現在、オフシーズンのJリーグ。だが、試合のない時間は、新シーズンへの期待が高まる時期でもある。次々と選手や監督の去就が発表される中、サッカージャーナリスト大住良之は、来季のJ1リーグの「台風の目」として、2024年シーズンを6位で終えた、…
現在、オフシーズンのJリーグ。だが、試合のない時間は、新シーズンへの期待が高まる時期でもある。次々と選手や監督の去就が発表される中、サッカージャーナリスト大住良之は、来季のJ1リーグの「台風の目」として、2024年シーズンを6位で終えた、昇格組の東京ヴェルディを挙げる。京都サンガから期限付き移籍中の2人、山田楓喜の海外挑戦(ポルトガル1部CDナシオナル)と木村勇大の完全移籍などチームの新編成や、知られざる城福浩監督の過去まで、この機会に振り返りたい。
■3分の1が「期限付き移籍」の懸念
「春秋制」で行われる最後のJリーグとなる2025シーズン。開幕に向けてのチーム編成は、年末年始も活発に進行中だが、早くも新シーズンへの明るい見通しをつけたクラブがある。東京ヴェルディである。
12月25日には、DF林尚輝とFW染野唯月の鹿島アントラーズからの完全移籍が決まった。林は、東京ヴェルディがJ2にいた2023年から2年間の期限付き移籍をしていた。染野は、2022年に半年、23年にも夏から半年の期限付き移籍でプレーし、2023年の昇格プレーオフ決勝では、終了間際のPKでヴェルディの16シーズンぶりのJ1昇格に貢献、2024年も鹿島からの期限付き移籍でプレーしていた。
さらに12月26日には、ガンバ大阪から1年間の期限付き移籍でプレーしていたFW山見大登の完全移籍も発表された。山見は素晴らしいスピードをもったドリブラーで、2024年はチーム2位の7得点を挙げて活躍した。
東京ヴェルディは、2024年に主力の3分の1ほどが「期限付き移籍」という状況で試合をこなしてきた。そして6位という好成績を残したものの、来季はどうなるか、懸念されていた。ヴェルディでの活躍により、当然、本来の契約があるクラブで主力として期待されるのではないかと思われたからだ。
しかし、林、染野、山見ら期限付き移籍だった選手たちの完全移籍とともに、DF谷口栄斗など他クラブから獲得のオファーを受けた選手たちも大半が残ることになり、『スポーツ報知』が伝えるところによれば、Jリーグの最終節(対京都サンガF.C.)に登録された18人の選手中、15人が2025シーズンもヴェルディでプレーすることが決まったという。これこそが、2025年のJリーグでヴェルディが台風の目となり、優勝戦線をかき乱すのではないかと思う理由だ。
■予想を上回る「活発な攻守」で快進撃
16年ぶりのJ1の舞台。2024シーズンが始まる前、ヴェルディの評価は、けっして高くはなかった。城福浩監督の指導の下、激しく攻守を繰り返すチームとして大きく成長を遂げたヴェルディだったが、J1で戦い抜くには戦力が乏しいのではないかと見られていたのだ。
「J1残留」が、このチームの現実的な目標ではないか―。私もそう考えていた。1シーズンでJ2に逆戻りしたら、ヴェルディはまた長い低迷期を迎えてしまう恐れがある。しかし、J1で2シーズン目を迎えることができたら、スポンサーも増え、これまでのように、活躍した選手を次々と手放さざるをえないような負のサイクルから抜け出せるのではないか―。
だが、ヴェルディは予想をはるかに上回る活発な攻守で「16年ぶりのJ1」を戦い抜いた。そして最終的に6位という好成績を収めた。その要因は、間違いなく「城福イズム」の浸透だった。
■知られざる城福監督の「選手時代」
城福浩監督は、1961年3月21日、徳島県徳島市生まれの63歳。現在、仙台育英高校でサッカー部監督を務める兄の影響でサッカーを始め、兄の後を追うように徳島県立城北高校、早稲田大学を卒業、1983年に富士通に入社した。神奈川県の川崎市にあった富士通のサッカー部(現在の川崎フロンターレ)は、1970年代に2シーズン、日本サッカーリーグ(JSL)1部でプレーしたが、1979年以降はJSL2部となり、1部昇格を目指していた。
MFとして第3節の東邦チタニウム戦(4月17日、西が丘サッカー場)で交代選手としてデビューし、次節からはレギュラーとなってチームの中核を担った。初得点は第11節、10月22日に北九州の鞘ヶ谷競技場で行われた新日鉄戦だった。
この年は10チーム中7位。以後も富士通はJSL2部の下位にとどまったが、城福がキャプテンとなって臨んだ1988/89シーズンに大きなチャンスを迎える。富士通は8チームによる「上位リーグ」に進出。上位2チームがJSL1部自動昇格という規定のなか、首位の東芝(現在のコンサドーレ札幌)が早々と優勝を決定。2位争いには3チームがからみ、最終の第14節での「2位3位直接対決」、ともに勝点16で並ぶ日立(現在の柏レイソル)と富士通の試合に、もうひとつの「昇格枠」がかけられることになった。勝ったほうが2位で昇格決定となる。だが、引き分けになると、4位の田辺製薬がNTT関東(現在の大宮アルディージャ)に勝てば、逆転で2位という状況だった。