九里亜蓮投手(33)がデイリースポーツに本音をさらけ出す一人語り『Spirit of Challenge』。最終回となる第6回は今季の振り返りと、FAでのオリックス移籍決断までを語ってもらった。さまざまな思いを胸に新天地へと向かう右腕。信…

 九里亜蓮投手(33)がデイリースポーツに本音をさらけ出す一人語り『Spirit of Challenge』。最終回となる第6回は今季の振り返りと、FAでのオリックス移籍決断までを語ってもらった。さまざまな思いを胸に新天地へと向かう右腕。信条であるチャレンジ精神を携えて進化を続けていく。

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 皆さんこんにちは、九里亜蓮です。9月以来、久しぶりの一人語りですね。よろしくお願いします。

 まずは今季の振り返りから。開幕投手をやらせてもらいましたが、開幕からずっとチームが勝てないピッチング、勝たせられるピッチングができないなと考えながら投げていました。そこから9月、チームが勝てない時期が続いた時に、僕は先発投手としてローテーションに入って週に1回で投げることがほとんどなかった。中10日空いたりとか…そんな感じだったので、そこで自分のレベルの低さや未熟さをたくさん感じたシーズンでした。

 『チームのためにもっと貢献できれば良かったな』とすごく思います。自分自身、もっとうまくならないと大事なところで投げさせてもらえないことをすごく感じました。『あの時1点でも少なく抑えておけばどうだったかな』とか、そんなことを考える時間がすごく多かったですね。

 そして12月にオリックスへ移籍することに決めました。一番の理由は野球がもっとうまくなりたいという思いです。違う環境で勝負していきたいと思いました。

 パ・リーグの野球は全然分かりません。だからこそ実際にその中に入って感じることがあると思います。これまで1年を通して対戦したことのないバッターと対戦していくことになる。その環境で自分がどうなるのかを見てみたいと思いました。いろんな意味で挑戦をしていかないといけないのかなと。そんな時期だと思っています。

 シーズンが終わるまでは去就のことは何も考えてなかったです。いざFAを宣言してからは一日一日がすごく長かった。1人になった時に『どうなるのかな…』と、ふと考えることが多かったです。前回FA権を取得した時は残留を早い段階で決めさせていただいて。なので前回とは悩む気持ちは全然違いました。

 広島では11年間過ごし、思い出を挙げればキリがないですが、3連覇を決めた試合で先発させていただいたことはすごく印象に残っています。なかなか優勝が決まらずに回って来た先発マウンドだったので、正直『回ってくるな』と思っていたんです。でも(大瀬良)大地に『楽しんで投げてきたらいいんじゃない?』ってサラッと言われて、『そうだな』と思えて良い投球ができました。あの経験は本当に良かったと思います。

 その大地とは移籍を決めた後にマツダスタジアムで会いました。握手をして、交わした言葉はそんなに多くなかったですが、大学時代から切磋琢磨(せっさたくま)する存在がずっと近くにいたので、僕も負けないようにと、一生懸命やれました。彼にとって僕自身がどれくらい刺激を与えられたか分からないけど、チームが変わっても、これからも大切な存在であることは間違いないでしょうし、変わらずにやっていければなと思います。

 最後に。この6回にわたる連載で自分の昔の話から今年の話まで、いろんなことを思い出すうちに、頭の片隅にあったものが、よみがえるような感覚になって、楽しくやらせてもらいました。こういう形で毎年1人ピックアップするのはすごく良い企画だと思います。来年は選手も変わりますが、面白い話が聞けると思うので、読者の方は楽しみにしていただければなと思います。1年間、ありがとうございました。

 ◇九里 亜蓮(くり・あれん)1991年9月1日生まれ、33歳。鳥取県出身。188センチ、97キロ。右投げ右打ち。投手。岡山理大付から亜大を経て、2013年度ドラフト2位で広島入団。プロ1年目の14年3月29日・中日戦(ナゴヤドーム)で初登板初先発初勝利。21年には13勝を挙げ最多勝を獲得。今季は初の開幕投手を務めた。今オフ、海外FA権を行使してオリックスに移籍。通算成績は71勝67敗、防御率3.49。