◆第103回全国高校サッカー選手権▽1回戦 愛工大名電6―3明誠(29日・駒沢陸上競技場) 絆を感じさせるゴールだった。1点を追う前半29分。右サイドからのラストパスを受け、MF蒲地壮は力みなく右足を振り抜いた。「自分のところに来たら決めて…
◆第103回全国高校サッカー選手権▽1回戦 愛工大名電6―3明誠(29日・駒沢陸上競技場)
絆を感じさせるゴールだった。1点を追う前半29分。右サイドからのラストパスを受け、MF蒲地壮は力みなく右足を振り抜いた。「自分のところに来たら決めてやる」。そんな思いで生まれた得点。仲間と喜ぶ輪の中で、頭をなでられる感触とともに「ありがとう」と聞き慣れた声が届いた。双子の兄からの感謝だった。
直前の前半27分、明誠に攻め込まれてシュートを放たれると、GKがはじいたこぼれ球が守備の要で主将を務めるDF蒲地陽に当たってオウンゴールに。先制点を奪われる展開に、攻撃の核を担う弟は「(兄がオウンゴールしたという)特別な気持ちはなかった。先制されたので1段ギアを上げないと」。その通りに追いつき、チームのゴールラッシュの口火を切った。
二卵性の双子で、サッカーを始めた日も同じ。蒲地壮は「もう本当にずっと一緒なので、特別な気持ちはないんですけど…。嫌なことでも何でも言い合える」と語る。性格の違いはポジションに表れ、子供の頃から兄・陽汰はDFやボランチで、弟・壮汰は前線のアタッカー。試合中は主将の兄の指示を「無視してます」と言うが、ともに攻守でチームの主軸を担ってきた。
2人でやってきた全国の舞台。卒業後は、別々の大学に進む。まだ感傷的な思いはなく「(陽汰からの感謝は)試合中だけですよ」と笑う壮汰。次戦は強豪・前橋育英戦。ひのき舞台を“相棒”と楽しむつもりだ。(金川 誉)
◆サッカー界で活躍した双子 01年度大会ベスト4の前橋育英(群馬)で大谷ツインズ(兄・昌司、弟・圭志)が活躍。昌司は鹿島、圭志はFC東京でプロ入りした。02年度大会では国見の亀ケ渕ツインズ(兄・幹、弟・鼓)が優勝に貢献。Jリーグでは、佐藤ツインズ(兄・勇人、弟・寿人)がともにJリーグ通算400試合以上に出場し、日本代表でも06年に史上初の双子同時出場を果たした。ほかに森崎ツインズ(兄・和幸、弟・浩司)や松田ツインズ(兄・陸、弟・力)ら。
◆蒲地 陽汰、壮汰(かまち・はるた、そうた)2006年10月20日、愛知県生まれ。2歳上の兄(長男)がサッカーを始めたことをきっかけに、4歳ごろ、双子の兄弟で始める。ともに刈谷81FCを経て愛工大名電へ。高校卒業後は陽汰が岐阜聖徳学園大へ、壮汰が愛知学院大へ進学予定。陽汰が175センチ、68キロ、壮汰は175センチ、63キロ。