12月8日のガンバ大阪戦でキャプテン・佐々木翔を筆頭にメンバーの多くが流した大粒の涙。それをいかにして来季につなげるかが今のサンフレッチェ広島の重要命題だ。「アオさん(青山敏弘)も泣けば強くなるって思ってるわけじゃないですし、そこからいか…

 12月8日のガンバ大阪戦でキャプテン・佐々木翔を筆頭にメンバーの多くが流した大粒の涙。それをいかにして来季につなげるかが今のサンフレッチェ広島の重要命題だ。

「アオさん(青山敏弘)も泣けば強くなるって思ってるわけじゃないですし、そこからいかに強い気持ちを持って日頃からやっていけるか。それがチームを強くし、個々の能力を高くすることにつながる。アオさんは来年選手としてはいないんですけど、それを僕らが引き継いでいる。それをしっかり体現して、また歴史を作っていければいいと思います」と佐々木も新たな決意を口にした。
 そのためにも、ミヒャエル・スキッベ監督体制4年目となる2025年はより分厚い選手層が求められる。
「来季もたくさnの大会に参加することになります。Jリーグ、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)2、YBCルヴァンカップ天皇杯。秋以降にはACLエリートが入ってくる。だからこそ、本当に誰が出てもメンバーがが落ちないチームを作り上げていく必要があると思います」と指揮官も強調していたが、まさにそれが広島の最重要命題と言えるだろう。

■守備陣の若返りは

 実際、今季も大橋祐紀(ブラックバーン)、川村拓夢(ザルツブルク)、野津田岳人(パトゥム)が夏に欧州移籍し、チーム力が一時的に低下した。主軸を担う荒木隼人のケガ、エゼキエウやピエロス・ソティリウら助っ人たちの離脱とアクシデントも多く、1人2人と戦力が低下するたびに足踏み状態に陥る傾向が強かった。
 やはりそういうチームがタイトルを手にするのは難しい。それは3年連続でJ1・3位以上の成績をキープしてきた集団だからこそ、より痛感させられるところだ。
 そういった現状を踏まえ、2025年を見通すと、まず頭から青山の6番を引き継ぐ川辺駿、トルガイ・アルスラン、ゴンサロ・パシエンシアの3人を使えるのは朗報と言える。今季苦境を強いられた満田誠も来季はスタートから一気に力を発揮するだろうし、成長株の中野就斗や中島洋太朗らもより一層の存在感を発揮するはずだ。
 しかしながら、有望な若手はつねに海外移籍予備軍となり得る。中野などはその筆頭で、近い将来、引き抜かれないとも限らない。最終ラインと右ウイングバックをマルチにこなせて、点も取れる彼のような人材が抜けたら、大きなダメージになりかねない。クラブ側も若手の越道草太の成長を加速させるなど、対策を講じる必要がある。若手の引き上げは広島の未来を大きく左右する重大事。そこはより注力すべきだ。
 守備陣も30代の佐々木、塩谷司らへの依存が高いだけに、若返りも視野に入れなければならない。今年ケガでシーズンを棒に振った山崎大地が来季は戻ってくるだろうが、足りないところは補強も考えていくしかない。

■アタッカーの再編

 そして最も重要なアタッカーのところも再編が求められそうだ。チャンスを決め切るという部分は広島がもう一段階突き抜けるためにマスト。シーズン9点を奪った加藤も大橋が抜けた後のエースとして奮闘したが、決定力を研ぎ澄ませるべきところは少なくないし、パシエンシア、アルスランもフルシーズンの爆発が期待される。10代の井上愛簾ら可能性あるタレントもいるだけに、そういう選手をうまく使いながら、ゴール数を増やしていくことが、タイトルへの近道と言っていい。
「広島のこれから? もちろん可能性がありますよ。ただ、やっぱり日頃からいかに高い意識持ってやれるかっていうところが本当に大事になる。僕は年長者だし、だいぶ上の方になるんで、引っ張っていきながら、声かけながらやっていきたい。もっともっとこのチームが強くなるようにしていきたいです」と佐々木は誓ったが、本当に青山・柏好文が示してきた姿勢をチーム全体に浸透させることが肝要だ。
 彼らの涙が1年後に笑顔に変わるか否かはここからの取り組み次第。スキッベ監督にはこれまで以上の的確なマネージメントを期待したい。
(取材・文/元川悦子)

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