2024年にスタートを切った第2期エディージャパンのテストマッチでは、さまざまなタイプのSOが10番を背負った。※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(…

 2024年にスタートを切った第2期エディージャパンのテストマッチでは、さまざまなタイプのSOが10番を背負った。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

 エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が「非常に有能」と高く評価する李承信(り・すんしん/23歳/神戸スティーラーズ)を筆頭に、松田力也(30歳/トヨタヴェルブリッツ)、立川理道(35歳/スピアーズ船橋・東京ベイ)、松永拓朗(26歳/ブレイブルーパス東京)らが司令塔の役割を担った。

 しかし、アウェーで行なわれた秋のイングランド代表戦では選手のケガが重なり、CTBの選手が急遽SOでプレーする緊急事態にも陥った。そんなこともあり、ジョーンズHCは「10番を3人は必要としている。新たな10番を発見しなければならない」と話していた。


昨季のリーグワン新人賞を受賞した髙本幹也

 photo by Saito Kenji

 12月21日、いよいよ4シーズン目の「ジャパンラグビー リーグワン」が開幕する。国内最高峰のリーグから、今シーズンはどんな選手が台頭してくるのか。近い将来、桜のジャージーに袖を通すかもしれない若手の日本人10番を4人紹介したい。

 まず筆頭は、東京サンゴリアスの髙本幹也(23歳)だ。髙本は昨季、ルーキーイヤーながら強豪サンゴリアスにおいて全18試合で10番を背負った。個人としてもリーグ3位となる157得点を挙げて、文句なしのリーグワン新人賞を受賞している。

 高校2年時は大阪桐蔭を花園初優勝に導き、攻守を操る司令塔として大きな注目を浴びた。帝京大学では2年から10番を背負い、3年と4年はゲームキャプテンの役割も担って大学日本一に貢献。常に所属チームに勝利をもたらしてきた10番だ。

【兄弟そろって日本代表の可能性も】

「アタックが好きなので、自分は『超速ラグビー』は向いているんじゃないかと思います」

 そう話していた髙本を、ジョーンズHCは2度ほど招集した。しかし、その時は日本代表に定着することができなかった。

 ただ、左足からの正確なキックは大きな武器だ。ゲームコントールやタックルも年々上達している。今季から就任した小野晃征HCのもと、サンゴリアス不動の10番としてチームをリーグワン初優勝に導くことで、ジョーンズHCに強くアピールしたい。

 2シーズン連続でリーグ戦を1位通過した埼玉ワイルドナイツは、昨季もプレーオフ決勝で敗れた。しかもこのオフ、司令塔の松田がヴェルブリッツに移籍。新たな10番として期待されているのが、日本代表SO/FB山沢拓也の弟・山沢京平(26歳)だ。

 兄と同じ深谷高に進学して花園に出場したのち、高校卒業後は名門・明治大学へ。得意のキックを活かすために最初はFBで出場することが多かったが、大学3年時は田中澄憲監督(当時)に見出されて10番を背負い、大学選手権ではチームの準優勝に貢献した。

 大学卒業後に選んだチームは、兄と同じ地元の強豪ワイルドナイツ。ただ、ルーキーイヤーはケガの影響もあって試合に出ることは叶わなかった。ただ、2023年6月のニュージーランド留学で大きく成長を遂げ、昨シーズンは主にFBとして11試合に出場できた。

 そして今季は、練習試合からSOとして起用されている。パス、ラン、キックとアタックスキルに長けた選手なので、10番のポジションを兄・拓也と分け合いながら出場しそうだ。名将ロビー・ディーンズ監督も「山沢京平は成長している。10番を始めたばかりだが、責任感を持って練習に取り組んでいる」と目を細めた。

 松田が移籍したことは「あまり気にしていない」と山沢は言う。ただ、ワイルドナイツの新司令塔として王座奪還に導けば、ジョーンズHCも放っておかないはずだ。もしかしたら兄とふたり揃って日本代表で活躍する日が来るかも知れない。

【強気なゲームメイクが持ち味】

 若手10番候補の3人目は、静岡ブルーレヴズの家村健太(23歳)だ。今季は2年目ながら副キャプテンのひとりに任命された。

 千葉県出身の家村は、流通経済大柏を経て京都産業大に進学。10番や12番として4年時に大学選手権ベスト4進出に貢献し、在学中にアーリーエントリー制度でブルーレヴズの一員となった。

 1月に合流して2月末にいきなり10番を背負うと、新人らしからぬメンタリティとプレーぶりを発揮。8試合すべてでフル出場を果たし、ワイルドナイツ撃破にも大きく寄与した。パスとキックともに強気なゲームメイクが持ち味である。

 昨季も開幕から10試合連続で出場していたが、ケガによってシーズン後半は出場できず。日本代表候補合宿にも招集されたが辞退し、新人賞争いも同期の髙本に譲った。

 ただ、ケガを抱えて苦しい時期も家村のメンタルは常に前向きだ。「自分と向き合い、イチから体作りをした。どんなパフォーマンスを出せるか楽しみ」。オーストラリア出身のサム・グリーンがカテゴリA(日本滞在5季目で制限なく試合に出場可能)となったが「SOのレギュラー争いはさらに激しくなると思うので、ポジションを勝ち取りたい」と意気込んでいる。

 そして最後の4人目は、今季は初の日本一を目標に掲げる横浜イーグルスの武藤ゆらぎ(23歳)だ。

 小学校時代は父がコーチを務めるタグラグビーのチームで日本一に輝いた経験を持つ。その後は横浜ラグビースクール、東海大大阪仰星で10番としてプレーし、東海大に進学した。

 東海大では1年から10番を背負い続け、4シーズン連続で関東大学リーグ戦の優勝に寄与。2年生から3年連続でベスト15に選出されるなど、スペース感覚、ラン、スキルに長けたアタッキングなSOである。

 武藤もアーリーエントリー制度で昨季3試合に出場しており、実質ルーキーイヤーの今季もすでに練習試合で10番を背負っている。イーグルス期待のネクストスターだ。

【名将エディーのお眼鏡に適うのは...】

 元日本代表SOのベテラン田村優は、武藤についてこう絶賛する。

「向こう10年、キヤノン、そして日本代表をリードする選手です。何もないところから何かを起こせる選手で、ひらめき、才能がすごくある。キヤノンで優勝し、彼を日本でベストの10番にする。これが僕の最後の仕事です」

 対する武藤も「(田村)優さんが試合に出なくても、僕ががんばってイーグルスを優勝に導きたい」と、大先輩の期待に応えようと意気込んでいる。

 パス&ランラグビーの信奉者であるジョーンズHCは、かねてから「SOにはビジョンが必要」と強調している。このビジョンとは、相手ディフェンダーとの距離や時間がないなかで判断し、そこでスキルを発揮する能力のことだ。

「世界の選手はリーグ戦で毎週、すばらしいプレーをしている。だからリーグワンで、一貫性のあるプレーを出してほしい」(ジョーンズHC)

 名将エディーのお眼鏡に適い、2025年の日本代表に呼ばれる若手の新10番は誰になるのか──。