世界の変化に追いつこうと、自らも変化を続ける日本サッカー界。女子は「プロ化」へと踏み切り、男子は「秋春制」へと舵を切る。だが、その変化に直面して、数々の「大問題」が発生。先日の皇后杯を例に、サッカージャーナリスト後藤健生が日本サッカー界に…

 世界の変化に追いつこうと、自らも変化を続ける日本サッカー界。女子は「プロ化」へと踏み切り、男子は「秋春制」へと舵を切る。だが、その変化に直面して、数々の「大問題」が発生。先日の皇后杯を例に、サッカージャーナリスト後藤健生が日本サッカー界に警鐘を鳴らす!

■締めくくりだった「正月の風物詩」

 ここまでは、女子サッカーの年間スケジュールの話題だった。

 だが、男子サッカーでも、これから年間スケジュールの問題を避けて通れなくなる。というのは、2026年からJリーグも秋春制に移行することが決まっているからだ。

 ワールドカップ北中米大会が終わった後の2026年の8月にJリーグが開幕し、長いウィンターブレークをはさんで翌2027年5月まで行われる。

 では、Jリーグの日程が秋春制に変更となった場合に、天皇杯全日本選手権大会はいつ行うべきなのだろうか?

 1960年代から、天皇杯決勝は1月に行われてきた。春秋制のシーズンを終えた後、最後の締めくくりの大会として開かれていたのだ。1968年度からは決勝戦は元旦に国立競技場で開催されることが恒例となり、いわば正月の風物詩のような大会ともなっていた。

 ただ、ここ数年は旧国立競技場の解体工事や日本代表の日程の影響で、元日開催ではなく10月から12月に決勝が行われることが続き、今シーズンはとくに代表のスケジュールが入っていたわけではないのに、決勝は11月23日に行われた。

 ただ、いずれにしても春秋制のシーズンの締めくくりであることには変わりなかった。

■Jリーグ以外は「春秋制」のままの日本

 では、Jリーグが秋春制に移行した後の天皇杯は何月に決勝を行うべきなのか?

 ヨーロッパ各国のカップ戦の日程を参考にすれば、リーグ戦が終わる5月にシーズンの締めくくりとして決勝を行うのが順当だろう。

 だが、日本の場合、Jリーグ以外のリーグは春秋制のままだ。

 大学や高校のチーム、企業チームは日本の社会が4月新年度という制度を採っている間は、春秋制を変えることは難しいだろう。

 まあ、そうしたアマチュアチームが決勝に進むことはないだろうから、多くのチームにとってはむしろ都道府県予選の日程のほうが重要なのかもしれないが、天皇杯の日程はそれも含めて考えなければならない。

 そして、Jリーグにもカップ戦「JリーグYBCルヴァンカップ」がある。

 こちらも、現在はやはりリーグ戦の終盤の11月に決勝が行われるスケジュールで開催されているが、もし、秋春制移行後もリーグ戦終盤に決勝と言うスケジュールを崩さないとすると、決勝は春先の4月か5月開催ということになる。

 だが、リーグ戦の終盤、優勝争いが佳境に入る時期に2つのカップ戦を行うのは好ましくないだろう。女子のI神戸や浦和のように、3つの大会を続けて戦わなければならないチームが出てきてしまう。

■そもそも「リーグカップは必要なのか?」

 実際、現状でも3つの大会の優勝争いが続いてしまう状況はあった。

 たとえば、今シーズンのサンフレッチェ広島。9月上旬にルヴァンカップ準々決勝2試合を戦って名古屋グランパスに敗れ、同11日に天皇杯準々決勝でガンバ大阪に敗れた。ようやくカップ戦が終了したと思ったら、9月19日にはAFCチャンピオンズリーグ2が開幕し、海外遠征も含めて6試合を戦うことになった。

 つまり、9月の広島はリーグ戦を含めて4つの大会を戦ったのだ。

 そして、これはミヒャエル・スキッベ監督の考え方なのだろうが、広島はあまりターンオーバーしないでカップ戦に臨むことが多い。

 その後、広島はJ1リーグの終盤の10月から11月にかけて連敗して、首位の座を陥落。今シーズンのリーグ戦の優勝を逃してしまった。連戦の影響が大きかったことは間違いない(優勝した神戸も過密スケジュールだったが、吉田孝行監督は積極的にターンオーバーを使い、カップ戦では先発11人を入れ替えて戦うことが多かった)。

 そもそも、秋春制移行のメリットの一つとして、現行スケジュールのようなリーグ戦終盤での代表活動による中断を避けられるということが挙げられていた。

 それなら、やはりリーグ戦の終盤にカップ戦が重なる日程は避けるべきだろう。

 天皇杯はウィンターブレーク入りの直前、つまり1月に決勝を行い、ルヴァンカップ決勝はリーグ戦終盤の4月、5月に行うようにするのか、あるいは天皇杯をシーズン終了に合わせて5月開催として、ルヴァンカップは冬の間に終わらせるのか……。

 そもそも、「リーグカップは必要なのか?」という点も含めて、慎重に年間スケジュールを決めてほしいものである。

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