今季3年目の指揮を執る広島・新井貴浩監督(47)とカープOB会名誉会長でデイリースポーツ評論家の安仁屋宗八氏(80)が恒例の新春対談を行った。昨季は8月末まで優勝争いを繰り広げるも、9月の大失速が響いて4位に終わった。目指すは41年ぶりの…

 今季3年目の指揮を執る広島・新井貴浩監督(47)とカープOB会名誉会長でデイリースポーツ評論家の安仁屋宗八氏(80)が恒例の新春対談を行った。昨季は8月末まで優勝争いを繰り広げるも、9月の大失速が響いて4位に終わった。目指すは41年ぶりの日本一。苦しんだ9月の苦悩、覇権奪回への鍵など、カープ愛にあふれた2人の対話をお楽しみください。

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 安仁屋氏(以下安仁屋)屋「先発投手に目を移すと、長くローテーションを守った九里がオリックスに移籍する。その穴はどう埋めていこうと考えている?」

 新井監督(以下新井)「彼はイニングを消化できる投手で、重要な投手でした。ただ、そこの(九里が投げた)イニングを巡って若い投手による競争が生まれるので逆に楽しみです。若い投手は『俺が、俺が』とガンガン競ってもらいたいです」

 -監督として今季3年目になる。2年間やってみて学んだ部分は。

 新井「たかだか2年なので何も分かってないですよ。ただやっぱり去年の9月。(月間成績5勝20敗で)ああいうことが起きることが野球だから。『野球ってやっぱり怖いな』と感じました。それ以外、まだ2年では何も分からない。“分かったつもり”になるのが一番怖いと思うし」

 -昨年12月のトークショーでは、9月は眠れなかったと話していた。

 新井「月間20敗は想定外。何をやってもうまくいかないし、セオリーにはない、むちゃくちゃなことをやってもうまくいかない。自分の中で手詰まり感があった。それでいろいろ考えていたら、なかなか寝付けなかった。プレーヤーじゃないから、自分ではどうしようもできないもどかしさ、歯がゆさは当然ある。今まで感じたことのないストレスだった」

 (続けて)

 「(現役時代とは)ストレスの種類が違う。自分ではどうしようもできないから。『自分の立場で何ができるんだろう』と思って、いろんなことをやったけど、なかなかうまくいかなかった」

 安仁屋「シーズン序盤は1、2番を固定できなかったけど、秋山が1番を打ち始めてからチーム状態も良くなった。ただ、軸になる打者を固定できなかったのが一番大きかったんじゃないかな。前半戦は投手陣が我慢して守りで勝てた試合もあったけど、やっぱり4番打者がね…。シーズン途中で退団したレイノルズ、シャイナーの両外国人が活躍できなかったことが、一番の原因かなと感じたよ」

 新井「外国人選手もそうなんですけど、結局は(西川)龍馬が抜けた穴を補えなかったというのが自分の反省点かなと思いますね」

 安仁屋「4番に絡めて言うと、昨年は残塁も多かった気がする。得点圏に走者を置いても得点していないことがすごくあったし、打線のつながりに欠けたかなと」

 新井「小園がけっこう4番を打ちましたが(注1)、本来は4番を打つタイプではないと思うんですよね」

 安仁屋「僕もそう思う。そういう意味では新外国人のモンテロ、ファビアンが加われば打線は厚みを増すね。だけど外国人選手はフタを開けてみるまで分からない。ほとんどそうだよね。メジャーで実績があっても日本に来たら全くダメだったり。ただ、そうは言っても、やっぱりカープファンはすごく期待していると思うよ」

 新井「私も過度な期待はしていませんが、そこそこやってくれると。そこそこやってくれるだけで、去年に比べるとプラスなので。あまり過度な期待をしても、安仁屋さんのおっしゃる通りで、(戦力になっている外国人選手は)オースティン、オスナ、サンタナとか少ないですよね。日本の投手のレベルも上がっていますし、厳しいところもあります」

 (続けて)

 「(開幕から)ガンガン打つのは厳しいと思います。そういう意味であまり過度な期待はしていませんが、最低限やってくれるだけでも得点力は間違いなく上がります。そういう期待のかけ方をしていますね。ウチは左打者が多いので、左投手との対戦がすごく多い。そういう中でも右打者2人というのは、相手にとっては嫌だと思います」

 安仁屋「今年も若い選手を去年のようにどんどん入れ替えしながら使っていく?」

 新井「そうしていかないといけないですし、若い選手にチャンスが増えると思いますね」

 安仁屋「それはいいこと。3年目に入るんだから優勝しかない。若手を起用しながら優勝できたら最高の年になる。ベテラン、中堅、若手をうまく組み合わせて起用すれば優勝できると思う。若手をどんどん使いつつ、うまくベテランを起用することでチームは上昇気流に乗る。ベンチもファンも盛り上がるし、一体感が生まれるんじゃないかな。それを楽しみにしているよ」

 新井「ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります」

 ◆新井貴浩(あらい・たかひろ)1977年1月30日生まれ、47歳。広島県出身。現役時代は右投げ右打ちの内野手。広島工から駒大を経て98年度ドラフト6位で広島入団。2008年にFAで阪神移籍し、15年に広島復帰。18年に現役引退。本塁打王1回(05年)、打点王1回(11年)、最優秀選手1回(16年)、ゴールデングラブ賞1回(08年)、ベストナイン2回(05、16年)。NPB通算成績は2383試合で2203安打、319本塁打、1303打点、打率.278。06年WBC・08年北京五輪日本代表。

 ◆安仁屋宗八(あにや・そうはち)1944年8月17日生まれ。80歳。沖縄県出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。沖縄(現沖縄尚学)から琉球煙草を経て64年に広島入団。75年に阪神へ移籍。80年に広島へ復帰し、81年に引退。タイトルは最優秀防御率(75年)。通算655試合で119勝124敗22セーブ、防御率3.08。引退後は広島の1軍投手コーチ、2軍監督などを務めた。広島OB会の名誉会長で本紙評論家。

 (注1)広島は昨季、計7人の選手が4番を務めた。そのうち最多は小園の71試合。コンスタントに快音を響かせ、5月には月間8度の勝利打点をマークした。