◆第103回全国高校サッカー選手権▽2回戦 青森山田(青森)1―2高川学園(山口)(31日・NACK5スタジアム大宮) 2回戦16試合が行われ、高川学園(山口)は「トルメンタ」(スペイン語で嵐の意味)と名付けたトリックCKから得点し、前回王…
◆第103回全国高校サッカー選手権▽2回戦 青森山田(青森)1―2高川学園(山口)(31日・NACK5スタジアム大宮)
2回戦16試合が行われ、高川学園(山口)は「トルメンタ」(スペイン語で嵐の意味)と名付けたトリックCKから得点し、前回王者の青森山田(青森)を2―1で撃破。青森山田は10大会ぶりの初戦敗退となった。
ピッチに現れた小さな“竜巻”に、スタジアム中が目を奪われた。0―0の後半7分。高川学園は、この試合初のCKを獲得。するとゴール前で4人の選手が手をつないで輪になり、そのままグルグルと回り始めた。「トルメンタ」(スペイン語で嵐の意味)と名付けられたトリックプレーだ。王者・青森山田の目をも引きつけるとショートコーナーを選択。相手の混乱を誘ってゴール前にボールを入れ、最後はFW大森が押し込んだ。
「トルメンタ」は21年度大会に同校がベスト4に進出した際、話題を集めたお家芸だ。PKを含む2得点の活躍を見せた石川県出身の大森は「(中学時代にトルメンタを披露した選手権の試合を)現地で見ていて、高川に入りたいと思った」と言う。選手が自発的に考え、3大会前に初披露した相手のマークをかく乱するためのセットプレー。この日はさらにショートコーナーにつなぐことで、フィジカルの強い相手守備陣のマークをずらし、見事な先制点につなげた。
前回、話題を集めた21年度は準決勝で青森山田と対戦。しかし、結果的には同大会で優勝した強豪に、0―6と大敗していた。江本孝監督(40)が「セットプレーは1回も取れなかった」と振り返ったように、当時は「トルメンタ」を発動することさえできなかった。そんな悔しい敗戦を糧に「青森山田ぐらいの体をつくらないと、全国では勝てない」(江本監督)と、フィジカル面、食事面など1段上の強化に励んで迎えた大舞台だった。
この試合、セットプレーはCKこそ1本のみだったが、FKは相手の4本を大きく上回る16本獲得。球際の勝負でも力負けせず、相手のファウルを誘った結果だった。「前回王者に勝てば、俺たちが優勝じゃね?と思ってやってきた。チームとしての目標は日本一なので、そこはぶれずにやっていきたい」と大森。この勝利は、トリックでも何でもない。今大会の“台風の目”となることを予見させる快勝劇となった。(金川 誉)
◆トルメンタ セットプレーの攻撃時、ゴール前に入った複数の選手が手をつないでグルグル回転することで、相手のマークを外す狙い。高川学園の選手たちが発案し、21年度の選手権で初披露。当時、スペイン紙「マルカ」が「斬新なアイデア」と報じ、世界でも話題を呼んだ。同校では今大会もセットプレーはすべて選手が考案。この日のトルメンタからショートコーナーにつなぐアイデアも「警戒されるので、その他の部分が空いてくる。練習からいろんなことを考えながらやっています」(大森)と、選手の自主性が生かされている。
◆高川学園(山口・防府市) 1878年創立された中高一貫校。2006年に多々良学園から現校名に変更。サッカー部は1946年に創部され、最高成績は2005、07、21年度の4強。女子ソフトで24年全国大会3位、男子バレーは10年連続で春高バレー出場。女子バスケでは、24年に全国高校選手権に出場した。主なサッカー部OBはアテネ五輪代表の高松大樹氏や、Jリーグの広島や札幌でプレーした中山元気氏。野球では、大洋(現DeNA)などで活躍した高木豊氏。部員数は153人。