「自分にとって初めての(そして最後の)オレンジコートなので、緊張すると思いますが、それで終わったらほんとうにもったいない。自分らしく、いつものプレーができれば」と大舞台に立つその日を心待ちにしているキャプテンでエースの岩井(adsbygoo…
「自分にとって初めての(そして最後の)オレンジコートなので、緊張すると思いますが、それで終わったらほんとうにもったいない。自分らしく、いつものプレーができれば」と大舞台に立つその日を心待ちにしているキャプテンでエースの岩井
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高崎高は福田赳夫、中曽根康弘両元首相を輩出し、東大・京大を含む国公立大や有名私大に毎年、多くの合格者を出す名門校。両氏とも群馬県出身で、現在も地元・群馬県で生まれ育った生徒が多くを占めており、尊敬の念と親しみを込めて、“たかたか”という愛称でも知られる。
2024年のインターハイは、樋口裕希(VC長野)を擁した2014年以来、10年ぶり6回目の出場を果たした。ゲームキャプテンでエースの岩井将人を軸に、粘り強くつなぐバレーは持ち味を発揮したが、予選グループ戦の初戦で多度津高(香川)にフルセットで敗れると、続く敗者復活戦も大垣日大高(岐阜)に対して第1セットを先取しながら逆転負けを喫し、決勝トーナメント進出はならなかった。
進学校だけに、夏が終わると同時に3年生の多くは大学受験に備えるため部活を引退する。しかし、前出の岩井は3年生としてはただひとり、冬を目指すことを決意した。
「自分が1年生の頃は、全国大会出場どころか、まずは県予選の決勝へ行くことが目標でした。今年、インターハイに出場することはできましたが、負けたことがほんとうに悔しくて、あらためて“全国で勝つ”ことを目標にしました。そこから、下級生主体のメンバーとなっても、みんなもっと上を見るようになり、今の自分に満足せず練習を重ねてきたことが春高出場につながったと思います」
岩井の心意気に胸を熱くした後輩たちも、“下級生だから”といった言い訳などいっさいなしに、全力で日々の勉強と部活の両立に励んできた。
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あと一歩で勝利を逃したインターハイの敗戦から、“全国で戦えるチームとはどんなチームか”を再確認し、目標とするプレーの質の基準を大きく変えたという。練習の成果や反省点を確認するためのミーティングを毎日行い、チームの目線をそろえたことで強い一体感を醸成してきた
メンバーで最もサイズがある(身長188㎝)ミドルブロッカーの櫻井雪村(2年)は、「1年生はみんな上手で、モチベーションもすごく高いので、岩井さんの存在と1年生のやる気に引っ張られて、自分たちも頑張れている気がします」と率直に語る。
櫻井とツインタワーを形成する松本健吾(185㎝、2年)は、「勉強も部活も、自分でいろいろ考えて時間をやりくりしないとムダな時間を費やしてしまう。時間を有効に使って、インターハイで見つかった課題を春高本番までにどれだけ克服できるか」と気を引き締めている。だが、「残ってくれた岩井さんも、1年生も、とにかくみんな元気。チームの雰囲気が明るいので、その明るさを生かしながら、自分はできることをしっかりやっていきたい」と前を見据える。
“元気な1年生”の一人で、正確かつ強気なトス回しを武器とする司令塔・吉川楓人は、「どこに上げても決めてくれるという信頼関係があるので、このチームでバレーをするのがほんとうに楽しい」と顔をほころばせつつ、「まずはこのチームで1勝して、全国で勝つ喜びをちゃんと知りたい」と勝ちに対する強いこだわりを見せた。
写真左より松本、櫻井、新井(蓮)、岩井、兒玉、吉川、新井(智)
砂川智哉監督が「次世代のエース」と期待を寄せる兒玉慶(1年)は、「将人さん(岩井)の影響で自分も成長できた部分がすごく大きい。将人さんとバレーができる最後の舞台だし、ふだんの練習、プレー、立ち居振る舞いもお手本にしているので、やっぱり将人さんと一緒に全国の舞台、春高で1勝したい」と思いは強い。
守備もできるオポジットという器用さが武器の新井蓮(1年)は、「兒玉と吉川とは小学校からの知り合い。JOC杯(全国都道府県対抗中学大会)でもいっしょに選ばれたので、同じチームにいるだけで心強いし、頑張っている分だけ上手くなっているから、“自分も負けられない”と励みになる」と、地元出身者が多いからこその強固な関係性を感じている。
チームの守護神である新井智憲(2年)は、「自分で点を取れない分、サーブレシーブやディグなどしっかりボールをつないで、仲間に決めてほしい」という思いで常にコートに立っているという。そんな新井は、学年は一つ違うが、実は岩井とは幼稚園から小学校、中学校、そして高校までずっと一緒の仲。春高が終ったあとは、新井がキャプテンを引き継ぐことが決まっている。「自分が成長しないとチームは勝てないと思う。キャプテンとして見習うところがたくさんあるので、一緒にバレーができる最後の舞台は、しっかりといい結果を残して最高の大会にしたい」と気持ちを込めて語る。
どの選手に話を聞いても、「日々の勉強と部活の両立は大変」という答えが返ってきた。だが、キャプテンとして、そしてただ一人の3年生としてチームを引っ張る岩井からは、大舞台と同時に受験も間近に控えた悲壮感などはみじんも感じられず、むしろ仲間たちと大舞台に立つことができる喜びや希望が全身からあふれている。「バレーボールに魅力を感じるのは、仲間が必死につないだボールにはすごく思いが込められていて、自分の思いもボールを通じて仲間に伝わること。頑張ってつないだ1本でお互いに気持ちが伝わるのがいちばんの魅力」。そう語った岩井は、同じコートに立つ後輩たちにしっかりとバトンをつなぎつつ、夏を最後に引退した同期の仲間たちの思いも胸に、最初で最後の春高に臨む。
高崎高は大会初日の1月5日(日)、Cコートの4試合目(12時40分開始予定)で、昇陽高(大阪)との1回戦に挑む。
文/村山純一(編集部) 写真/中川和泉(NBP)
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