◆フィギュアスケート ▽世界選手権代表選考会 全日本選手権 第2日(21日、大阪・東和薬品ラクタブドーム) 男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位の鍵山優真(21)=オリエンタルバイオ・中京大=が205・68点。合計297・73…
◆フィギュアスケート ▽世界選手権代表選考会 全日本選手権 第2日(21日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)
男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位の鍵山優真(21)=オリエンタルバイオ・中京大=が205・68点。合計297・73点で、7度目の出場で悲願の初優勝を果たした。2010年の小塚崇彦(父・嗣彦)以来、史上2組目となる父・正和コーチ(53)との父子Vで、来年3月の世界選手権(米ボストン)の出場権も獲得。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の出場枠をかけた戦いに、日本男子の新王者として臨む。
感極まる父の前で、鍵山は笑顔を浮かべ氷上に大の字になった。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、フリーは今季世界最高の205・68点。自身7度目の全日本で初めて勝った。「久しぶりに父が感動して涙してくれた。いい演技ができたことは、すごくうれしい」。93年に大会3連覇した正和コーチ。10年の小塚崇彦(父・嗣彦)以来14年ぶりの父子Vは、男子で史上2組目の快挙。世界選手権の出場権も手にした。
SP1位から出たフリー。滑走前は父から「全力で戦ってこい」と送り出された。冒頭の4回転フリップは出来映え点(GOE)4・71点を引き出し、後半の4回転トウループなどで着氷が乱れても7本全てを降りる圧巻の演技。直後の大の字は、前年王者で今年引退した宇野昌磨さん(27)をまねたという。「今日は全部出し切った。気持ちよかった」。心地のいいひんやりさを背中で感じた。
父子での悲願だった。“師弟”関係は5歳から。息子の友達を増やすため、正和さんは遊びを兼ねてアイスリンクに連れて行った。トップレベルを知る父は「親としては厳しい世界には入れたくない」と複雑な思いを抱きつつも、練習への姿勢だけは厳しく指導。夕飯時は優しい表情だが、気のない練習をすれば夜中まで車中で話し込んだこともある。才能は開花し、16歳でシニア初参戦の四大陸選手権は3位。17歳で世界選手権銀、18歳で五輪銀と着実に成長を遂げてきた。
今年までに第一線を退いた五輪2連覇の羽生結弦さん(30)、同2大会連続メダルの宇野さんが12年間君臨した日本王者の座。26年ミラノ五輪で期待を背負う鍵山が新たに就いた。3月の世界選手権は五輪の出場枠獲得もかかる。「これから日本王者として見られる。恥じない演技をしたい」。真の日本男子のエースとして、初の世界の頂点に挑む。(大谷 翔太)
◆男女シングルの世界選手権代表選考 男子は3枠で全日本優勝者の鍵山が決定。2位に入った16歳の中田は年齢制限で対象外。2人目は全日本の3位(壷井)やGPファイナル上位2人(鍵山と佐藤)、全日本終了時でISU公認のシーズン最高得点の上位3人(鍵山、佐藤、三浦)から選考。3人目は世界ランキングなども加味して選出。来年3月の世界選手権は26年ミラノ五輪の枠取りをかけて開催。
◆鍵山 優真(かぎやま・ゆうま)2003年5月5日、神奈川県出身。21歳。5歳から競技を始める。19年12月の全日本選手権でジュニアながら3位。20年ユース五輪で金メダル。同年の四大陸選手権でジュニアで銅メダル。シニア転向後初出場の21年世界選手権で銀メダル、22年北京五輪で銀メダル。父は92年アルベールビル、94年リレハンメル両五輪に出場し、93年に全日本3連覇の正和さん(53)。