新シーズンに向け、ベイスターズに“復帰”した村田コーチ。様々な経験を積んできたかつての名手は、さっそくチームに成長を求めた。(C)産経新聞社広島の歴史的な息切れに助けられたペナントレース「いやもう、最高に嬉しいです! ありがとうございます!…
新シーズンに向け、ベイスターズに“復帰”した村田コーチ。様々な経験を積んできたかつての名手は、さっそくチームに成長を求めた。(C)産経新聞社
広島の歴史的な息切れに助けられたペナントレース
「いやもう、最高に嬉しいです! ありがとうございます!」
11月3日、横浜スタジアムで5回も宙に舞ったDeNAベイスターズの三浦大輔監督は、日本一の余韻が冷めやらぬ中、潤んだ目でこみ上げる想いを表現した。
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レギュラーシーズン3位から挑んだクライマックスシリーズ。ほぼ黄色く染まった甲子園でのファーストステージでは4.5ゲーム差をつけられた阪神に連勝。続くファイナルステージでは8ゲーム差も離された巨人との死闘を制した。
「チームがどんどん、より1つになってきたなと。グラウンドで戦ってる選手だけでなく、ベンチにいる選手、ブルペンにいる選手、スタッフが同じ熱量で全員で戦えてるなと日々感じてました」
試合をこなす中で強くなる戦いぶりには、指揮官も手応えを感じていた。
そして迎えたパ・リーグ王者のソフトバンクとの日本シリーズは本拠地で連敗と最悪のスタートとなった。しかし、同じマッチアップだった7年前のシリーズ経験者を中心に、選手だけの緊急ミーティングを実施。敵地・福岡での戦いを前に闘志に火を点けたチームは、そこから怒涛の4連勝で日本一の栄冠を手にした。
セ・リーグでは初の下剋上達成には指揮官も「特にポストシーズンから日本シリーズでの一体感をね、選手だけじゃなくスタッフも全員で出せたのかなと思います。全員が本当に毎日毎日出し切って、いっぱいいっぱいの中で最後までよく戦ってくれたと思います」と賛辞の言葉を並べた。
26年ぶりの栄光。日本一パレードでは約30万人が沿道を埋めるなど、横浜の街を巻き込んだ大フィーバーを起こした。しかし、貯金2の3位で終わったペナントレースでの戦いぶりが褒められたものではないというシビアな声もある。
7月中盤までは巨人、阪神、広島と一進一退の首位争いを繰り広げていたが、7月27日にBクラスに転落。すると、勝負の8月は借金を返済するのがやっとの状態。9月22日にAクラスに入り、そのままゴールしたが、勝負どころの9月もわずか2つの勝ち越しに終わった。ラストスパートで成功したというよりも、広島の歴史的な息切れに助けられたとの見方も少なくない。
その点は三浦監督も重々承知している。11月13日から開始した秋季トレーニングでは「日本一にはなれましたけど、それがゴールかといえばゴールではないです。それを踏まえてもっと良くしていくためにどうしたらいいかに取り組んでいかなくてはいけないんで。計測して“進化”していかないといけない。その最中ですね」と厳しい表情を浮かべた。
「143試合戦ったなかで今年は3位だったわけですから。誰も満足してはいません。リーグ優勝が来季の目標、大前提ですから」
野球の酸いも甘いも知る三浦監督も、現状に満足はしていない。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
巨人を知る新コーチが説く「意識改革」
今オフに打撃コーチに就任し、14年ぶりにベイスターズのユニフォームに袖を通す村田修一コーチは「(チームの)嬉しそうな顔をテレビで拝見して、本当にほっとしたというか、よかったなっていうのは正直な感想ですね」と古巣の日本一を素直に喜んだと吐露。
一方で、村田コーチは指導者としての厳しい要望も口にしている。
「最後はみんなで勝ちに行く姿勢で、勝つ覚悟でやってたと思いますけど、その覚悟を短期決戦だけじゃなくシーズンが始まってから、もしくはもうユニフォームに袖を通した2月1日から持ち続けて、最後まで戦える集団になってほしい。
短期間で技術が上がったわけではない。プレーオフの10何試合だけで技術はそう簡単には上がらない。そんなので上がってたらみんなスーパーな選手になっちゃうんで。それを考えると、じゃあ技術だったのか、体力だったのか、気持ちだったのか。それはもう一目瞭然だと思います」
技術はすぐには上がらないと断言する村田コーチは、プレーオフ期間中の体力の消耗を理解した上で、「キツいと思いますよ。でもキツいことができないと、リーグ優勝っていうのは……なかなか他のチームも目指してるところなんでね」と明言。チームの悲願である“完全優勝”が茨の道であると強調する。
現役時代の2011年のオフにFAで巨人に移籍し、「チーム自体がキツいことをやる風に動くのが当たり前」という常勝を義務付けられた環境を経験してきた。競争が熾烈だった名門を知る村田コーチは、意識改革とメンタル持続の重要性を説く。
「このチームは今年1つ上を向けた。その中で、それが当たり前に、当たり前のレベルが今よりも上がるようにしたい。そういう伝統あるチームを追い抜く気持ちが大事。追いつくんじゃなくて、もう追い抜かないといけないと思います。そういう意味でも高いところで気持ちを維持する選手たちであってほしい」
首脳陣の求める改善点は選手たちも抱くところだ。選手会長の大貫晋一は「野球に入っていく姿勢は、全員が強く持っていたと思いますし、それは選手だけじゃなくて、裏方さんとかチームスタッフ含めて全員がこう勝ちに貪欲な姿勢だったと思うので。みんなであの時みたいにたくさんコミュニケーションが取れれば、レギュラーシーズンでもできるんじゃないかなと思います」と勝利への執着が必要と分析。その上で「あれがベースになれば1番いいんじゃないかなと思います」とリーグ制覇に向けたポイントを語った。
打線の肝となってきた牧秀悟も「やはりシーズンよりも、ポストシーズン、日本シリーズでの戦い方は今までの4年間、今までのベイスターズと違う雰囲気がありました」と告白。続けて「絶対負けられない中でのチームの団結力。それこそ1人1人の強い思い、やるべきことが、ポストシーズン、日本シリーズではすごくはっきりしていて。この戦いをシーズン中にできれば、ベイスターズとしてすごく強くなるのかなと思える戦い方ができたので」と手応えを口にした。
「チーム全体で経験ができたからこそ、来シーズンはそれを活かして、変わっていかないといけないなとは思ってます。143試合は長いんで、全試合で持続できるっていうのは難しいことですけど。そういう戦い方を本当に143試合できれば、間違いなく強いチームになると思うので。そこは経験した野手だったり、投手が、その気持ちをずっと持てるような声がけをしていって、伝えていければなと思ってます」
今年も胸突き八丁での9連敗など、勝負どころで勝ち切れなかったベイスターズ。それでも最後の最後に日本一となって打ち破った“壁”。勝利への執念で掴んだ成功体験を胸に刻んだ戦士たちは来季こそ、「Reach for the stars」を成し遂げる。
[取材・文/萩原孝弘]
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