元ソフトバンクの藤岡好明はFA加入の鶴岡慎也の人的補償で日本ハムへ ソフトバンク、日本ハム、DeNAとNPBで15年プレーし、コーチを経て独立L、今季はウエスタン・リーグに新規参入したくふうハヤテで活躍した藤岡好明投手が、Full-Coun…

元ソフトバンクの藤岡好明はFA加入の鶴岡慎也の人的補償で日本ハムへ

 ソフトバンク、日本ハム、DeNAとNPBで15年プレーし、コーチを経て独立L、今季はウエスタン・リーグに新規参入したくふうハヤテで活躍した藤岡好明投手が、Full-Countのインタビューに応じた。2013年オフにフリーエージェント(FA)でソフトバンクに加入した鶴岡慎也の人的補償として日本ハムに移籍。補償の対象となったことで真っ先に浮かんだのはショックの感情よりも、ソフトバンクファンへの「申し訳ない」との思いだった。

 2005年に大学生・社会人ドラフト3位指名でJR九州からソフトバンクに入団。1年目に62試合に登板し5勝3敗、防御率2.60。1セーブ、26ホールドと活躍。8年間で6度、30試合登板するなど貢献した。

“人的補償宣告”を受けた2013年は、6月を終えた時点で32試合に登板していた。「いいペースで投げていた。登板数はチームで1番だったと思います」。しかし、投げているうちに体調の異変を感じ始めた。最初の症状は発熱だった。「熱くらいなら、風邪だと思って頑張るけど、投げているうちに脇腹が痛くなってきて、1度ちゃんと検査しましょう、ということになりました」。

 診断結果は肝機能障害。数値が異常レベルの高さで即休養が必要と宣告された。それでも投げられないわけではないと、休むことを拒んだが「さすがに異常だから。ちゃんと休もう」と説得を受けて7月に1か月入院した。

 退院後も1か月は安静。球団はすぐに病気を公表したわけではなかったため、開幕からフル回転で投げていた救援右腕が突然“消えた”ことにファンも心配していたという。入院期間含め2か月間の完全休養となった。

 チーム合流後も実戦復帰はできず、リハビリ組でシーズンを終えた。「急にいなくなったのでファンの人も『どうしたんだろう?』となっていたと思います。自分の中ではまた福岡Yahoo! JAPANドーム(現みずほPayPayドーム)に戻ってファンの前で投げることをモチベーションにリハビリしていました」。

崩れたモチベーション「ホークスのファンの前で復帰登板」

 満員のファンの前で投げることを目標にリハビリに励むなか、迎えたオフに電話が鳴った。「俺やな、と思いました」。鶴岡のFA移籍に伴う人的補償が誰になるか注目されていた時期。ソフトバンクで実績を残していた藤岡だったが「僕が(人的補償の対象に)かからないとは思っていなかった」と感じていた。

「球団事務所に行きました。昔の話なので詳しく覚えていないけど『申し訳ないけど人的補償になりました』といった感じだったと思います」

 ソフトバンクでの8年間で255試合に登板し、50ホールドの成績を残しながらもプロテクトされる28人に入っていなかったことに「ショックとかはなかった」という。むしろ、よぎったのは「ホークスのファンの前で復帰登板ができないのか、という思いが1番でした。日本ハムに行っても福岡で投げることはできるけど、ユニホームが違う。ホークスに貢献する姿を見せたかった。それができないと思ったとき、すごく寂しい思いになりました」

 体調を崩してチームを離脱してから多くのスタッフ、同僚、ファンらに支えられてきた。そういった人々に対し、再びチームに貢献する姿を見せることを目標に頑張っていた。「恩返しをしたかったです。もう少しホークスでやらせてください、という気持ちは正直ありました。残念な思いはありましたね。ファンの皆さんにも申し訳なかったなと……」。11年経った今だから話せる胸中だった。(湯浅大 / Dai Yuasa)