10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた9選手(1~5位・育成1~4位)の連載をお届け。今回は育成ドラフト1位・工藤泰成投手(23)=四国ILp徳島=の野球人生を変えたウエートトレーニングと食事に迫る。  ◇  ◇ 両親の「大きくなって…

 10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた9選手(1~5位・育成1~4位)の連載をお届け。今回は育成ドラフト1位・工藤泰成投手(23)=四国ILp徳島=の野球人生を変えたウエートトレーニングと食事に迫る。

  ◇  ◇

 両親の「大きくなってほしい」という願いから「泰成」と名付けられた。姉、兄のいる末っ子で、父・一範さん(53)は「買い物に行ってほしいものがあると、床に寝そべって手足ばたばたさせて泣きわめく子でした」と明かす。

 野球経験者の父の影響で、秋田東小3年時に野球人生をスタートさせた。捕手、投手、三塁手を兼任したが、能代一中の軟式野球部ではチーム事情で3年時から投手に専念した。ただ、部員が少なく、1回戦負けすることもあり、「弱小だったので、熱が冷めました」と引退後は野球をやめようと思った。

 当時は遊びでバドミントンにハマり、明桜の面接でも「バドミントン部に入りたい」と宣言。しかし、父の一言にはっとさせられた。「試合に出られなくてもいいから野球3年間やってみな」。野球への熱は完全には冷めていなかった。ためらうことなく、野球部に入部を決めた。

 中学の時から甲子園には憧れていたが、高校3年間で土を踏むことはできなかった。2年の夏は秋田大会決勝で金足農の吉田輝星に完封負け。3年の夏の決勝では自身が登板して延長十一回裏にサヨナラ負けを喫した。幼い頃から夢だったプロ野球選手に、この時点でなれる自信はなかった。

 野球人生を変えたのがウエートトレーニングだった。東京国際大2年の冬。「球速もフィジカルもなかったから何とかしないと」と初めて本格的に向き合った。毎日練習後の2時間、筋肥大や瞬発系のトレーニングを敢行。元々3食だった食事も改善し、2時間置きにおにぎりの間食で一日8合を平らげた。

 筋トレ&食トレにより1月中旬からの約2カ月で体重は65キロから80キロに増量。高3では142キロだった最高球速も153キロと驚異の11キロアップに成功した。しかし4年時には「満足しちゃっていた自分がいた」とウエートの量も減って伸び悩み、プロ志望届を提出するも指名漏れ。後悔はあったが、落ち込む暇はなかった。

 10分もたたないうちに父に電話し、「徳島行くから」と宣言。「1年でプロに行く」と決めて入団した四国ILp・徳島では同学年の中込陽翔(楽天ドラフト3位)との出会いが運命を変えた。ボディーメークの大会に出場したこともある中込からトレーニング、食事の一から百まで教わった。「元々やっていたことと全然違った」と工藤。トレーニングは体の部位ごとに分けてローテーション。毎日2時間鍛え抜いた。

 一番変わったのは食事面だ。以前は「プロテインだけ飲んでおけばいい」と思っていたが、中込の教えで鶏胸肉とブロッコリーを4食食べるようになった。「焼き肉誘った時も『行かない』」と断られました」と父・一範さん。大学時代と比にならない徹底した体作りにより5カ月で球速は6キロアップし、8月に159キロを計測。8勝で最多勝のタイトルにも輝いた。

 そして宣言通り1年でプロ入りを果たしたが、「支配下を目指していたのでうれしさよりも悔しさが大きかった」と明かした。だからこそ、より燃えるものがある。「支配下になるためにもっと頑張れる。はい上がる気持ちは誰よりもある」。目指すのは「息の長い剛腕」。プロの世界でも有言実行し、大成していく。

 【アラカルト】

 ◆名前 工藤泰成(くどう・たいせい)

 ◆生まれ 2001年11月19日

 ◆出身 秋田県

 ◆家族構成 父、母、姉、兄

 ◆サイズ 177センチ、82キロ

 ◆血液型 A

 ◆投打 右投げ左打ち

 ◆球歴 秋田東小3年から野球を始め、能代一中では軟式野球部でプレーし、3年から本格的に投手に。明桜では2年秋に背番号18でベンチ入り。東京国際大を経て、今年から四国ILp・徳島でプレーした。

 ◆球種 スライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップ、フォーク

 ◆50メートル走 6秒0

 ◆遠投 120メートル

 ◆趣味 筋トレ、登山、サウナ

 ◆好きな食べ物 サラダチキン、忍者めし(グミ)

 ◆好きな芸能人 西野カナ。特に好きな曲は「君って」、「このままで」

 ◆座右の銘 今に生きる

 ◆ペット ペキチワという犬種のメス。名前は「ぷーちゃん」。