6年ぶりにガールズグランプリ出場を決めた尾崎睦  photo by Takahashi Manabu ガールズケイリン年間最大のビッグレース「ガールズグランプリ 2024」の開催が、12月29日(日)に迫っている。今年のGⅠ開催優勝者と賞金…


6年ぶりにガールズグランプリ出場を決めた尾崎睦

  photo by Takahashi Manabu

 ガールズケイリン年間最大のビッグレース「ガールズグランプリ 2024」の開催が、12月29日(日)に迫っている。今年のGⅠ開催優勝者と賞金ランキング上位者のみに出場権が与えられるこの最高峰のレースに賞金ランキング2位で駒を進めたのが、尾崎睦(神奈川・108期)だ。今年ここまで54勝を挙げ好調を維持する尾崎に、大一番への意気込みと展望を聞いた。

【GⅠ創設で「取り組みやすい」環境に】

──2024年も大詰めですが、今年はどんな1年でしたか。

 今年はGⅠをメインに走ってきましたが、前半に立て続けにあったGⅠ(オールガールズクラシック、パールカップ)で2回とも決勝に乗れたことでいいスタートを切れたかなと思います。

──賞金ランキング2位の好成績となり、自身でも好調さを感じているのではないでしょうか。

 そうですね。一番の目標がグランプリだったので、まずは出場が決まってよかったです。

──尾崎選手は普段のレースとGⅠのようなビッグレースとの違いをどのように感じていますか。

 スピード感が違いますね。レースの走破タイムも普段とは違いますし、レベルが高い環境でやらせてもらっている感覚があります。個人的には大きなレースに照準を合わせて毎日やって行く、という取り組み方が好きなので、(昨年から)GⅠ開催ができたのはよかったと思っています。

──その取り組みとは、メンタル面での調整か、フィジカル面の調整か、どちらでしょうか。

 両方です。2年前までは、グランプリに出るためには普段の開催でコツコツと賞金を積み重ねるしかありませんでしたが、それだとモチベーションとコンディションを高いところで維持しながら、少し休んでまた高いところまで持っていくというやり方になって、その流れが苦手だったんです。ずっと張り詰めた状態で1年を戦うのもいい経験でしたが、今のほうが取り組みやすいですね。

──ビッグレースに向けて逆算していくほうがやりやすいと。

 そうですね。普段の開催でも「GⅠに向けて、今は何をしなければいけないのか」を考えて走れたのがよかったです。


ビーチバレーで全国優勝も経験した尾崎。172cmの体躯も大きな武器photo by Takahashi Manabu

「結果にこだわらない姿勢」が好結果へ】

──その成果もあってか、今年はGⅠ開催で3回とも決勝へ進み、年間54勝を記録しました。好成績の要因をどう分析していますか。

 昨年まではレースで「負けちゃいけない」という意識が強く、気持ちの面でギリギリの戦いでした。走るからには勝たなければいけないのは当然ですが、今年からは結果だけではなく内容を重視し、GⅠに向けた取り組みをしっかり発揮できるよう走れるようになりました。

 気持ちの作り方や体の持っていき方ひとつひとつを丁寧に取り組み、ひと開催ごとにいろんなことを試して、その結果がレースにどう表われたのか。そしてまた次に何が必要かを丁寧に見極められるようになったと思います。

──結果にこだわりすぎないことがいい結果を生み出したのですね。

 前までは「結果、結果」という考えでしたが、自分のやっていることを丁寧に出しきろうという姿勢がよかったかもしれません。

──では、GⅠという目標ができたことも含めて、この2年間は尾崎選手にとって大きな変化を迎えた時期になったのではないでしょうか。

 そうですね。2年前は(賞金ランキングで)グランプリ出場圏内にいたにも関わらず、2度の失格によって選考外になってしまい、グランプリに出場できなかったんです。直後はショックですごく落ち込み、正直に言って気持ちも切れてしまっていました。それでも周りの選手や師匠、家族が声をかけてくれましたし、開催に行けばファンのみなさんが変わらずに応援してくださるのを見て「もう1回頑張らないといけないな」と思っていたところにGⅠができたんです。

