ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」――競馬ファン待望のグランプリ、GI有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)がいよいよ間近に迫ってきました! ここがラストランとなるはずだったドウデュースの突然の出走取消にはびっくりしま…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――競馬ファン待望のグランプリ、GI有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)がいよいよ間近に迫ってきました! ここがラストランとなるはずだったドウデュースの突然の出走取消にはびっくりしましたが、今年も好メンバーが集結して白熱したレースが繰り広げられそうです。

大西直宏(以下、大西)有馬記念は競馬ファンにとって、まさに一年の総決算となる特別なレースです。最も注目を集めていたドウデュースが出られなくなってしまったのは非常に残念ですが、今年も注目すべきポイントが豊富にあって、見逃せない一戦ですね。

 そして今年も、勢いある3歳勢の参戦、世代間の力関係、さらにジョッキーたちの高度な駆け引きなど、複雑な要素が絡み合うレース。ひと筋縄ではいかない一戦で、毎年"ドラマ"が生まれるのが、この有馬記念の醍醐味でもあります。

──現役最強馬が不在となって、活気ある3歳勢への関心が高まっているように感じます。

大西 有馬記念は近年の傾向を見ても、3歳馬が好走しやすい舞台と言えます。今年はアーバンシック(牡3歳)、ダノンデサイル(牡3歳)、レガレイラ(牝3歳)の3頭のGⅠ馬が出走。各々の個性と魅力に加え、斤量面の利点は大きいと思います。

 秋になって素質が開花した菊花賞馬のアーバンシックは当然人気になるでしょうが、ダノンデサイルとレガレイラの反撃も期待されます。

 この2頭は、前走で力を出しきれなかった印象が強いです。展開面やコース適性に泣いた感があって、ここに向けては余力十分と見ています。中山コースに替わることで、それぞれの巻き返すシーンが容易に想像できます。

 3歳勢3頭は、人気ほどの差はないと思います。

――ほか、騎手の動向もレースのカギを握っていそうです。

大西 有馬記念ではその一年で活躍してきた豪華メンバーが集うため、それまでに手綱を取ってきた有力馬が重なるトップジョッキーの"選択"も、注目ポイントのひとつとなっています。今年もクリストフ・ルメール騎手(アーバンシックに騎乗)をはじめ、名手たちがどの馬を選ぶのか、ファンの関心を集めました。

 また、単騎免許で来日しているトップジョッキー、シャフリヤール(牡6歳)に騎乗するクリスチャン・デムーロ騎手、スタニングローズ(牝5歳)の鞍上を務めるライアン・ムーア騎手らにとっては、有馬記念が最後の大一番。勝ちにいく姿勢は、一段と強まっていることでしょう。

 彼ら海外の名手たちは、大舞台ほど腕の違いを見せつけるものです。積極的な騎乗がレース全体の流れを大きく動かす可能性も考えられます。

――最後に、大西さんが気になっている穴馬を教えてください。

大西 ベラジオオペラ(牡4歳)です。


今春の大阪杯を制したベラジオオペラ

 photo by Eiichi Yamane/AFLO

 有馬記念は本来、競走馬として最も脂が乗った時期を迎える4歳馬が好走しやすいレース。そういう意味では今年、4歳勢が同馬だけ、というのは少し寂しいですね。

 現4歳世代は「世代レベルが低い」と言われてきましたが、ベラジオオペラは古馬になってからGI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)で戴冠。GI宝塚記念(6月23日/京都・芝2200m)でも3着と善戦しました。その実績から、ほかの世代と比較しても決して引けを取る存在ではありません。

 この馬の強みは先行力と小回り適性。逃げ馬不在の今年のメンバー構成なら、ハナをきることも十分に考えられます。

 そうした状況にあって、今年の中山・芝コースは馬場状態が非常に良好で、スピードが求められる馬場。12月1日に行なわれた芝2500mのレース(古馬2勝クラス)では、2分30秒2という歴代3位タイの好タイムが記録されたほどです。

 そんな速い馬場に加えて、スローな流れが予想される今年の有馬記念では、機動力を生かした先行馬が台頭しやすくなります。つまり、高速馬場でのスローペース――といった条件によって、この馬が粘り込む可能性が大きく膨らむわけです。

 ベラジオオペラは2000mがベストの馬ですが、GI日本ダービー(東京・芝2400m)でタイム差なしの4着と好走。距離への適性もすでに証明済みです。

 ということで、今回の「ヒモ穴」にはベラジオオペラを指名したいと思います。