36歳にして、初めてのチャレンジ──。 東芝ブレイブルーパス東京のリーチ マイケルである。 昨シーズンのリーグワンで、東芝は14シーズンぶりとなる王座に就いた。2011年に東芝入りしたリーチにとって、初のタイトル獲得だった。「優勝して迎え…
36歳にして、初めてのチャレンジ──。
東芝ブレイブルーパス東京のリーチ マイケルである。
昨シーズンのリーグワンで、東芝は14シーズンぶりとなる王座に就いた。2011年に東芝入りしたリーチにとって、初のタイトル獲得だった。
「優勝して迎えるシーズンは経験したことがない。初めてです。これまでと変わらずにまっさらな状態で、フレッシュにスタートすることが大事かなと思う」
みんなに愛されているリーチマイケル
photo by ©TOSHIBA BRAVE LUPUS
プレッシャーは「もちろんある」と言う。だからといって、身体に無駄な力が入ることはなく、気持ちが受け身になることもない。リーチも、チームメイトも、である。
「もう一度チャンピオントロフィーにチャレンジする、という気持ちでやっている。追いかける立場のほうが、力が出ます」
リーグワンの各チームには、ワールドカップ2連覇の南アフリカや大国ニュージーランド、あるいはティア1のオーストラリアやスコットランドなどから、代表選手が数多く参戦している。ディビジョン1の12チームをどのように組合せても、インターナショナルレベルのバトルが繰り広げられるのだ。
「世界的な選手が増えていて、レベルは毎シーズン上がっている。プレーオフに出場するトップ6の争いは、ものすごくタイトになると思う。そのなかで、自分たちのラグビーをやり抜くというところは変わらない。メンタルの波をできるだけ作らずに、一貫性を持ってやり続けることが大事になる。個人的にはすごく楽しみですね」
レギュラーシーズンの試合数が「16」から「18」に増えた。一方で、バイウィークと呼ばれる休養週は増えていない。日程的にもタイトなのだ。
それだけに、リーチは「1試合ずつです」と話す。
「あまり先を見ず、1試合1試合いい準備をして勝ちにこだわる。しっかりと勝ちきる。それと、シーズンを通して規律を高く。プレーオフになると、規律の高いチームが有利になるし」
【プレシーズンマッチで大きな手応え】
今シーズンも引き続きキャプテンを務める。8月にトッド・ブラックアダーHC(ヘッドコーチ)から「どうする?」と打診され、「やりたい」と答えた。
「連覇するのはまた違う難しさがあって、新しいチャレンジをぜひやりたいなと思いました。まあ、去年のシーズンからそのまま続き、という感じです。自分の身体とメンタルを整えて、キャプテンとしてチームを進化させていきたいです」
今年もキャプテンとして東芝を牽引する
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チームの仕上がりには、手応えを掴んでいる。昨シーズンのプレーオフ決勝で埼玉パナソニックワイルドナイツとの激闘を制したことが、一人ひとりの競争意欲を猛烈に刺激した。
「リーグワン決勝の翌日にもう、練習をしている選手がいた。なかなか試合に絡めなかった選手、決勝に出場しなかった選手から、とにかく試合に出たいという意欲をすごく感じる。
綺麗なことを言うのではなく、本気で試合に出るために、チームがよくなるために──という姿勢で、みんながハードワークしている。プレシーズンマッチでは若手が多く試合に出て、戦力になってくれる選手が増えました」
昨シーズンのチームを牽引したニュージーランド代表のSOリッチー・モウンガ、FLシャノン・フリゼルも健在だ。2024年の日本代表では、昨年のワールドカップに出場したLOワーナー・ディアンズとWTBジョネ・ナイカブラに加え、HO原田衛とFB松永拓朗がテストマッチに出場した。PR木村星南も、出場はなかったものの日本代表に招集されている。
※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)
リーチは「それはもう、メチャクチャいい影響がある」と、言葉に力を込める。
「インターナショナルな経験はマネができないもので、強度もプレッシャーもまったく違う。日本代表から戻ってきた彼らが、東芝のレベルをひとつ上げてくれる。これは大きい。選手は高いレベルに合わせようとするもので、オールブラックスのふたりもいるし、チームのスタンダードがより一層上がっていくと思う」
【LOのポジションはすごく興味がある】
自身は6月から7月まで、日本代表のテストマッチに3試合出場した。8月から9月にかけて開催されたパシフィックネーションズカップは、エディー・ジョーンズHCの「35歳以上の選手は休ませる」との判断でチームを離れた。その後も左肩の痛みなどから合流を回避し、じっくりとコンディションを整えてきた。
開幕戦でどんなプレーを見せてくれるのか
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11月30日のプレシーズンマッチで、実戦に復帰した。この試合で40分プレーし、翌週は出場時間を60分強に伸ばした。経験豊富な日本ラグビーの"アイコン"は、12月22日の横浜キヤノンイーグルスとの開幕戦に照準を合わせている。
「試合の感覚は戻ってきています。開幕戦にはフルパワーでできると思う。東芝はチャンピンチームということで、どの相手も果敢に挑んでくる。相手はひとつランクが上がった状態で挑んでくるので、それも踏まえて適応しないといけない」
成長意欲は旺盛だ。スマートウォッチを活用して日常から体調管理を徹底し、全体練習後も個人の課題に取り組む。その存在がチームを引き締める。
また、リーチは新たなポジションにもチャレンジしている。7月の日本代表対ジョージア代表戦で、4番(LO)を着けて先発出場したのだ。
「東芝のプレシーズンの試合でも、『LOで出るかも』という話はちょっとあったんです。LOにはすごく興味がありますし、プレーするのを楽しみにしています」
国際舞台への渇望もある。今秋のシリーズは欠場した日本代表復帰を問われると、「もちろん」と即答した。思いはひとつでブレがないから、それ以上の言葉はいらない。そのためにも、リーグワンで好パフォーマンスを示していくのだ。
今シーズンのリーグワンに挑む大きなモチベーションが、もうひとつある。
もう一度、見たい景色がある。2024年5月26日に行なわれた2023-24シーズンのプレーオフ決勝が、記憶に強く焼きつけられているのだ。
「シーズンの最後に国立競技場を満員にして、また優勝したい。あの光景は、ホントに忘れられないので」
【リーグ連覇を達成したら特大BBQを企画】
ファンの声援に応えたい、との使命感もある。
「リーグワン優勝という結果を残したことで、ファンがこのチームをもっと愛してくれるようになった。それ以前も愛してくれていたけど、ファンの人たちの熱がもっと上がったと感じる」
チームにとっても自身にとっても、初めてのチャレンジが多い今シーズンをどのように締めくくるのか、そのアイデアもある。特大スケールのバーベキューパーティーだ。
「チーム主催でファンの人たちも招待して。豚の丸焼きを50匹ぐらい用意して、みんなでビールをたくさん飲んで。そんなことができたらいいな、と」
チームのターゲットは明確である。自身が果たすべき役割も理解している。あとは、グラウンドで身体をぶつけるだけだ。鋭いタックルを突き刺し、ボールをキャリーし、唯一無二の存在感を発揮する。
「接点無双」を自負する東芝ブレイブルーパス東京を、今シーズンもリーチ マイケルが牽引する。