大みそかに予定されたプロボクシング前WBA世界スーパーフライ級王者で同級6位・井岡一翔(35)=志成=の世界挑戦は、WBA世界同級王者フェルナンド・マルティネス(33)=アルゼンチン=がインフルエンザに感染したため、前日計量の30日、中止…
大みそかに予定されたプロボクシング前WBA世界スーパーフライ級王者で同級6位・井岡一翔(35)=志成=の世界挑戦は、WBA世界同級王者フェルナンド・マルティネス(33)=アルゼンチン=がインフルエンザに感染したため、前日計量の30日、中止が決まった。再戦を望む両陣営は、来年2~3月頃の開催を目指して交渉を進める。興行は堤駿斗(25)=志成=とレネ・アルバラード(35)=ニカラグア=のWBA世界スーパーフェザー級王座挑戦者決定戦がメインとして31日、東京・大田区総合体育館で行われる。
13度目となる井岡の大みそか決戦は、王者の病気という思わぬアクシデントで中止となった。都内ホテルでの前日計量にマルティネスの姿はなく、志成ジムの二宮雄介マネジャーが、王者がインフルエンザに感染し、試合ができなくなったと発表した。王者陣営のロドリゴ・カラブレッセ・マネジャー兼トレーナーと会見に臨んだ井岡は、直前の中止に「とても複雑な心境。この状況を受け入れて次に進んでいくしかない」と気丈に話した。
関係者によると、王者は25日に発熱。26日の公開練習をキャンセルし、病院で「インフルエンザA型」と診断された。39度近くあった熱は薬で下がったが、関節などの痛みを訴えた。「大変重要な試合だった。クリスマスに家族と過ごすことをやめ、ボクシングに費やしてきた。やれることは全部やったが、回復できなかった。井岡選手には本当に申し訳ない」とカラブレッセ氏は無念の表情。母国から医師も同行させるなど危機管理も万全だったのだが…。この日朝、二宮氏が病床のマルティネスを訪問。「計量に行くことすらできない。気持ちは試合をしたいが、体が言うことをきかない」と王者は中止を申し入れた。
7月に0―3判定で敗れた井岡は王座奪還を胸に練習に打ち込んだ。中止は最終的な体重調整をしていたこの日朝に聞いたという。「試合がなくなって残念だけど、怒りはない。マルティネス選手もインフルエンザになりたくてなっているわけじゃない。この試合に向けてチームといい練習ができたし、その過程は無駄にはならない」と前を向いた。
病気が理由のため、マルティネスの王座は保持される見通し。王者側は仕切り直しの再戦を望み、井岡も「やれるなら僕も戦いたい。いつでも戦える」と言った。両陣営は交渉を進める意向で、二宮氏は「来年2~3月頃にできれば」と見通しを語った。(谷口 隆俊)
◆井岡に聞く
―世界戦が中止になった。
「これまでのキャリアで初めてのことで、とても複雑な心境だが、この状況を受け入れて次に進んでいくしかない。下を向いてはいられない」
―王者の体調が悪いと聞いたのは?
「調印式を予定していた日(29日)ですね。不安はあったが、試合が開催されることを願っていたので、試合に向けて、できることをやらないといけなかった。マルティネス選手も体調に気をつけていただろうし、インフルエンザになりたくてなっているわけではないので、仕方ないことだと思う」
―マルティネス側は対戦を望んでいる。
「やれるなら僕も戦いたい。マルティネス選手と戦えるなら、それが一番、理想だし、もしかなわなければ、他のチャンピオンと戦える交渉に入ってもらいたいと思います」
◆最近の国内世界戦の主な延期または中止
▽2020年11月 WBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人(ワタナベ)が前日計量後に新型コロナウイルス感染が判明。翌日の防衛戦が中止。
▽21年8月 WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(BMB)が新型コロナウイルスに感染し、9月10日に予定された矢吹正道(当時緑)との防衛戦が延期に。回復後の9月22日に行われたが、寺地は10回TKO負けしV9ならず。
▽21年12月 WBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(帝拳)―IBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)戦が新型コロナウイルスの感染拡大により延期。22年4月に行われ、村田が9回TKO負け。
▽23年4月 重岡優大(ワタナベ)が挑戦するWBC世界ミニマム級王者パンヤ・プラダブシー(タイ)がインフルエンザに感染し来日できず。16日の世界戦は中止となった。
▽24年7月 WBOスーパーフライ級王者・田中恒成(畑中)の挑戦者ジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)が前日計量で2.9キロ超過し試合中止に。国内での世界戦で挑戦者の体重超過による中止は史上初。