカップ戦、クラシエカップの決勝が行われた。結果、サンフレッチェ広島レジーナが連覇を果たしたが、サッカージャーナリスト後藤健生はこの一戦に、日本の女子サッカーの「未来」を見た! ■クラ…

 2024年の最後の日曜日に、女子プロサッカーWEリーグのカップ戦、クラシエカップの決勝が行われた。結果、サンフレッチェ広島レジーナが連覇を果たしたが、サッカージャーナリスト後藤健生はこの一戦に、日本の女子サッカーの「未来」を見た!

■クラシエカップ決勝「2つの意味」

 12月29日、2024年の最後の日曜日に東京・国立競技場ではWEリーグ・クラシエカップ決勝が行われ、サンフレッチェ広島レジーナがINAC神戸レオネッサを1対0で下して優勝した。WEリーグの「リーグカップ」である。

 この試合には、大きく2つの意味があった。まず、ひとつはWEリーグ発足にともなって、サンフレッチェ広島が立ち上げた新興チームが日テレ・東京ベレーザ、三菱重工浦和レッズレディースと並んで「3強」の一角をなすI神戸の牙城を崩したこと。

 そして、もう一つはこの試合に2万2524人もの観客が集まったことだ。

 WEリーグ発足後、これまでの最高の入場者数は2021-22シーズンの第21節I神戸対浦和レッズレディースの1万2330人だったから、それを大幅に更新する数字だった。前日には、同じ国立競技場で全国高校サッカー選手権大会の開会式と開幕戦があり、15年ぶりの全国大会出場で注目を集めた帝京高校対京都橘高校の試合があったが、その入場者数が1万8052人だったから、女子サッカーは帝京高校の人気を上回ったわけだ。

なでしこジャパンを「超えた!」

 ちなみに、WEリーグからはさっそく「最多入場者数」に関するリリースが出されたが、そこには過去の女子サッカーの最多入場者記録が参考として付せられていた。それによると、国内リーグでは2011年8月6日のなでしこリーグ、アルビレックス新潟レディース対I神戸の試合で2万4546人という記録がある(会場は新潟のビッグスワン)。

 女子ワールドカップで日本が優勝を決めた直後、女子サッカーに関する関心が高まった時期の出来事だった。

 また、国際試合では2004年4月24日のアテネ・オリンピック予選、日本対北朝鮮戦での3万1324人という記録がある。

 ちなみに、国内リーグの記録では今回のクラシエカップも含めて、すべてI神戸が関わっている試合というのも面白いし、また、なでしこリーグの新潟ホームの試合以外の3試合はいずれも国立競技場での試合だった(2004年は旧・国立競技場)。

■集客力が「大きい」国立競技場

 やはり、国立競技場の集客力は大きい。

 2024年のJリーグは年間最多入場者数の新記録を作ったが、Jリーグが13試合を開催した「THE国立DAY」の成功もその要因だった。

 国立競技場という日本最大のスタジアム自体への関心も高いし、なんといってもアクセスの良さが観客動員につながるのだろう。

 クラシエカップはサンフレッチェ広島レジーナ対INAC神戸レオネッサという、西日本勢同士の対戦となり、数多くのサポーターも駆けつけたが、国立競技場は東京駅からも、羽田空港からもアクセスが良いので日帰りも可能だ。

 スタンドの傾斜が急なのでサッカーやラグビーの試合も比較的見やすいとは言うものの、国立競技場はやはり陸上競技場なのでサッカー観戦には向かない。しかし、そんなマイナス面があるとしても、それでも国立競技場の魅力は大きい。

 いずれにしても、観客動員に苦しみ(今シーズンのリーグ戦の平均観客数は1700人ほど)、一部では存続すら危ぶまれているWEリーグとしても国立競技場を活用して、これまで女子サッカーを見たことのない層の観客を掘り起こす方法を模索すべきだろう。

 今年は、12月29日という暮れも差し迫った日程での開催だったが、たとえば元日開催とか気候の良い春先に国立で試合を開催すれば、今回の観客動員数を更新することは可能なのではないか。

 そして、多くの観客が入った中で、良い内容の試合をして、観客の一部でもリピーターとなってもらえれば、WEリーグの将来にもつながるはずだ。

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