広島の育成選手として3年間プレーした新家颯投手(21)は、今オフ戦力外通告を受け、現役を引退した。セカンドキャリアとして選んだのは、幼少期からの夢だった教育者への道。プロ野球選手からの異例ともいえる転身を目指す若者の現在地に迫った。  ◇…

 広島の育成選手として3年間プレーした新家颯投手(21)は、今オフ戦力外通告を受け、現役を引退した。セカンドキャリアとして選んだのは、幼少期からの夢だった教育者への道。プロ野球選手からの異例ともいえる転身を目指す若者の現在地に迫った。

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 カープで過ごした3年間は何ものにも代えがたい貴重な時間だった。新家さんは野球漬けだった日々を「とてもいい経験させていただいたなと、率直に思います」と明るい声で振り返った。

 今オフに戦力外通告を受け、トライアウトにも参加。クラブチームや社会人チームなどからは連絡もあったが、「12球団でしか野球は続けないと決めていました」と後悔なく、プロ野球の世界を離れた。

 セカンドキャリアを考えた時に浮かんだのは、胸にしまっていた幼少期からの夢だった。「ずっと保育士になりたいと思っていた。子供たちと関われる仕事に就きたいと思っています」と将来像を明かす。

 その夢を持つきっかけとなったのが中学生の時の職業体験だった。「漠然と年下の面倒を見るのが好きだった」という理由で体験場所に幼稚園を選択。そこで過ごした1週間で「大変だったんですけど、それ以上にやりがいがあって楽しかった。これを仕事にしたいなと思った」と初めて具体的な将来を思い描いた。

 高校でも教育への道を志していたが、3年夏の和歌山大会での投球がスカウトの目に留まり、カープに入団。「僕は一度もプロ野球選手になれるとは思ってなかったので、指名された時は驚きました」と振り返る。

 現在は保育士に限らず、小・中学校の先生なども視野に入れて道を模索中。和歌山の実家で勉強と情報収集の日々を送っている。目指しているのは来春からの進学だ。「正直、今から勉強しても限界はあるので、最低限のところを何とかカバーできるように」と厳しい状況の中で、AO入試などの方法も検討中。四年制大学や短期大学など選択肢を広げて夢を追っている。

 思い描く教育者としての姿がある。「子供たちと距離が近い、何でも話せるような先生になりたいです」。そして子供たちに伝えたいのは野球の魅力。「元プロ野球選手として僕にしかできないこともあると思う。カープで学んだことも生かしながら、不安しかないですけど頑張りたいです」。まだ21歳。まだまだ続く第二の人生を着実に歩み始めている。

 ◇新家 颯(しんや・そう)2003年8月14日生まれ、21歳。和歌山県田辺市出身。182センチ、83キロ。現役時代は左投げ左打ちの投手。田辺では甲子園出場経験なしも、潜在能力を買われ、21年度の育成ドラフト1位で広島に入団。2軍では1年目に初勝利、2年目には自己最多の24試合に登板。今季は9試合で1勝0敗、防御率11・42。