NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25ディビジョン2 第1節2024年12月21日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)花園近鉄ライナーズ 20-24 豊田自動織機シャトル…
NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第1節
2024年12月21日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 20-24 豊田自動織機シャトルズ愛知
チームの行き先を示す『灯台』のように。
フレディー・バーンズが圧巻の活躍
突出したパフォーマンスをみせた豊田自動織機シャトルズ愛知のフレディー・バーンズ選手
花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)と、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)がぶつかりあったディビジョン2 第1節は、S愛知が後半、猛追を見せる花園Lを振り切って白星スタートを切った。
試合後、プレーヤー・オブ・ザ・マッチの表彰を受け、チームメートの下に向かう背中に刻まれた背番号10が一際、輝きを放っていた。自身の2トライを含めて、チームが奪った24得点中19得点を挙げたフレディー・バーンズである。
「彼はどちらかと言うと(ゲームを)コントロール(する)タイプで、キックにフォーカスされることが多々あるんですが、彼自身はボールを持ってランをする強みもあります」。元イングランド代表でもあるフレディー・バーンズに全幅の信頼を置く徳野洋一ヘッドコーチの評価に尽きる圧巻のパフォーマンスだった。
8対3のスコアで推移し、まだ試合の流れはどちらに転ぶか分からなかった前半28分、フレディー・バーンズが圧巻のランで試合の流れを引き寄せた。
ハーフウェイライン付近でボールを受けると絶妙のチップキックで抜け出し、味方のパスを再び受けたあとは華麗なステップでセミシ・マシレワをかわし、サナイラ・ワクァのタックルを受けながらも中央へのトライに成功した。日本代表で活躍した二人の対応を上回ってのトライだった。
ランで魅せた男は後半7分、そのパワーでも花園Lを突き放す。豪快に相手守備を押し切って、自身二つ目のトライをマークし、試合の流れを決定付けた。
『紳士の国』として知られるラグビーの母国で育った男は、好パフォーマンスについて問われても、開口一番「チームのパフォーマンスが非常に良かったです」と仲間をまず褒め称えた。
昨季のD2では107得点を記録し、得点王に輝いたフレディー・バーンズ。だがD1/D2入替戦で勝点1の差に泣いた悔しさは心に棘として刺さったままである。
「1試合、1試合を大切にしています。遠くを見るのではなく、まず近い試合を見て、最終的にはD1に上がれればうれしい」(フレディー・バーンズ)。
司令塔でもありながら、チームの行き先を示す灯台のような役割も果たす男――。4,462人の観衆が集ったこの日の東大阪市花園ラグビー場は、フレディー・バーンズの『庭』だった。
(下薗昌記)
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、ジェド・ブラウン バイスキャプテン
花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ
「初戦に本当に懸けていて、『All Attack(今季のチームスローガン)』で得点を重ねようと思ったんですけれども、前半で勢いを出すことができませんでした。私たちがチャンスをつかんでボールをキープしようとしたところで、ラインアウトでのミスやペナルティがあり、相手に勢いを渡してしまったと思います。セットピースが安定して、マイボールがキープできれば、後半には、ボールを動かしてトライが取れるところまで見えたと思うので、あれを前半から繰り返して、トライを奪えるように、また次のゲームでは本当に『All Attack』を80分間できるように詰めていきたいと思います」
──ハーフタイムでは後半に向けて、どういうところを修正するように選手に伝えたのでしょうか。
「プレーの精度のところで、セットピースとブレイクダウン、この二つをしっかりすることで、自分たちのペースで早くボールを展開していくことを指示しました」
──立ち上がりは良かったと思いますが、その後はラインアウトでのミスなどで流れも悪くなりました。公式戦の初戦ならではの難しさがあったのか、まだ課題の修正が足りないのか、どのようにご覧になっていますか。
「本当に(自分たちの)出足が良くて、プランどおりに相手がやってきて、自分たちのペースで敵陣に入って、アタックもしかけましたけれども、相手も自陣になったら必死に守ろうとします。それに対して、我慢できなくてキックしてしまうことがありました。やはり22mの中に入ったら、10分でも15分でも、ボールを持ち続けて、スペースが空くまでキープし続けること(が必要だった)。
例えば、今日の最後にも相手チームはボールを持ち続けましたが、ああいうことをされるとどこかにスペースが空いてくる。特に22mの内側に入ったときには、そういう我慢の練習もしたつもりなんですけれども、まだまだ私と、選手たちとに我慢とスペースを見つける目というところが、足りなかったかなと思います」
