2024シーズンのJ2は清水エスパルスが優勝、横浜FCが2位で自動昇格、そしてファジアーノ岡山がプレーオフを制して、クラブ史上初となる昇格を果たした。 振り返れば清水や横浜FCにとっても厳しい戦いだったことは間違いないが、最終的には地力を…
2024シーズンのJ2は清水エスパルスが優勝、横浜FCが2位で自動昇格、そしてファジアーノ岡山がプレーオフを制して、クラブ史上初となる昇格を果たした。
振り返れば清水や横浜FCにとっても厳しい戦いだったことは間違いないが、最終的には地力をしっかり見せる形で昇格を決めた。
岡山はリーグ戦5位ながら、プレーオフの準決勝ではリーグ戦9連勝と波に乗っていた4位のモンテディオ山形に敵地で3−0の勝利を飾ると、ホーム開催となった決勝も、リーグ3位のV・ファーレン長崎を撃破してきた6位のベガルタ仙台に、2−0と完勝。重要な短期決戦で勝負強さを示す形となった。
清水は最終的に、2位の横浜FCに勝点6の差を付けての優勝だったが、第36節の栃木SC戦で、2試合を残して昇格を確定させるまで、長いシーズンの中ではタフな戦いだったことは間違いないだろう。特に6月はアウェーで愛媛FC、ブラウブリッツ秋田に3失点で連敗を喫するなど苦しい時期を迎えたが、ホームで岡山に3−1と勝利して、悪い流れを断ち切ったことが大きかった。
■清水の得点力を高めた前線4人の組み合わせ
ただ、清水で興味深いのは愛媛、秋田と同じくアウェーで敗れたレノファ山口も含めた6月の3敗を除くと、残りの5敗は2位の横浜を含むプレーオフ圏内のチームであり、中下位には確実に勝ち点3を積み重ねたことが目に付く。
上位対決をまとめると、清水は山形に2敗、横浜、長崎と1敗1分、仙台には1勝1敗、岡山には2勝という結果で、3勝2分5敗となる。逆に7位以下のチームに対しては23勝2分3敗という圧倒的な数字だ。4−0で大勝した第15節の鹿児島ユナイテッド戦のように、立ち上がりから攻撃がハマった時の爆発力は非常に高い一方で、第29節の徳島ヴォルティス戦のように、終盤まで相手にリードを許しながら、ドウグラス・タンキの連続ゴールで逆転勝利した試合もある。
ただ、8試合の敗戦のうち、6試合が2点最上の敗戦であり、時に脆さを見せてしまったことは秋葉忠宏監督が3年目となるJ1の戦いに向けては課題の1つとして捉えるべきかもしれない。
チームの戦い方を振り返ると、乾貴士がピッチにいる時は4ー2ー3ー1、いない時は4ー4ー2か3ー4ー2ー1であることが多く、前者はある意味で”乾システム”とも言える。独力で違いを作り出せる乾を中心に、12得点を記録した1トップの北川航也、そしてカルリーニョス・ジュニオとルーカス・ブラガという両翼が揃った布陣が、今シーズンの清水における最強スカッドであり、得点率も高い。
その一方で、大型FWのドウグラス・タンキが勝負のカードとして投入することで、前線のパワーを加えるというのも相手ディフェンスには脅威となった。
■タレント力を押し出す中で安定をもたらした選手とは
基本的にはタレント力を前面に押し出すスタイルだが、シーズンを通して安定した戦いができたのはボランチの宮本航汰が、常に攻守のバランスワークを司っていたから。”相棒”の中村亮太朗も自慢の攻撃陣に正確なパスを配球しながら、機を見たチャンスメークでアクセントを加えた。
そしてシーズン夏にはJ1町田から育成型期限付き移籍で宇野禅斗が加わり、後半戦の”影のMVP”とも言うべき稼働力で、中盤に新たな強度を加えたことも見逃せない。住吉ジェラニレショーンがセンターバックの主力に定着したディフェンスラインも含めて、秋葉監督はオーソドックスな戦い方の中でも、全体的なバランスがよく、選手の個性をうまく発揮させることができていた。
そうしたタレント集団を最後尾から支えたGK権田修一の存在感を抜きに、今シーズンの清水を語ることはできない。チームが危うい時ほど、安定感抜群のゴールキーピングが目を引いた。その権田も退団がリリースされており、すでに契約を更新した沖悠哉を第一候補として、新たな守護神争いが繰り広げられそうだ。
フィールドポジションに関しても、J1での戦いに向けたセンターラインの補強が必要なのは言うまでもないが、同時に引き抜きの可能性がある主力を引き留めることができるかどうかも焦点になる。横浜FC、岡山ともにタフな戦いが待っていることは間違いないが、ただの”昇格組”ではない戦いぶりを期待したい。
(取材・文/河治良幸)