鹿島は、鬼木達氏を新監督に迎え、新シーズンを迎える。「鬼木アントラーズ」はどんなチームになるのか。元川崎担当の記者が、新生・鹿島を展望する。第3回は【哲学編】。*  *  * 昨季まで、鹿島と川崎の「ゴールの目指し方」は異なるものだった。…

 鹿島は、鬼木達氏を新監督に迎え、新シーズンを迎える。「鬼木アントラーズ」はどんなチームになるのか。元川崎担当の記者が、新生・鹿島を展望する。第3回は【哲学編】。

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 昨季まで、鹿島と川崎の「ゴールの目指し方」は異なるものだった。その川崎を率いていた人物が鹿島の監督になったのだから、来季の鹿島は未知数だ。

 「鹿島らしく」いく継続路線か。あるいは「川崎らしく」いく改革路線か。サポーターだけでなく、多くのJリーグファンが注目しているに違いない。

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 結論から言えば「鹿島らしく」の精神は揺るがないだろう。ただし「鹿島らしく」だけじゃ優勝できないことは、この8年間のブランク期間が証明している。「鹿島らしさ」をブラッシュアップし、アップデートすることが鬼木監督の役目となる。

 風間八宏氏が築いた「川崎らしさ」に、強度や攻守の切り替えの重要性などといった部分、言い換えれば「鹿島らしさ」を加えたことで誕生したのが、川崎の黄金期だった(就任1年目で優勝)。ボールをつなぐ、だけじゃないチーム。美しい、だけじゃないチーム。「うまいチーム」を「勝てるチーム」に変貌させた。

 今回、鹿島で求められるのはその逆だ。クラブ伝統の「鹿島らしさ」に、8年間で4度リーグタイトルを獲得した川崎での成功体験のエッセンスを加えることが、奪還への近道となる。20冠の歴史がある、だけじゃないチーム。ジーコイズム、だけじゃないチーム。球際で勝つ、だけじゃないチーム。セットプレーが強い、だけじゃないチーム―。

 「ボール保持」にはこだわるようになるだろう。困った時は大きく蹴る、ではなく、困った時こそボールを握る、を求める監督だ。しかし、ボールを握ることが好きな監督というより、何よりもまず勝つことが大好きで、負けることが大嫌いな監督である。1月7日の始動から2月15日の開幕までの40日間、理想を追い求める部分、折り合いをつける部分を整理しながら、戦術を深めていくことになるだろう。

 クラブに「今までなかった概念を加える」作業に成功したからこそ、鬼木監督が川崎で一時代を築くことができたことは確かだ。そして、「今までなかった概念を加える」作業が、鹿島で求められることもまた、確かである。「鹿島らしさ」or「川崎らしさ」という文脈ではなく、2つの強烈なアイデンティティのぶつかり合いによって、新しい鹿島は完成する。(鹿島担当・岡島 智哉)