全日本選手権2024プレビュー 男子シングル編 12月20日に始まるフィギュアスケートの全日本選手権・男子シングルの戦いは、GPファイナルでそれぞれ2位、3位になった鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)と佐藤駿(エームサービス/明治大学…

全日本選手権2024プレビュー 男子シングル編

 12月20日に始まるフィギュアスケートの全日本選手権・男子シングルの戦いは、GPファイナルでそれぞれ2位、3位になった鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)と佐藤駿(エームサービス/明治大学)が中心になる。ジュニア時代から同学年のライバルとして意識し合ってきたふたりだ。



GPファイナルで2位の鍵山優真(右)と3位の佐藤駿(左) photo by Kyodo News

【鍵山優真は覚悟の演技で初優勝へ】

 鍵山は昨季、ケガから復帰したシーズンで4回転ジャンプを徐々に増やす慎重な戦いぶりだった。昨季終盤の四大陸選手権と世界選手権で4回転をショートプログラム(SP)で2本、フリーで3本の構成を組み、それぞれ307.58点と309.65点を獲得した。

 一方、今季は4回転を序盤から積極的に入れた。フリーは、フリップとサルコウにトーループ2本の計4本構成。9月のロンバルディア杯では、291.54点で2位のシーズンインだった。そして、11月のNHK杯では、フリーは冒頭の4回転フリップで転倒するミスがあって目標の200点に届かなかったが、合計は300.09点(1位)と安堵する結果となった。

 だが、NHK杯から連戦で臨んだ翌週のフィンランディア杯は、SP103.97点といい滑り出しをしながらも、フリーはミスが重なり、優勝はしたものの、合計263.09点と悔しい結果。そしてGPファイナルは、SPでイリア・マリニン(アメリカ)を意識しすぎたのか、「タイミングがズレて回転をコントロールできなかった」(鍵山)と、ジャンプ着氷後にスリップするような形で転倒。93.49点での発進になった。

 フリーは、前戦でミスをした4回転フリップをしっかり決めたが、次の4回転サルコウが2回転になり終盤の連続ジャンプでもミス。フリーの得点は、ジャンプの回転不足を連発したマリニンを上回りながら、合計は281.78点で2位。優勝の機会を逸した。

 それでも鍵山は、落ちついた演技ができれば、SPは常に100点台を出す実力がある。GPファイナルのフリーでは2戦連続でミスをしていた4回転フリップを修正していたし、大崩れしたわけではなかった。宇野昌磨が昨季限りで引退した今、日本男子を牽引する自負も持っているだけに、全日本選手権初制覇に向けて相当な覚悟を持って臨んでくるはずだ。

【佐藤駿、三浦佳生は300点台に肉薄】

 鍵山を追いかける立場になった佐藤は今季、これまで苦戦していたSPを克服。ロンバルディア杯とGPシリーズの中国杯は98点台と、100点台まであと一歩のところまで来ている。フリーは、2本目の4回転フリップでミスが続いていたが、それでも合計の自己最高得点は285.88点まで伸ばしている。

 初進出だったGPファイナルでは、SPは最初の4回転ルッツで転倒し、86.28点で4位発進。フリーは4回転フリップを回転不足にとどめ、鍵山とマリニンに次ぐ184.54点を獲得。合計を270.82点にして3位と、目標にしていた表彰台獲得と納得する結果を出した。全日本でSP100点台を実現できれば、一気に合計300点へと近づきそうだ。

 ふたりを追いかけるのは、ジュニアの頃からふたりにライバル意識を燃やし合ってきた三浦佳生(オリエンタルバイオ/明治大学)だ。

 GPシリーズのスケートアメリカは、足の痛みがあるなかでも3位に入り3年連続GPファイナル進出の可能性を残したが、鍵山との対決になったNHK杯(6位)で崩れて進出を逃した。NHK杯は「トーループの練習を控えていて、やっと再開できたのは会場に入ってから」(三浦)という状況だった。

 SPの得点を見れば、スケートアメリカは99.54点、NHK杯では102.96点と自己ベストを連発し、安定してきている。フリーの自己ベストは、2023年の四大陸選手権優勝時の189.63点とポテンシャルは高い。

 今季のフリーは、しっとりした曲調の『シェルブールの雨傘』を選んでおり、しっかり滑りこなせるようになれば合計300点に肉薄し、ライバルのふたりに迫れる。NHK杯から全日本にかけての練習をどこまで活かせるか。

 世界選手権の代表争いを考えれば、審査基準のひとつであるシーズンベストスコアで鍵山と佐藤がマリニンに次ぐ2位と3位になっていて、一歩抜け出している状態。278.67点の三浦が5位で、日本選手の3番手につけている。

【ベテラン山本草太は執念を見せられるか】

 3人に続くのがシーズンスコア262.72点の山本草太(中京大学)だ。昨季の全日本選手権では287.00点で3位に入った。2年連続の世界選手権代表は逃したものの、四大陸選手権で4位になっている。

 山本は今季、9月のネーベルホルン杯で4回転3本のフリーをノーミスで滑り、自己ベストの183.72点を出してSP3位からの逆転優勝を果たしている。だが、GPシリーズは2戦とも4位で、得点もネーベルホルン杯の得点を更新できずにいる。

 世界選手権の代表になるためには、昨季の全日本のようにSP、フリーをしっかりそろえて表彰台に上がることが必須条件になってくる。勝負の世界を知り尽くしているベテランだけに、スケーティング技術の高さとともに執念も見せてほしい。

 また、これまで世界選手権に3回出場している友野一希(第一住建グループ)も、代表返り咲きのためには表彰台が必須。今季は股関節に痛みがある状態で、GPシリーズのフランス杯とフィンランディア杯では、ともにSPで表彰台圏内につけた。しかし、フリーで崩れてそれぞれ5位、6位という結果。合計も230点台と伸ばせていない。前戦から1カ月空けての全日本となるが、股関節の状態がどこまで回復しているかが上位進出へのカギになる。

 壷井達也(シスメックス)は、シニア移行の2022−2023シーズンからのGPシリーズに2試合出場していたが、今季はNHK杯の1試合のみ。NHK杯は「来シーズンへの希望が見えない本当に崖っぷちの状態で臨んだ」(壷井)と、SP、フリーともに自己ベストを出して合計251.52点で3位になった。NHK杯で得た自信を、全日本の舞台でどこまで発揮できるか。

 2022年の全日本で2位になっている島田高志郎(木下グループ)も、フランス杯は2位。上位に食い込む力を秘めている。

 世界と戦うための層を厚くするためにも、これらの選手たちに、鍵山、佐藤を突き上げるような状況をつくってもらいたい。

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