飯田哲也インタビュー 後編今江敏晃の監督解任について(前編:青木宣親は「もったいない」選手だった!? 「野村克也さんが監督だったら使われなかったかもしれない」>>) 10月11日、楽天の指揮を執って1年目の今江敏晃監督の解任が発表された。2…

飯田哲也インタビュー 後編

今江敏晃の監督解任について

(前編:青木宣親は「もったいない」選手だった!? 「野村克也さんが監督だったら使われなかったかもしれない」>>)

 10月11日、楽天の指揮を執って1年目の今江敏晃監督の解任が発表された。2024年シーズンはセ・パ交流戦で優勝し、最後までAクラスを争ったが(最終順位は4位)、ユニフォームを脱ぐことになった。

 ヤクルトで長く活躍したのち、楽天が創設された2005年にチームに入団して引退までの2年間を過ごした飯田哲也氏に、ファンにも大きな衝撃を与えた解任劇について聞いた。


1年で楽天の監督を解任となった今江敏晃

 photo by Sankei Visual

【「これが"楽天"というイメージになってしまう」】

━━少し前の話になりますが、10月11日、楽天の指揮を執っていた今江敏晃さんの監督解任が発表されました。1年での解任劇、率直にどう思われましたか?

「ちょっと賛成しがたいですね。『なんで?』という思いしかありません。球団側は2年契約で頑張ってください、ということでお願いしたわけですから、2年は見てあげないと。勝負の世界ですから『ダメだったから交代』ならわかります。でも、順位は4位でしたが、交流戦も優勝しましたし、そんなに悪い成績ではなかったですから。

 今江には、『1年目にこうしたから、2年目はこうしよう』というプランがあったはず。それが1年で終わってしまったら悔しさしか残らないですよ。これが"楽天"というイメージになってしまう。選手や首脳陣、ファンも不信感を抱くでしょうし、今後監督を外から呼ぶとなった場合に、受けてくれなくなるんじゃないかと。球団として変わらないといけないと思います」

━━変わらなければいけない部分とは?

「今はオーナーの方針によるところが大きいんじゃないかと思います。でも、現場をしっかり守ってあげないといけない球団職員が、ある程度はチームに物を申せるようじゃないといけませんよね。他球団では、なかなかない体制だと思います。今江も言いたいことはあったと思いますが......。代わりにじゃないですが、田尾安志さんが苦言を呈してましたね」

━━田尾さんは2005年、楽天創設1年目の指揮官を務めました。その2005年に、飯田さんも選手としてヤクルトから移籍したわけですが、当時の球団の様子はいかがでしたか?

「シーズンで97敗しましたけど、あの戦力と環境では勝てないですよ。まずはグラウンドがなくて、どこで練習したらいいのかがわからなかった。スケジュールなどメチャクチャで、オープン戦でしたが、埼玉県の所沢で西武とデーゲームをやった翌日に、札幌で日本ハム戦があったり。相当にきつかったです(笑)。

 球団側も手探りの状態だったんでしょうね。逆に新鮮で、楽しかった部分もありましたが(笑)。そこから、各所から意見が出てきて徐々に変わっていきました。その後、野村克也さんや星野仙一さんなどが監督をやるようになって、選手も獲るようになりましたしね。そのまま、いい方向に進み続けられたらよかったんですけどね」

【2024年の活躍が目に留まった選手は?】

━━今季の今江監督の采配をどうご覧になっていましたか?

「うまくいくことばかりではなかったでしょうが、よくやっていたと思います。投手陣は、先発陣はベテランが多くなってきましたが、26歳の早川隆久を中心に若返りを計っていました。抑えも、松井裕樹(現パドレス)が抜けた穴に、則本昴大を起用してしっかり埋めました(54試合登板、4ホールド32セーブ)。

 打撃陣でも、チームの"顔"である4番の浅村栄斗をスタメンから外す思いきった決断をして、交流戦を制した。最後までAクラスを争うまで戦ったわけですし、そこは認めてあげてほしいですよね」

━━そんななか、今季に活躍した選手のなかで特に目についた選手は?

「やはりベストナインに輝いた辰己涼介でしょう。今季は4年連続のゴールデングラブ賞、最多安打のタイトルも獲りましたから。昨年までは、開幕からしばらくよくても失速してしまうイメージもありましたが、今季は1年を通していい働きをしました。成長の幅が大きいですし、これからも伸びていくだろうと思います」

━━ベストナインの授賞式では、顔を金塗りにして登場し、話題になりましたね。

「辰巳の言葉は独特で、私には理解できませんね(笑)。難しいことを言っているようで、よく聞くと簡単なことを言っていたり。哲学者というか、どちらかというと今永昇太タイプかもしれません。

 辰巳以外で言うと、小郷裕哉は完全に守備でスタメンを勝ち取りました。32盗塁を記録して、打撃も思いきりがいいのが好印象です。対して、小深田大翔にはもう少し頑張ってもらわないと。小深田も守備と走塁はいいですが、打率が.229では厳しいです。もっとやれる選手だと思いますよ」

━━来季は、二軍の指揮を執っていた三木肇監督がチームを率います。戦力補強がどれだけできるかにもよりますが、采配などにも注目が集まりますね。

「戦力としては、やはり外国人選手が結果を残せないときついですね。それは、他球団も同様ですが。今の選手たちも、状況が変わって大変だとは思いますが、しっかりとオフに準備をして新しいシーズンを迎えてほしいです」

【プロフィール】

飯田哲也(いいだ・てつや)

1968年5月18日、東京都生まれ。拓大紅陵高3年時に春夏連続して甲子園に出場し、86年ドラフト4位でヤクルトに入団。捕手として入団するも、野村克也監督に俊足、強肩を買われ外野手に転向。91年から97年まで7年連続ゴールデングラブ賞を獲得し、ヤクルト黄金時代の名手としてチームを支えた。05年に楽天に移籍し、翌年現役を引退。引退後はヤクルト、ソフトバンクでコーチを務め、20年より解説者として活躍。