 周囲のみなさんに支えてもらって立ち直り、GⅠという存在に背中を押してもらった感じと言いましょうか。そこからは今まで感じたことのないような精神状態でいられるようになりました。競輪選手になって、今が一番いい状態だと思います。

──悔しい経験が今の糧になっているのですね。

 当時は本当に落ち込みました。あの時は「こんなことがあるなんて、神様はいないのかな」と下を向いてばかりでしたが、周りの方のおかげでしっかりと向き合えて、少しずつ前に進んでこられました。今の時点でもいい経験になっていますが、グランプリで優勝することで本当に「あの時があったから」と言えるようになると思うので、頑張りたいです。


過去最高の状態という尾崎。好結果が期待される

  photo by Takahashi Manabu

【さまざまな色の静岡競輪場を見てきた】

──グランプリ出場は6年ぶりとなりますが、今の気持ちはいかがでしょうか。

 練習にも一生懸命取り組めていますし、周りの方からアドバイスや声掛けもいただいていて、やっぱり特別な舞台だと再確認しています。自分の中でも夢の舞台なので、とてもワクワクしていますね。

──奇しくも前回出場した2018年のグランプリも静岡競輪場での開催でしたが、思い出に残っていることはありますか。

 2018年のグランプリではレース中に(展開が)一瞬緩んだタイミングがあったんです。レース前にいくつか考えていた展開パターンのひとつだったにも関わらず、事前にやろうと思っていた走りができなかったことをよく覚えています。

──それは何が原因だったのでしょうか。

 勇気がなかったんです。そういう場面こそ日々の積み重ねが重要で、大きな舞台になるほど積み重ねてきたことが自分の力に、勇気として現われると思います。前回の静岡のグランプリは「ああすればよかった」というレースだったので、今回はそうならないよう、毎日を後悔なく「今日もしっかりやりきった」と言えるように取り組んで、ここだと思った瞬間にしっかり行ける体とメンタルを準備したいです。

──静岡での悔しい思いを静岡で晴らすチャンスになりますね。

 静岡競輪場は2018年のグランプリもそうですが、2022年にグランプリ選考外となる2回目の失格になってしまった場所でもあるんです。その失格でグランプリに出られないとわかって敢闘門の横で泣いていた記憶が強いですね。

 優勝した卒業記念も静岡だったので何かと縁のある場所で、グランプリに出られたことや失格になったことなど、いろんな"色"の静岡を見てきました。今度はうれしい思い出にしたいですし、前回が悪いことがあったので、次はいいことがあるような気がしています(笑)。

──GⅠ開催とは違ってグランプリは一発勝負ですが、普段の開催と比べていかがでしょうか。

 パーンと走ってパーンと決まるので、わかりやすいかなとは思います。好きって言えるようになりたいですね。

──本番に向けて意識しているポイントはどこでしょうか。

 競輪祭でナショナルチームの選手と走って、やっぱりタテ脚(前に進む力)のすごさは感じました。自分にももっとトップスピード、爆発力がほしいなと思ったので、そこに取り組んでいます。本番でその成果を出したいですね。

──最後にグランプリへの意気込みを聞かせてください。

 6年ぶりのグランプリになりますが、6年間ずっと出たいと思い続けてきた夢の舞台です。しっかり一瞬一瞬を噛みしめて、最初にゴールできるよう頑張ります。

【Profile】
尾崎睦(おざき・むつみ)
1985年4月10日生まれ、神奈川県出身。小学3年からバレーボールを始め、大学でビーチバレーに転身。学生日本代表に選ばれ、大学卒業後に湘南ベルマーレに所属。国内大会で優勝した実績を持つ。2014年に日本競輪学校(現日本競輪選手養成所)に入学し、在校成績1位で卒業する。デビュー2年目の2016年にガールズグランプリに初出場。2017年、2018年も出場を果たす。2024年11月、獲得賞金ランキング2位で6年ぶり4回目のガールズグランプリ出場権を獲得した。