東福岡高校は今冬、サッカー、バレーボール、ラグビーの3種目で全国大会出場を果たす。同校の寮の食責任者で、CLUBHOUSEの事業統括責任者の中川亮佑さん(37)がこのほど、取材に応じ、食事サポートの裏側を語った。 ◇ ◇ ◇高いフィジ…
東福岡高校は今冬、サッカー、バレーボール、ラグビーの3種目で全国大会出場を果たす。同校の寮の食責任者で、CLUBHOUSEの事業統括責任者の中川亮佑さん(37)がこのほど、取材に応じ、食事サポートの裏側を語った。
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高いフィジカル能力が求められる現代アスリートにとって食事の重要性は年々高まっている。栄養摂取は疲労回復、筋力アップなど、コンディショニング調整の上で欠かせないものであり、パフォーマンスに直結すると言っても過言ではない。
「食事が変われば、世界が変わる。」というコンセプトを持ち、育成年代アスリートの食事をサポートしているCLUBHOUSEと、同校との関わりは、本年度から始まった。昨年の全国高校ラグビーで準優勝のラグビー部の藤田雄一郎監督から「うちは全国を取るためにトレーニングはできている。あとは食事だけ」との言葉を受けて、バランス良く、質の高い食事を提供することができることをアピール。2つの寮で朝晩の食事を支援することが決まった。
寮生は約180人。多くの種目で高校年代トップクラスの実力校である同校の生徒たちの食事への意識差は激しかった。
「野菜が多い定食は全く受け入れられませんでした。残すようなこともありました。栄養バランスも偏るし、満足度も低い。考えて摂取する子もいましたが、カップラーメンで食事を済ませているような現状もあり、ビックリしました」
当初はメイン料理に複数の小鉢を付けるスタイルで栄養バランスを計算していたが、苦戦。徐々に高校生の好みに合わせるなど、工夫を凝らしている。メインを2つにし、その中にうまく野菜を組み入れて白米が進むような味付けで満足感を上げた。カロリー、ボリュームをしっかり取れるようになっていった。
予算ともにらめっこしながらの食事提供になる。食材の値上がりによって量が減ってしまっては元も子もない。地産地消にこだわりながら、全ての食材を見直し、少しでも安いものがあれば、採用した。寮生にアンケートを実施し、意見を聞き入れて修正しながらやってきた。部活動との連動もきちんと行う。
「食事の時間はリラックスの時間でもあるので、安らぎを提供したいです。来年度からは監督やコーチと情報を共有して、1週間の練習メニューをみて、どれくらいの栄養素を組み込めるかを考えたいです。週末はトレーニング量が多いのでカロリーを上げよう、など対応していきます」
8月から体成分分析装置「インボディー」を導入した。寮生の6~7割の体重増加に寄与しており、体脂肪が下がりながら骨格筋量がアップしている生徒もいるという。目に見える数字で結果が出ることで、ラグビーなどコンタクトスポーツと、階級別の柔道など種目によって差はあるが、全体として徐々に意識は高まってきた実感がある。
サッカー部は3大会ぶりの全国高校サッカー選手権大会出場を決めた。昨年花園準優勝のラグビー部、高校総体(インターハイ)準優勝のバレーボールは悔しさを今冬にぶつける戦いが迫っている。中川さんは優しい表情で彼らへの期待を口にした。
「ラグビーとバレーは全国に出るのが当たり前のような形でいわれている。プレッシャーあると思いますが、本当に良い子たち多いので、とにかく1つ1つ勝っていってほしいです。サッカーに関しては県大会の準決勝で6-0で勝つ良い試合をしました。寮に帰ってきてもすごく雰囲気もよかったので、あの勢いのまま全国でも勝ってほしいですね」
食事サポートを始めて約8カ月。今も試行錯誤の最中で、まだまだ課題もある。3部活が同時に全国大会出場を果たしたのは偶然かもしれないが、食意識の変化をみれば、アスリートとして前進していることは明らかだという。
どの種目も過密日程が組まれており、コンディショニング調整は勝敗に直結する。「自分で食べながら考えて行動していくことができるようになってほしいですね」。彼らの活躍が、食事の重要性を証明する1つの手段となる。育成年代から栄養という日本スポーツ界全体の課題を解決するために、中川さんは全力で取り組んで行く。【佐藤成】