これまで数多くの若きバスケットボール選手が、高校日本一を決める冬の大会「ウインターカップ」をステップに世界へと羽ばたいていった。 田臥勇太(秋田・能代工/PG)、比江島慎(京都・洛南/SG)、渡邊雄太(香川・尽誠学園/SF・PF)、八村塁…

 これまで数多くの若きバスケットボール選手が、高校日本一を決める冬の大会「ウインターカップ」をステップに世界へと羽ばたいていった。

 田臥勇太(秋田・能代工/PG)、比江島慎(京都・洛南/SG)、渡邊雄太(香川・尽誠学園/SF・PF)、八村塁(宮城・明成/SF・PF)、そして河村勇輝(福岡・福岡第一/PG)──。高校時代の彼らの飽くなき向上心が、日本バスケット界をさらに高みへと導いたことは言うまでもない。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 次に強烈な光を放つ新星は、どの街から生まれてくるのか。未来の日本バスケットを担うであろう、注目の男子高校生3名を紹介したい。

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オーストラリア人の父と日本人の母を持つ渡邉伶音

 photo by Mikami Futoshi

渡邉伶音(わたなべ・れおん)
<18歳/福岡・福岡大学附属大濠・3年/PF・C>

 今、最も注目されている高校生は、11月の「FIBAアジアカップ2025 予選 Window2」に日本代表の一員として選出された福岡大学附属大濠の渡邉伶音だろう。206cmという恵まれた身体能力を持ちながら、それに奢ることなく、プレーの幅も広げ、バスケットの質を高めてきた。

 305cmの高さにゴールがあるバスケットにおいて、身長が高いことが有利であることは言うまでもない。かつて身長の高い選手は、ゴール近辺でプレーすることが一般的だった。

 しかし、渡邉のプレーエリアはそこにとどまらない。3ポイントシュートも容易に放つのである。対戦相手としては、このうえなく守りづらい。

 間合いを離せば、すかさず3ポイントシュートを打たれるし、シュートを打たれまいと間合いを詰めれば、ドリブルで突破されてしまう。渡邉はその判断もよく、けっして自己中心的なプレーに走らない。そういうところも、チームを高みへ導ける彼の武器だ。

【技術トップクラスの大型ポイントガード】

 地元・福岡で行なわれた今夏の高校総体では、準決勝で敗れて3位に終わった。敗れた美濃加茂(岐阜)には203cmの留学生がおり、その選手を守りきれなかった。

 1月には特別指定選手としてBリーグも経験し、フィジカルの課題を痛感していただけに、留学生の強さに屈した悔しさはひとしおだっただろう。それだけにウインターカップに賭ける思いは強い。

 千葉から福岡に移り住んで3年。高校バスケットのトランジションにも十分耐えうる走力を身につけ、ゴール近辺のシュートバリエーションも、3ポイントシュートも、その精度を上げてきた。

 あとは、夏に課題となったフィジカルの違いをどこまで縮められるか。むろん渡邉だけの課題ではないが、チームディフェンスをより強固にするためにも、渡邉の奮闘が期待される。


世代ナンバーワンPGと称される瀬川琉久

 photo by Mikami Futoshi

瀬川琉久(せがわ・りく)
<18歳/京都・東山・3年/PG>

 次に紹介したいのは、京都・東山の瀬川琉久である。184cmの大型PGは、今夏のインターハイで念願の日本一を勝ち獲った。

持ち味は何といっても、その得点力だろう。瞬発的にギアを上げてゴールに迫るドリブルや、状況に応じた巧みなステップでシュートへと持ち込む。もちろん3ポイントシュートも武器のひとつだ。

 東山での3年間、瀬川はバスケットに意欲的に取り組んできた。年代別の日本代表はもちろんのこと、世界的なキャンプなどにも参加し、そこで培った技術はまさに世代屈指と言っていい。

 しかし、その吸収力のよさは、瀬川にとって諸刃の剣でもあった。異なるチーム、さまざまなコーチからいろんな要求をされ瀬川は、それをすべて受け入れようとした。

 たしかに瀬川自身の未来にとっては大きな財産だが、それが「東山の瀬川」とは必ずしも一致するものではない。PGとして周りを生かそうとするあまり、自らの持ち味である得点力が鳴りを潜めてしまったのだ。

 東山を率いる大澤徹也コーチからその点を指摘され、今はそこから少しずつ自分を取り戻してきている。

【圧倒的な得点力を誇るシューター】

 パスをしてはいけない、得点だけを考えろ、ということではない。状況に応じて第一優先を何にすべきか──原点ともいうべきそれを、もう一度見つめ直したという。

 とはいうものの、瀬川の技術、フィジカルが「世代ナンバーワン」なのは揺るがない。あとは攻撃力という点において、その評価をさらに上へと突き抜けられるか。それが瀬川に課せられたウインターカップでの大きな課題だ。それをクリアすれば、彼が思い描く未来は近づいてくる。


特別指定選手としてBリーグ琉球にも所属している平良宗龍

 photo by Mikami Futoshi

平良宗龍(たいら・しゅうたつ)
<18歳/新潟・開志国際・3年/SG>

 最後のひとりは、開志国際の平良宗龍を推したい。身長は瀬川よりわずかに低い183cmだが、得点力は瀬川に引けを取らない。切れ味の鋭さが彼の持ち味だ。

 沖縄県出身で中学時代は琉球ゴールデンキングスU15に所属し、中学3年生の時には同U18にも参加。高校進学後も琉球の特別指定選手として順調にステップアップを続けている。

 開志国際でも1年生からスタメンに抜擢され、インターハイで準優勝、ウインターカップでチーム初優勝に導く原動力となった。これまでの多くの経験が生かされた格好だが、しかしそれ以降は決勝の舞台に立てていない。

 昨年は将来を見越してPG転向にチャレンジしたが、それも裏目に出てしまった。彼の持つ得点力を発揮することができず、昨年度のウインターカップではベスト8、今夏のインターハイでもベスト8に終わっている。

 それでも今年度は、元来のポジションであるSGでプレーすることになり、彼本来の力を取り戻しつつある。

 千葉ジェッツの富樫勇樹の父であり、開志国際を率いる富樫英樹コーチは、彼に足りないところをキッパリと言う。

「チームを勝たせること」

 平良は得点力を落とすことなく、そのうえでチームを勝たせることを求められている。もちろん彼ひとりの力で勝てるほど、ウインターカップは甘くない。開志国際には彼のほかにも強力なチームメイトもいる。それでも......と、富樫コーチは言う。

「やっぱり、ウチは平良なんだ、というところを見せたい」

 今回取り上げた3人は、いずれも高校3年生。今のプレーをチェックしておけば、これからのBリーグ、そして将来の日本代表の試合もより楽しめるはずだ。高校生活最後のウインターカップでどのようなパフォーマンスを見せてくれるか、期待したい。