京都市で22日に開かれた全国高校駅伝は長野県勢が快走を見せ、男女ともに頂点に立った。同じ都道府県代表が男女そろって優勝するのは2020年の広島県勢以来4年ぶり。男子(7区間42・195キロ)の佐久長聖は2時間1分33秒で同校としての初の連…
京都市で22日に開かれた全国高校駅伝は長野県勢が快走を見せ、男女ともに頂点に立った。同じ都道府県代表が男女そろって優勝するのは2020年の広島県勢以来4年ぶり。男子(7区間42・195キロ)の佐久長聖は2時間1分33秒で同校としての初の連覇、女子(5区間21・0975キロ)の長野東は1時間7分27秒で1区からトップを譲らぬ「完全優勝」だった。男子の北信越地区代表として出場した長野日大は2時間12分10秒で51位だった。
各校のエースが集まる1区(10キロ)の6キロ過ぎ、佐久長聖の浜口大和(3年)は八千代松陰(千葉)の鈴木琉胤(るい)(3年)が集団から抜け出したのに気付いた。同世代のトップレベルで競い合ってきたライバルを、意識しないわけはない。だが、単独走になった鈴木を無理に追うことはしなかった。
「トラック(の個人種目)だったら、最後にどんなに離されてもいいから追ったかもしれない」と浜口は言う。「でも、駅伝は違う」
優勝を争うと予想していた大牟田(福岡)や仙台育英(宮城)との差を考えて、割り切った。「僕らのチームは全員に力がある。しっかり追い上げてたすきをつなげば大丈夫」。そこにはチームメートへの信頼があった。
日本選手の区間歴代最高記録を出した鈴木とは39秒差をつけられたが、全体4位でたすきリレー。エゴに走らず「自分の役割」に徹したことが、その後の逆転につながった。
チームの柱である浜口と3区・佐々木哲(3年)の2人は8月、南米ペルーで開催されたU20(20歳未満)世界陸上選手権に日本代表として出場。浜口は主将ながら、チームから離れる期間も短くなかった。「チームが崩れそうになって、苦労もあった」と振り返る。
だが、不在の間にも成長した同級生や後輩の力走で、目標としてきた連覇を成し遂げた。「鈴木君とは大学で再戦すればいい。今日はチームメートに助けられて2連覇できた。チーム力を示せた」。そう語った主将を、チームメートも胴上げしてたたえた。(菅沼遼)
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第1中継所まで残りおよそ300メートル。長野東の真柴愛里(2年)は10人余りの先頭集団にいた。進む先に2区の次走者、川上南海(なみ)(1年)が待っているのが見えた。
「南海の姿が見えて力が湧いた。『私が頑張らなきゃ』って」
ギアを上げ、力強く腕を振り、上り坂をぐんぐんと進む。前がひらけ、集団から抜け出た。そのまま他の選手を引き離す。2位に4秒差の区間賞で、トップでたすきをつないだ。
「選手として走れるのがうれしかった。でも、まさか自分が(区間賞を)取れるとは思っていなかった」
昨年の大会は故障で走れず、3区走者のサポート役に回った。閉会式で隣に座った横打史雄監督に「来年はどこを走りたい?」と聞かれた。迷わず「1区を走りたいです」と答えた。憧れた先輩たちのように、最長6キロのエース区間を走り、自分もチームを引っ張る存在になる決意をした。
「まさか(集団を)抜け出すとは思わなかった」と横打監督。「あの走りが2区以降に大きな勇気を与えた」。残りの4人もトップでたすきをつなぎ、ゴールまで駆け抜けた。
真柴は「学年関係なく、お互いに負けたくないと刺激し合ってきたことが成長につながった。みんなのおかげです」と笑顔で振り返った。切磋琢磨(せっさたくま)して成し遂げた2年ぶりの快挙。レース後、「やったー」と元気にチームメートと抱き合い、喜びを分かち合った。(菅沼遼)