サッカーの第33回全日本高校女子選手権が29日に兵庫県内で開幕する。今大会から規模が拡大し、出場チームが前年の32→52と約1・6倍となった。日本サッカー協会の佐々木則夫女子委員長(66)がこのほどデイリースポーツの取材に応じ、従来の9地…

 サッカーの第33回全日本高校女子選手権が29日に兵庫県内で開幕する。今大会から規模が拡大し、出場チームが前年の32→52と約1・6倍となった。日本サッカー協会の佐々木則夫女子委員長(66)がこのほどデイリースポーツの取材に応じ、従来の9地域代表制から47都道府県制への変更に至った狙いを明かした。さらに、同大会準決勝・決勝の舞台であるノエビアスタジアム神戸を“高校女子サッカーの甲子園”にするべく、大会初の観衆1万人突破を目標に掲げた。

 2021年に女子委員長に就任した佐々木氏の肝いり施策が、ついに形となった。積年の課題である女子サッカー選手の増加に向けて、全国の女子高校生が地元で目指せる、ひのき舞台を用意。「女子サッカーの機運を高めていくには最高の大会になる」と、男子にも負けないような盛り上がりに期待を寄せた。

 これまでの9地域代表制では、一つの都道府県から恒常的に複数チームが全国大会に出場している状況で、前大会では23の都道府県で出場チームが0だった。同委員長によると「まだまだ女子高校のサッカー部が少ない県がある」と、地元で有望な選手がプレー先を求め、他県に流れることも少なくなかった。47都道府県制をきっかけに、選手の受け皿となる部活結成数の増加を狙う。「他県に行かなくても、自分の県の代表として出場できる。徐々にそういった広がりにつながれば」と意図を明かした。

 さらに、小学校卒業後にプレーする場が少ないことから、中学でサッカーを辞めてしまう“中学の壁”問題解消も同時に見据える。「高校が結びつくと、それにつなげるためのU-15(15歳以下)のチームも作っていただく流れになるかもしれない」。各カテゴリー間で好影響をもたらし、競技人口増加につなげていく。

 自身も帝京高のサッカー部で青春を過ごしただけに、部活動に対する思い入れは強い。1976年の3年時には主将として、全国高校選手権に出場。準決勝では国立競技場のピッチに立ち、大観衆の中、PK戦で敗れたが「3年間の短い期間だけど、人生で非常に濃い期間だった」と懐しんだ。高校の部活としての一体感、選手同士の絆なども見どころになるだろう。

 同大会はサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」への登竜門として、新星誕生にも注目だ。FW佐藤ももサロワンウエキ(大商学園)、DF本多桃華(十文字)といった、今秋行われたU-17W杯メンバーも出場。「将来のなでしこジャパンの“卵”よりも成長した…あと一歩ですよね。いいパフォーマンスを見せてほしい」と期待に胸を膨らませた。

 神戸市との関わりも深い同大会。1992年の第1回が神戸で開催されて以降、全33回中21回が神戸市を中心とした兵庫県で開催され、14年度以降、準決勝・決勝は17、18年度を除いてノエビアスタジアム神戸で実施している。定番となりつつあるノエスタを高校球児にとっての“甲子園”のように、女子高生にとっての憧れの舞台に価値を高められないか。その思いを問われた委員長は「あります」と力強くうなずいた。

 ただ、“甲子園化”のためには課題もある。決勝の観衆が、19年度は6400人を超えていたものの、コロナ禍を挟んで大幅に減少。昨年は2350人と寂しい数字だった。状況打破へ、まずは興味を持ってもらおうと、全試合入場無料の施策を続けている。選手にとっても大観衆はモチベーションとなるだけに「決勝は1万人以上は集めたい」と大台突破を目標に掲げた。

 同委員長が「日進月歩」と位置づける女子サッカー界の発展へ、大きな一歩を踏み出す同大会。52校がしのぎを削って生まれる、新たなドラマに期待したい。

 ◆全日本高校女子選手権 高校女子サッカー部の頂点を決める大会で、第1回は1992年に兵庫県神戸市で開催。2002年の第11回から静岡県磐田市などに開催地が移ったが、14年度以降は再び神戸市を中心とした兵庫県での開催が続き、準決勝・決勝は17、18年度を除いてノエビアスタジアム神戸で実施されている。最多優勝は藤枝順心の7度。

 ◆出場チーム数の変更 第33、34回は47都道府県協会から選出された47チーム、および配慮5枠(宮城県、東京都、静岡県、大阪府、兵庫県)の各1チームを加えた計52チームで実施。これまでの9地域代表制により、一つの都道府県から恒常的に複数チームが全国大会に出場していた状況から、該当チームや在学中の選手に配慮した経過措置のため。第35回大会以降は48チーム(47都道府県代表+開催地1枠)に変更する。