9月20日、水曜日――。日本で2019年に開催される第9回ラグビーワールドカップの開幕まで、ちょうどあと2年となる。代表合宿に初めて招集されたニュージーランド出身のアンドレ・テイラー 日本代表経験もあるニュージーランド出身のジェイミー…

 9月20日、水曜日――。日本で2019年に開催される第9回ラグビーワールドカップの開幕まで、ちょうどあと2年となる。



代表合宿に初めて招集されたニュージーランド出身のアンドレ・テイラー

 日本代表経験もあるニュージーランド出身のジェイミー・ジョセフがラグビー日本代表(世界ランキング11位)の指揮官に就任したのが1年前。今後はある程度メンバーを固定しながら、11月にはオーストラリア(5位)とフランス(8位)、来年には「オールブラックス」ことニュージーランド(1位)、そしてイングランド(2位)ら世界の強豪と戦い、強化の歩みを進めていく予定だ。

 ただ、南アフリカからの白星を含む予選プールで3勝を挙げた2015年大会がそうだったように、2019年のW杯で2015年の9位を上回る「ベスト8以上」を達成するには、やはりFL(フランカー)リーチ マイケル(東芝)、No.8(ナンバーエイト)アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)といった外国出身者や外国人選手の助けも必要となるだろう。

 エディー・ジャパン時代も、特にFW(フォワード)ではラインアウトや空中戦の要となるLO(ロック)やFL、No.8といった第3列、BK(バックス)でもっともパワーが必要なアウトサイドCTB(センター)は外国出身選手の力を借りた。逆に言えば、世界の強豪と互角に戦うために、これらのポジションには対抗しうる日本人選手が少ないのが実状である。

 そこで今回は、すでに日本代表として活躍している選手ではなく、今後、桜のジャージーを着る可能性のある外国出身選手や外国人選手を紹介したい。

 その前に改めて押さえておきたいのは、ラグビーはオリンピックのような「国籍主義」ではなく「所属協会主義」なので、ある国や地域の協会に所属し、3年居住してプレーを続ければ、その国や地域の代表選手になることが可能となる(ただし2020年12月31日より居住年数が3年から5年に延長される)。他にも祖父母や両親のいずれかひとりがその国や地域出身者、その国や地域で生まれた場合でも同様だ。

 まずは、11月の国際試合(テストマッチ)に向けた代表合宿に新たに招集された選手を3人紹介したい。もちろん、この3人は上記の条件をクリアしており、すぐに日本代表としてプレーすることが可能だ。「トップリーグの第4節が終わり、気に入ったプレーをしていた選手や注目していた選手を呼んだ」(ジョセフHC)

 ひとり目はニュージーランド出身のFB(フルバック)アンドレ・テイラー(29歳)。2012年にハリケーンズで10トライを挙げてスーパーラグビーでトライ王に輝いたものの、オールブラックスから落選して物議を醸したほどの人材だ。トライの嗅覚はもちろん、ジェイミー・ジャパンに欠かせないカウンターアタックの能力が高く、その武器は対戦する強豪国にとって大きな脅威となるだろう。

 昨年まで3年間、近鉄に所属し、今シーズンから宗像サニックスに在籍。日本でのプレーにこだわり続けているのは、W杯に出場するためだ。FBだけでなくWTB(ウィング)でもCTBでもプレーできる器用さもあり、日本代表のBKメンバーに深みを持たせることができるだろう。テイラーとWTBの山田章仁、福岡堅樹(ともにパナソニック)、松島幸太朗(サントリー)、レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ)といったアウトサイドBKのラインナップは見ている者の心を魅了するはずだ。

「オールブラックスには入れなかったけど、(日本代表という)新しい挑戦にワクワクしています。2019年のW杯出場が目標だけど、みんな素晴らしい選手ばかりだから、11月のテストマッチに出るためにまずはハードワークしないといけない」(テイラー)

 ふたり目は埼玉工業大時代、農業の手伝いとして日本テレビの人気番組『ザ!鉄腕!DASH!!』にも出たことがあるトンガ出身の右PR(プロップ)ヴァル アサエリ愛(28歳)だ。正智深谷高校時代から来日しており、すでに日本国籍を取得。もともと突破力のあるNo.8だったが、出場機会を求めて2015年11月からPRに転向。今シーズンは開幕から4試合中3試合で強豪パナソニックの「3番」として出場した。