──クウェイド・クーパー選手がセンターに投入されてから流れが良くなりましたが、トム・ヘンドリクソン選手と交代して、あのポジションで起用することは準備されていたプランだったのでしょうか。
「いや、そこはプランどおりというようにはいかなかったんですが、外側のウイングとフルバックのところにスペースがありましたから、そこにボールをどうやって回すかというところで、クウェイド(・クーパー)を入れて外側にボールを動かすというプランに変えました」
花園近鉄ライナーズ
ジェド・ブラウン バイスキャプテン
「プレシーズンの試合も、同じような流れをずっと繰り返していて、結局入りが悪い。そして追い付かないといけないという展開のラグビーをずっと続けてきました」
──相手がアタックしてきたときに、なかなかディフェンスで止められなかった場面がありました。その要因について、どう考えていますか。
「このリーグに臨むにあたって、ブレイクダウンで相手にクイックで出させないように、スローボールにしないといけないということをメンバーと話をして取り組んできたのですが、それができませんでした。クイックで出されて(自分たちが)下げさせられる展開になったので、そこが原因だと思います。ブレイクダウンを修正していかないといけないです」
──後半は巻き返すことができましたが、その要因をどう感じていますか。
「まずは、アタックでよりオプションを使うようになったことと、前半の展開を踏まえて後半は全員が顔を上げて、スペースを見るようになりました。前半からスペースがあるのは分かっていましたが、顔を上げてプレーができていなかったので、そのスペースがどこにあるのかも把握できていなかったし、そこにボールを運ぶことができていませんでした」
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(左)、ジェームズ・ガスケル共同キャプテン
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日、無事に開幕を迎えられたことを本当にうれしく思っております。またこの東大阪市花園ラグビー場というラグビーの聖地で、私も出身が東大阪市ですので、小さいころから憧れた、このスタジアムで伝統ある花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)さんと開幕戦ができたことを非常にうれしく思っております。
また、自分のチームの話になるのですが、この開幕戦で5人が豊田自動織機シャトルズ愛知でのファーストキャップを取ったということ。特にフッカーの大山卓真と控えのジョネ・ケレビは大学のときはさほど(目立った)キャリアがない選手で、そういった選手たちが、このリーグワンの舞台でファーストキャップを取ったことを、何よりもチームとして、本当にうれしく思っております。本日はありがとうございました」
──プレシーズンに準備してきたことを披露する場でもありましたが、この試合をとおして、どういった手ごたえを得たのか、そしてどういった反省点があったのか教えてください。
「まず非常に戦力が整っている、そして伝統のある花園Lさんに勝てたということ。ここは評価していい部分かなと思います。ただ、ゲームの中で、スクラムに関しては、80分をとおしてなかなか(やりたいことを)出せていなかったというところがあります。あとは試合の流れの中で、もう少しセーフティーにプレーできるところで、少しゲームコントロールがうまくいかなかったところもあります。そのあたりは、勝ちながら、若いチームですので、学んでいかないといけない部分だなというふうに思っています」
──ゲームコントロールにおいては後半、特に自陣に釘付けにされて花園Lの攻勢を受ける形になりましたが、そこでしっかりとディフェンスで耐えられたことが勝利につながった要因かと思いますが、いかがでしょうか。
「そうですね、あの厳しい状況の中でハードワークした選手は本当に素晴らしかったと思います。ただ、選手もスタッフも含めて、われわれはあれぐらいの厳しい練習を、これまでプレシーズンで何度も繰り返しやってきました。なので、さほどスタッフも選手もプレッシャーには感じていなかったのかなと思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン
「徳野さん(徳野洋一ヘッドコーチ)からもあったように、今回ここで試合をできたことをすごくうれしく思います。また、チームとして、チームのみんなが頑張ってくれたことで勝てたことにも誇りを持っています。今回は勝てましたが、次節に向けてもしっかりと準備して頑張っていきたいと思います」
──後半、劣勢に回っている中でチーム内ではどういう話し合いがあったのでしょうか。また意識していた点があれば教えてください。
「モメンタム(勢い)が、非常に大事な試合になってくるとは思っていたのですが、ディフェンスはしっかりとできたかなと思っています。ただ、それができないところで(花園Lに)キックされて、そこで攻められる場面がいくつもあったので、最後の2分は本当に、自分たちでも『耐えていかないといけない』という雰囲気になっていました。ディフェンスとしても良かったかなとは思います」