プロボクシングの元WBC女子世界フライ級王者で、性別適合手術や戸籍変更を経て男子でのリング復帰を目指していた真道ゴー(37)=グリーンツダ=が17日、グラブを置く決意を示した。 真道は2017年に女子ボクサーとしては引退し、22年に男子で…

 プロボクシングの元WBC女子世界フライ級王者で、性別適合手術や戸籍変更を経て男子でのリング復帰を目指していた真道ゴー(37)=グリーンツダ=が17日、グラブを置く決意を示した。

 真道は2017年に女子ボクサーとしては引退し、22年に男子でのプロ復帰の意思を表明。日本ボクシングコミッション(JBC)から男子でのプロテスト受験は認められず、昨年12月、公式試合にはカウントされない準公式試合に臨んだ。

 結果は、バンタム級3ラウンドで男子プロの石橋克之(姫路木下)にダウンを奪われ、0―3の判定負け。8オンスのグラブ着用でヘッドギアなしと、ほぼ公式試合と同じ形で行われた“男子初戦”で当時通算2勝2敗1分けの石橋を相手に、スピードでは上回ったが、男子のパンチを被弾した際の不安も残した。

 試合後、進退については「家族と相談して決めたい」と保留。今年1月には、再び男子プロテスト受験をJBCに打診するも、「安全管理上問題を生じる恐れがあるため、現時点では認められない」との回答が出されていた。「引き続き準公式試合でボクサーとしての活動を続ける道」や「海外でのプロ転向を目指す道」、はたまた「現役引退」。3つの選択肢の前に胸が揺れ動き、結論が出せない日々が続いた。

 約1年間悩み抜いた末に迎えたこの日、大阪市内の所属ジムで「もし私自身があと5、6年若かったらまだまだ頑張るぞ、とリングに上がることを決断していたかもしれない。(しかし、37歳を迎えた今)プロとして、最高のパフォーマンスで男性と戦う自身がないというのが一番の要因」と“2度目の引退”を決めた理由を説明。左肩の状態に不安があることも踏まえ、「リングを降りることに後悔はない」と晴れやかな表情を浮かべた。

 同ジムの本石昌也会長は「トランスジェンダーとして、結果は男子プロボクサーとしてのプロデビューはかなわなかったが、誰も挑まないところに真道ゴーは挑んだ。(同じ境遇のボクサーへの)道筋を残すことができた」と、唯一無二の歩みをねぎらった。

 今後については「未定」としながら、「(地元の)和歌山の子たちにボクシングを教えていくのもひとつですし、障がいを持ってる子や不登校の子の支援活動ができれば」と説明。「自分自身も少数派の人間として、自分のやりたいことをさせてもらって、顔を上げながら自分の道を進んできた。そういった存在として、子どもたちに『生まれてきて良かった』って思わせられる(活動がしたい)」と力を込めた。

 「自分の道を切り開いてくれた、何ものにも代えられないもの。ボクシングがなければ今の自分はない。私自身のやりたいと思う人生を、表現させてくれた」。結果的に男女両方の性ではプロボクサーになれなかった真道。だが、日本ボクシング界において画期的で勇敢な挑戦だった。

 ◆真道ゴー(しんどう・ごー)本名・橋本浩(ごう)、旧名は橋本めぐみ。1987年7月18日、和歌山市生まれ。37歳。小学4年からバスケットボールを始め、和歌山北高で国体出場。天理大中退。ボクシングに転向し、2008年プロデビュー。13年にWBC女子世界フライ級王座を獲得し、2度防衛。17年に引退。女子通算成績は16勝(11KO)4敗。身長168センチ。右ボクサーファイター。家族は妻と2男2女。