◆第41回ホープフルS・G1(12月28日、中山競馬場・芝2000メートル、良) 24年中央競馬最後のG1、第41回ホープフルSは28日、中山競馬場で行われ、断然の1番人気に支持されたクロワデュノールが快勝。デビュー3連勝で来年の牡馬クラシ…

◆第41回ホープフルS・G1(12月28日、中山競馬場・芝2000メートル、良)

 24年中央競馬最後のG1、第41回ホープフルSは28日、中山競馬場で行われ、断然の1番人気に支持されたクロワデュノールが快勝。デビュー3連勝で来年の牡馬クラシックの主役候補に名乗りを上げた。大けがから復帰して初となる、4年ぶりのビッグタイトル獲得に北村友一騎手(38)は男泣き。場内は温かい歓声に包まれた。中央競馬は全日程が終了。各リーディングなどが決まった。

 来年の主役に堂々と名乗りを上げた。4角で前を行く2頭を射程圏に入れたクロワデュノールは、その外から一完歩ずつ差を詰める。残り200メートルから右ムチを合図に急坂を一気に駆け上がると、力強さは増す一方。ゴール直前で手綱を緩める余裕を見せた北村友は「4コーナーで前はとらえられると思っていました。後ろからもつかまらないと思いましたし、勝つと思いました」と無傷3連勝での戴冠(たいかん)を振り返った。

 後半1000メートルの59秒1はG1昇格後の最速タイ。特に残り4ハロンはレース史上初の11秒台が連続する厳しいラップ。それをラストは流してクリアした。斉藤崇調教師は「皐月賞と同じ舞台で勝てたのはすごく自信になりますし、来年に向けて頑張っていけるなと」。無敗の3冠馬コントレイルと同様のローテを歩み、単勝1・8倍に支持したファンの期待を上回る勝ちっぷりだった。

 笑顔でインタビューに応えていた北村友は「またG1を勝つことができて良かった」と声を震わせ号泣した。クロノジェネシスで20年有馬記念を制し、トップジョッキーに名乗りを上げた矢先の21年5月、落馬事故で背骨などを8か所以上骨折するなど騎手人生の危機に見舞われた。約1年のリハビリを乗り越えたが、「復帰してからも正直、心が折れそうな時は何回もありました」。徐々に勝ち星を増やし、巡り合ったのがクロノジェネシスと同じ斉藤崇調教師、サンデーレーシングのクロワデュノールだった。

 まさに運命の出会いに「本当にたくさんの方々に助けていただいて、応援していただいて、ここに導かれたんだと思います。来年は大きなところで勝ちたいと思いますので、ともに歩んでください」と涙をぬぐった北村友。同じ勝負服での大仕事に「自分のなかではかぶるところはあります」と期待を寄せる大器と、新たな物語を作っていく。(石行 佑介)

 ◆クロワデュノール 父キタサンブラック、母ライジングクロス(父ケープクロス)。栗東・斉藤崇史厩舎所属の牡2歳。北海道・安平町のノーザンファームの生産。通算3戦3勝。総獲得賞金は1億1678万9000円。主な勝ち鞍は24年東京スポーツ杯2歳S・G2。馬主は(有)サンデーレーシング。

〈クールな印象一転…北村友騎手の涙に驚き〉

 「いいジャンパー、着ていますね」。昨年1月、北村友騎手に初めて話しかけたとき、そう言われた。私はこう返答した。「実はこのジャンパーを渡そうと思いまして」。着ていたものとは別に、競馬学校からの同期、田中博調教師に預かっていた厩舎ジャンパーを手渡した。

 「大けがは悔しくなかったですし、受け入れるしかないので」と語り、普段は「僕のことは書かなくていいですよ。馬が頑張ってくれるだけなので」と話すなどクールな印象だった。それだけに勝利インタビューの涙には驚いたが、引退レースの手綱を執ることができなかったクロノジェネシスのことなど、様々な思いが去来したに違いない。

 同僚のメモリアル勝利では、あのジャンパーを着て登場する北村友騎手。涙を見て仲間とのつながりを大切にする人柄だと改めて実感した。最近は明るい表情を見かけることも増えた。ぜひとも来年のクラシック戦線を盛り上げていってほしい。今度はたくさん、ジョッキーのことも聞かせてくださいね。久々のG1勝利、おめでとうございました。(山下 優)