9月の下旬に戸田市の寮へ…戦力外通告を受け「わかりました」 元ソフトバンク、ヤクルトでプレーした嘉弥真新也氏は、今季限りを持って現役を引退した。2011年ドラフト5位でプロ入りし、通算472試合に登板。サイドスローから繰り出すスライダーを武…

9月の下旬に戸田市の寮へ…戦力外通告を受け「わかりました」

 元ソフトバンク、ヤクルトでプレーした嘉弥真新也氏は、今季限りを持って現役を引退した。2011年ドラフト5位でプロ入りし、通算472試合に登板。サイドスローから繰り出すスライダーを武器に“左キラー”として活躍した。戦力外通告を受けたことを、同僚に打ち明けず。胸に秘めながら、マウンドに上がった「2試合」があった。

 2023年オフにソフトバンクを戦力以外となり、ヤクルトに移籍した。今季は9試合の登板にとどまり、秋になっても「結果を出さないといけないと思っていましたし、自分の状態をどう戻すかを考えていただけでした」と必死に1軍昇格を目指していた。戦力外通告が球団から発表されたのが、9月30日。その少し前、埼玉・戸田市にある寮内に呼び出されたという。足を運ぶと、部屋の中にいたのが小川淳司GMだった。

「(戦力外を)言われた瞬間は『だよね』って感じでした。でも、そこから2試合投げましたからね。そういうのを言われたと隠して、普通に振る舞いました。最後はみんな『なんで言ってくれないんですか』って感じでしたけど。言っても、な……。『嘉弥真さんクビなんや』って思われるのも嫌ですし、だから普通にしていました」

2023年オフにソフトバンクを戦力外に…驚きは隠せず「マジか」

 プロ13年目。キャリアをリスペクトされて「僕は年が上の方だったので、先に言ってもらいました。全然ファームの試合がある日でした」と、推察する。チームメートに打ち明けることなく、残りの日々を過ごしたことも「言ってしまいたかったですけどね」と苦笑いした。「悲しむ人もいるわけで。そんなのは見たくないですし、僕も落ち込んでいるところは見せたくないですからね。みんなが言われた(と打ち明けた)時に、俺も言われたって言いました」と胸に秘め続けた。

 2023年に続き、2度目の戦力外通告となった。同年は23試合登板に終わったものの、推定年俸は1億6000万円。「ホークスをクビになった時は『ええ、マジか』って思いました」と驚きは隠せなかった。「1回経験しているので、ヤクルトから言われた時は『ですよね、わかりました』って感じでした。やっぱり実力の世界なので。若い子も力が強いし、勝負できない感じだなと思いましたね」。素直に受け入れ、少しずつ気持ちは引退へと傾いていった。

 自身のSNSで、ユニホームを脱ぐことを公表したのが11月16日だった。肩肘や腰も含め「体は元気ですよ!」と胸を張る。一方で、「(引退したのも)元気だから、です。もし、このまま獲ってもらえたとして、1軍でパフォーマンスを出せるかと言ったらわからない。違うチームで獲ってもらえてまた同じ結果だったらこっちも嫌ですし、迷惑をかけたくないなとも思いました」と語った。感謝を口にしながら、ともに戦ってきたグラブを置いた。(竹村岳 / Gaku Takemura)