第77回全国高校バスケットボール選手権(ソフトバンク ウインターカップ2024、朝日新聞社など特別協力、23日から試合開始)で、女子の福岡代表・東海大福岡はベスト4の壁を越える戦いに挑む。インサイドでの巧みなプレーで直近2大会での4強入り…
第77回全国高校バスケットボール選手権(ソフトバンク ウインターカップ2024、朝日新聞社など特別協力、23日から試合開始)で、女子の福岡代表・東海大福岡はベスト4の壁を越える戦いに挑む。インサイドでの巧みなプレーで直近2大会での4強入りに貢献し、エースに成長した伊東友莉香(3年)は今年5月、右ひざ前十字靱帯(じんたい)断裂の大けがを負い、以降はアシスタントコーチとしてベンチに入ってきた。大会に臨むメンバーへの思いを寄せた。
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高校最後の大会、けがをする前につけていた背番号15のユニホームを着て、ベンチに入ることになりました。プレーはできないけれど、学生コーチとして、コートに一番近い場所でみんなと戦います。
コートに立つみんなには、試合に出ていない人たちの分まで責任を持って戦ってほしい。ベンチに入れる15人は、勝つために選ばれたメンバー。だから、部員26人分の思いを背負って、全力でプレーしてほしいし、それを私も精いっぱい支えます。
インターハイ(全国高校総体)の福岡県予選前に、手術が必要な大けがをしました。プレー中にすべって、右ひざから崩れて動けなくなった。頭が真っ白になりました。
病院で「右ひざ前十字靱帯の断裂」と診断を受けました。その日は、寮の自室に帰ると涙が止まらなかった。経験にないけがへの不安と、バスケができないショックで、気持ちがふさがっていました。
手術を受けて入院していたころ、インターハイでみんなが試合をしていて、スマートフォンで映像を見ていました。
チームが勝ち上がっていくことは喜ぶべきことなのに、素直に受け入れられない自分もいた。
「コートに立ちたかった」「私がいなくても大丈夫なのかな」
でも、ベンチの様子が映ったときに気持ちがクリアになっていった。
「大丈夫! 大丈夫!」
そうスタンドから前向きな言葉が飛んでいて、応えるようにベンチに戻ってきた選手たちの表情が生き生きしていた。苦しい展開でも、みんなが「勝ちたい」と同じ方向を向いていた。
初めて画面越しにチームを客観視したときに、一体感の強さに胸が熱くなりました。
今の私のままでいいのかな、と考えた。この一体感を、もっと強める存在でいたい。落ち込んだままチームに戻るわけにはいかないし、自分に今できることをしたい。
そう思って、前に踏み出せた。きっかけはみんなの全力な姿でした。
チームに足りないのは、途中出場で活躍できる「シックスマン」の存在。控えの子たちの成長がすごく大切でした。
朝6時ごろ、朝練の前から体育館で練習したね。もっと実戦に近い形で経験を積んでほしくて、あまり無理はできないけれど相手ディフェンス役になった。コーチの役割を考えて動くほどに、チームの勝利がどんどんうれしくなった。
「ゆりかをメインコートに連れて行く」
ある日、同級生のバスケノートにそう書いてあるのを見て、いろんな思いがこみ上がりました。試合には出られないメンバーが多いけれど、それぞれがチームに必要なことを考えて動いている。私も最後までベンチで声を飛ばして、明るさは絶対に忘れません。
1、2年生のときに準決勝に進んで、会場の中央に一面を敷くメインコートでプレーしました。でも、どちらの試合も負けて終わった。みんなともっと先の景色が見たい。
今年は、メインコートで笑おう。
優勝して、笑って終わる冬にしよう。(構成・平田瑛美)