12月15日の松井大輔引退試合には、本田圭佑と長く共闘した吉田麻也(LAギャラクシー)、香川真司(C大阪)の両現役選手も参戦。スタートからピッチに立ち、精力的なプレーを見せた。 吉田は日本代表ではちょうど入れ替わりでコンビを組む機会のなか…

 12月15日の松井大輔引退試合には、本田圭佑と長く共闘した吉田麻也(LAギャラクシー)、香川真司(C大阪)の両現役選手も参戦。スタートからピッチに立ち、精力的なプレーを見せた。

 吉田は日本代表ではちょうど入れ替わりでコンビを組む機会のなかった先輩・中澤佑二と2トップを形成。「なかなか一緒にできない選手たちと同じピッチに立ってプレーするのは感慨深いものがありましたね」と嬉しそうに話していた。
 松井とは2011年アジアカップ(カタール)で短い時間を過ごしただけ。しかも、松井が2戦目のシリア戦で負傷してそのまま離脱してしまったため、共闘時間はかなり限られている
「思い出話? 全然ないっすね。正直言って、よく覚えてない」と吉田は苦笑していたが、代表デビューの大会ということで、本人もいっぱいいっぱいだったのだろう。
 あれから14年近い月日が経過し、吉田は2014年ブラジル・2018年ロシア・2022年カタールの3度のワールドカップ(W杯)に出場。カタールではキャプテンを務め、そこからは代表を離れる形になっている。当時所属していたドイツのシャルケを2023年夏に退団。同じタイミングで未知なる国・アメリカのメジャーリーグ・サッカー(MLS)に身を投じ、今年はMLSカップ制覇という大きな成果を挙げ、日本に凱旋する形になった。
「自分のモチベーションという意味でもプレッシャーをかけて新たなチャレンジをして、分かりやすい結果が出た。今まで自分はチームのタイトルがなかったんで、それを取れてよかった」と本人も素直に喜びを口にした。

■「ビジネススケールが全然違う」

 今回の帰国は1週間程度。すでに日本サッカー協会(JFA)の宮本恒靖会長、Jリーグの野々村芳和チェアマンと面会し、MLSで得たものをフィードバックしたという。
「MLSは欧州とも日本とも違う形のビジネススキームがあるので、ピッチ内外で勉強になります。マーケティングや演出もそう。放送はアップルTVが独占してますけど、放映権を売って小さな小遣い稼ぎというのはしていない。ビジネススケールが全然違うので、日本もどんどん離されるんじゃないかという危機感はありますね。
 それにMLSは6週間は必ず全チームが休むという規定もある。僕もこの後、旅行に行きますけど、選手はすごく守られていますね。そこも宮本会長や野々村チェアマンにしましたけど、僕に経験や知見が溜まることは日本サッカーにとってプラスになると思います」
 そうやってフットボール本題以外に目を向け、学んでいるのが吉田らしいところ。目下、日本プロサッカー選手会会長を務め、いずれはJFAやJリーグの幹部になるのではないかと言われる人材は視野が広いのだ。
 2026年北中米W杯に向かっている日本代表復帰については「ないでしょう」と苦笑していたが、開催国でプレーする大ベテランを有効活用しないのはやはりもったいない。森保一監督が彼の今のパフォーマンスをどう評価しているのか聞いてみたいものである。

■香川真司が松井大輔からもらった言葉

 もう1人の香川真司も今季はJ1・10試合出場1ゴールという不本意な結果に終わった。「ピッチに立つ元代表10番の姿を見たのは久しぶり」と感じた人も多かっただろう。
「この1年を振り返った時に思うところは沢山あった。それを自分の中でしっかりと考えて次の準備をしたい」と本人も悔しさをにじませつつ、来季以降を見据えていた。
 不完全燃焼感の残るシーズンだったがゆえに、久しぶりに代表時代の面々と再会したこの引退試合はいい刺激になったのではないか。香川はスタートから遠藤保仁(G大阪トップコーチ)とボランチを形成。代表時代の香川は2列目を主戦場にしていたから、偉大な先輩とボランチを組む機会はなかった。見る側にとっても「夢のコンビ」だったのは確かだ。
「ボランチで試合を組み立ててコントロールする能力はヤットさんには叶わない。やっぱりダブルボランチは長谷部(誠=日本代表コーチ)さんとヤットさんが”鉄板”じゃないですか。むしろ指導を受けてみたい気持ちの方が強いです」と意欲を示していた。
 一方で松井とも短時間だったが、ともにプレーした。松井と香川は岡田武史監督(FC今治会長)時代の代表ではつねにギリギリの立ち位置。南アW杯出場を決めた2009年6月のウズベキスタン戦(タシケント)では2人揃ってスタンドから試合を見つめることになった。
「当時、松井さんには飛行機で隣になった時なんかに『海外に行けるなら早く行って方がいいよ』って話をしてもらった。あの時の自分は若かったし、海外でプレーしている選手が少なかったので、あの一言はすごく覚えている。海外を志す気持ちが芽生えました」と20歳の頃の情熱を思い出したという。
 サッカーへの飽くなき向上心は年齢を重ねた今も持ち続けられるはず。2024年の屈辱を糧に香川真司はどんなキャリアを踏み出すのか。セレッソに残留するか否かを含め、その動向が気になる。
 吉田と香川はまだまだピッチ上で活躍できるはず。30代後半の底力を遺憾なく発揮することを松井も強く望んでいるに違いない。
(取材・文/元川悦子)

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