「(今回の合宿に)数パーセントは呼ばれる可能性があると思っていたけど、改めて選ばれてビックリした。まだPRになって2年も経ってないけど、これからもっと身体を強くして、いいスクラム組みたい!」(ヴァル)

 3人目は流通経済大からクボタに加入したトンガ出身のCTBシオネ・テアウパ(25歳)だ。すでに7人制日本代表でのプレー経験もあり、開幕からクボタのCTBとして力強いランで前に出続けた。そのプレーが評価されての選出に「めっちゃ、うれしい!」と大喜び。まだ若いだけに国際経験を積めば、一気に化ける可能性も十分にあるだろう。

 一方、まだ日本での生活が3年目で条件をクリアしていないものの、来年には日本代表に呼ばれそうな選手がふたりいる。それも、今後の日本代表の強化に欠かせないLOのポジションの選手だ。

 まずひとりは、このオフにコカ・コーラからパナソニックへ移籍し、ラインアウトで存在感を際立たせている身長197cmのLOサム・ワイクス(29歳)。オーストラリア出身で母国のチームでもプレー経験があり、すでにスーパーラグビーの出場は100試合を超えている。

 そしてもうひとりは、LOだけでなく第3列でもプレーできる南アフリカ出身のヴィリー・ブリッツ(28歳)。ライオンのような髪型がトレードマークで、NTTコミュニケーションズでは常に身体を張るプレーを見せている。また、サンウルブズでもゲームキャプテンを務め、2017年のスーパーラグビーではラインアウトキャッチの回数で全体4位にランクインした。身長193cmの体躯を生かし、バックファイブ(LO~No.8の5つのポジション)までプレー可能なので、指揮官としては起用しやすい選手のひとりだろう。

 さらに、現段階で日本代表の資格を持っており、今後の活躍次第では代表争いに絡んできそうな選手も紹介したい。

 トップリーグでは、今年日本国籍を取得したトヨタ自動車のWTBヘンリー ジェイミー(27歳)が楽しみな存在だろう。ニュージーランド出身で、かつては7人制日本代表のエース格としても活躍。突破力があってハイボールにも強いので、ジェイミー・ジャパンのラグビーにすぐに適応できそうだ。

 大学生では、東海大3年生のふたりにも注目したい。サモア出身のNo.8テビタ・タタフ(21歳)と、トンガ出身のWTBアタアタ・モエアキオラ(21歳)だ。ふたりともU20世界選手権で活躍し、すでに日本代表キャップも持っている有力株である。

 また2016年度のトップリーグから、将来日本代表になることが可能な外国人選手1名を出場させることのできる「特別枠」が作られた。その影響もあり、多くの外国人選手がこのまま日本に住みつつプレーを続ければ、2019年までに代表資格を得てW杯に出場する可能性もある。

 たとえば、LOリアキ・モリ(27歳/ニュージーランド/サンウルブズ)、No.8ベン・ガンター(19歳/タイ/パナソニック)、FBコディ・レイ(28歳/ニュージーランド/神戸製鋼)、FLラーボニ・ウォーレンボスアヤコ(21歳/オーストラリア/NTTコミュニケーションズ、サンウルブズ)、SO/FBロビー・ロビンソン(28歳/ニュージーランド/リコー)、PRルーアン・スミス(27歳/南アフリカ/トヨタ自動車)、LOマイケル・ストーバーク(25歳/オーストラリア/近鉄)など。大学生では大東文化大3年のNo.8アマト・ファカタヴァ(22歳/トンガ)も気になる選手だ。

 2017年にはある程度メンバーを固定しつつも、ジョセフHCは常々「私はオープンマインドだ」と言っているので、今後も日本代表の門戸を完全に閉じることはなさそうだ。エディー・ジャパン時代のWTBカーン・ヘスケス(宗像サニックス)やNo.8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)のように、大会1年前に選出されてW杯で活躍し、スターダムを駆け上がる選手の出現に期待したい。